71話 料理人見っけ
男のドラゴニュートが声をあげると、ぞろぞろと中からドラゴニュートが顔を出し始める。
臆病だから危険を感じて外に出ない……だっけ?
うーんあれは多分嘘だね。
「ご飯、もう貯蓄がなくなるから節制しろって言われてたけど……。なんだよなんだよなんだよなんだよ!! あるじゃないか飯が!!」
「神様だ! 神様が我々をお救いにきてくださったのじゃ!!」
「ささ、そんなところに立っていないで中に中に!!」
「中に中にじゃないでしょ! 今日くらいはこのたるんだ脚を使ってあげなくちゃ! ああ! こんなに運動が嬉しいなんて初めての体験よ!」
のそのそのそのそと愛嬌をこれでもかってくらい振り撒いて近づいてくるドラゴニュート。
その様子は臆病どころか社交的。
そして俺が1番嘘と感じた理由なんだけど……。
「なんか……同じ種族なのに大分体型違うね」
「しっ! イセ、あんまり大きな声でそれ言っちゃ駄目。太ってる人は自分で言う以上に気にしてるパターンが多いから」
中から出てきたドラゴニュートはどいつもこいつも巨漢だらけ、というか巨漢しかいないから。
つまり臆病で出てこないんじゃなくて、ただ単に太って出歩くのが億劫になっただけなんじゃないか?
これが本当の出不精ってやつだね。
「はぁはぁはぁ……ちょっとしんど……」
「私休憩していい?」
「あ、あの、大丈夫だから俺たち歩いて入れるから」
こっちに近づくドラゴニュートたちの呼吸が乱れ始め、俺たちはすかさず移動を開始。
するとそこら中から安堵のため息が。
確かにこいつらじゃモンスターを倒すなんて無理だな。
「あ、はは。ちょっと不思議な光景かもしれませんけど、勘弁してあげてください。俺やエナが外に出て戦えてるのも、この人たちの力あってこそで……。間接的には全員で戦ってるんですよ。これでも」
「そうそう。スキルの強化なんて自分じゃ普通無理だもん」
村人たちに合わせて歩く俺たちを気遣ってか、エナと男のドラゴニュートが話しかけてきた。
男の方も顔は抜群にいいな。
「スキルの強化……それは食糧のためってことだよな?」
「ええ。でも本当はここに2階層ではなくもっと深い層で戦い、食材を手に入れたいんです。ここに住むドラゴニュートは全員舌が肥えて肥えて仕方ないですから。それに、そろそろあのマッスルチキンから採れる肉だけでは肥満で死んでしまう人も出るかもしれませんし」
「なるほど。あの肉、ささみは脂肪燃焼効果があったもんな」
「その、それでなんですけど……。食材を本当にもらってもいいんですか?」
「それは全然構わない。実は1階層に生産場を作ってるし……。それより、その代わりと言っちゃなんだけどさちょっとお願い聞いてくれないかな?」
「それは私の判断だけではなんとも……。そういった話なら長にしてみないと――」
――ジュウ。
香ばしい香りが村の中から……。
その匂いに当てられて、男のドラゴニュートはその口を閉じ、必死に涎がこぼれないように耐え始めた。
あれ?
食糧不足なんじゃないの?
「丁度ご飯の時間か、スキルスクロール作りは捗ってるかな?」
村に入ると、そこには疲れた表情のドラゴニュートたち。
そしてそこら中で海鮮バーベキューをどか食いどか食いどか食い!
しっかりとご飯も炊いているし、肉まんみたいなものまである。
よく見れば村の角の方で肉や貝を干してるし……。
舌が肥えてるって……俺の想像遥かに越えてきたんだけど!
スキルスクロールとか気になるワードも出てきたけど、そんなことよりこの料理レベルの高さ、食への追及心、店の厨房に立たせるには申し分なさすぎるな。
「――おほほはほほほはほほほひひひはひひひひは!! 飯の時間だひぃやっほうっ!!」
なんかけばけばしくて、うるさいドラゴニュートがいるな……。
他のドラゴニュートの分横取ってるし……俺あいつ嫌い。
でもなぁ、多分……。
「長! 丁度良かった! こちらの客人、神様から話があるそうです!」
「ふふ、その匂い……。その食材で何を望むのかな、人間。あっふ!おいひぃ!」
「やっぱりあんたが長だったか」
かっこつけながらも貝柱を頬張る長に、俺はため息が止まらなくなってしまった。
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