72話 おほーっ!
「実はダンジョンの外で料理屋をしてて……。何人かこっちで働いてもらうことはできないかな?えっとできないですか?」
「無理に敬語を使わんでも……んっ。あー、美味しかった!敬語を使わなくてもいいぞ。それより料理人、か……。残念だけどこっちも人でがなぁ……。それに……」
「食材ならもっと出す!海鮮ものでもホーンボアとかマッスルチキンの肉もまだまだ沢山――」
「嬉しいけど、それならこっちの2人でも量は少なくともとりには行けるのだよな。いや、確かに沢山食べられるのは嬉しいし、私以外のドラゴニュートは大喜びだろうが……。やはり、求めるのは新しい食!より美味い食事!もっと贅沢を言えば脂肪燃焼効果のある食材!わざわざ料理人を貸し与えるのだから、もっとこちらから要求させてもらってもいいよな?」
「……。じゃあその要求さえ満たせればこっちの要求も飲んでくれる、と。強欲だな」
「そうやってドラゴニュートは2階層まで歩みを進められた。ひ弱な種族がここまで。強欲なのはむしろ誇り、賛辞でしかないさ」
「……良くも悪くもそういうところが長たる所以なのかね」
「ま、そういうことだな。それでどうするのだ?もし私たちがまだ見ぬ食材を求めるということになるならば、3階層に侵入するのだろ?」
「これで駄目って言われたらそうなるな。……3階層ってそんなに危険なのか?」
「勿論。危険が過ぎるため、私たちはこうしてここに引き籠り、スキルスクロールの作成に努めているのだから。あれをみて見ろ」
「ん?」
俺たちは長の指差した先を見た。
すると、難しい顔をしながら地面に描かれた魔方陣の上でなにやら呟いているドラゴニュートが1匹。
相当集中しているのか、話しかけられない異様な雰囲気を纏っている。
例えるなら試験まで日がない受験勉強をしている学生さんみたいな。
「スキルスクロールはああして毎日毎日魔法を練って練って練って頭を酷使して作られる。そのせいでやたらと腹が減り、食料の消費も激しいというわけだ」
頭を使うとカロリーも使う。
でもそれって脂肪が燃焼されるわけじゃないからなぁ。
この集落がこうなったのは仕方ないってことにしよう。
「あれだけ頑張っても生まれるのは低ランクのスクロールばかり……。まったく、折角私たちが魔法が扱える種族、偉大なドラゴンの系譜であるにも関わらず肝心要のスキルスクロールの作成がランダムなのだからやるせない」
「所謂ガチャってわけか。気持ちは分かるすごく分かる。あれは本当に悪い文明。ちなみにその低ランクのスクロールって余ってるのか?」
「ああ。かなり余ってるぞ。なんなら今ある食料と交換でもいい」
「おお!じゃあそれで頼む!それだけ3階層が手強いモンスターで溢れてるなら、できるだけ強化したいし」
「交渉成立だな。では先に食料を」
「ok」
アイテム欄からドロップ品を適当にばらまく。
それと同時に周りにいたドラゴニュートたちは目を輝かせながら、両手を擦り合わせて感謝を囁く。
何?
俺は菩薩か何か?
悪い気はしないけど、これだとどっかの宗教の祖みたいじゃない?
「おほーっ!エナ!客人を倉庫に連れていってやれ」
「了解です長。こっち、ついてきて」
おほーっ!って威厳も何もあったもんじゃないな。
でもスキルスクロールか。
その響きだけで俺からするとテンション爆上がりなんだけど……ドラゴニュートからすれば多分ゴミなんだよな。
ゴミと食料の交換……なんならもっとふっかけてやっても良かったかもしれない。
「――ここよ。スキルスクロールは最後のページの手形に手を乗せれば誰でも使えるから」
「おお……すっご!」
一際大きな建物に案内されその扉が開くと、目に映ったのはスクロールの山。
一応中を確認してから突っ込んでることもあってか、しっかりまとまってないものもあるけど、これは圧巻。
「はてさて、じゃあ好き勝手使わせてもらうか……。……。……。って使えそうなの多いじゃん!癖強いけど」
『速読のスクロール』、『暗算のスクロール』、『暗記のスクロール』、それに……
「イキリ爺ちょっとこっち手を乗せてみ」
「ごが?……。……。……。ごぶぁ」
『禁欲のスクロール』。
禁欲されたお陰でイキリ爺の顔がハードボイルドに。なんか劇場版みたいになってやたら面白い。
自分で使うにはあれだけど、従業員とか敵とかにはこれ有効じゃん。
それに魔法の類いも結構あるし……。
「全員使えそうなのものを選んで1本手に持っておこうか。それと、適当にアイテム欄に移動……出きるな。よし。これは儲けもんだ。3階層、案外簡単に行けるかも」
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