69話 飯の力
「このホーンボア、本当にしつこい! それにちょっと強すぎるって! みんな! まずはこいつをやるよ!」
「ぶもっ!」
「わ、わかった!」
「身体強化!」
突っ込んでくる卑猥ミサイルをドラゴニュートはいつの間にか身体強化で肥大化させた腕で止めに掛かる。
それを見た門番たちもスキルを発動させて、仲間の加勢に駆け出した。
もう卑猥ミサイルのこと知らんぷりしてこのまま見捨てられれば楽だけど……。
「そんなわけにいかんよね」
「ぶも!」
「って、こっちの状況察してくれよ。お前は本当にさぁ……。ちょっときついけど、身体強化中脚!」
身体のしんどさと戦いながらスキルを発動。
スキルを重ね掛けして巨大化した脚に力を貯め……一気に解き放つ。
「――ぶっも!」
「おいおいおいおいおいおいおい!おまっ……。いや、それはある意味使えるかも!」
俺が飛び出した少しあとから卑猥ミサイルは反り立つ立派な牙を発射。
防衛本能が働いたとはいえ、もう呆れるしかない一発。
もっと我慢しろよ。早いよ。早漏かよ。
って本当はツッコミたいところだけど……。
「え? なんで、人間が、私たちを……」
「俺たちは、敵じゃない!お前も、大丈夫だから……あんまり興奮するなって!」
ドラゴニュートたちをあっという間に追い抜いて前に出ると、俺は飛んできた卑猥ミサイルのミサイルを強化された腕を使って受け止めた。
刺さったわけではないけど、衝撃で若干のダメージ。
とはいえ、こうして身をもって守ることで信頼度は間違いなく上がったはず。
「――ぶもぉ……」
「大丈夫大丈夫、モンスターの本能だったんだよな。分かってる分かってる。ま、罰として今週の餌は半分だけど」
「ぶもっ!?」
「速く走るには減量も重要! お前がもっと速く走れてたらこんなことにはなってなかっただろ?」
「ぶもぉ……」
俯く卑猥ミサイルと卑猥ミサイルのミサイル。
なんでか、ふにゃっとしてるな。
あんまりふにゃっとされ過ぎるとちょっとリアルだからやめて欲しい。
「――その……敵、じゃないのか?」
「敵だったらわざわざこんなことしないだろ?いい加減察して欲しいな」
俺が攻撃を受け止めたことで監視役のドラゴニュートが俺に話しかけてきた。
よく見ればきりっとした中に可愛らしさが見える女性らしい顔つきで、何がとは言わないがデカい。とにかくデカい。
門番のドラゴニュートからしても、鱗と尻尾、しゃべると牙が見える程度でほとんど人間だな、こりゃ。
それにスキルも使ってたし。
「その、悪かった。てっきり人間は敵で、モンスターを見たら真っ先に襲ってくるものだと思って……」
「まぁその考えはあってるかもだけど……。俺たちはあんたたちドラゴニュートを襲わない。攻撃しない。約束するよ」
「……」
そっと俺が手を差し出すと手と顔を交互に見て握ってくれた。
どうやらドラゴニュートの世界にも握手という概念があるらし――
――めき……
え?
今変な音したんですけど、俺の腕の鱗何枚か剥がれたんですけど、痛いんですけどおおっ!
「ちょ、ちょっと、痛いっ! 痛いって!」
「え? 力比べじゃないのか?てっきり力量の差を確かめたかったのかなって思ったんだけど……」
「違う! 違うから! それで、もう! 違うって言ってんでしょうが! 爪! 爪が食い込んでんですけど!」
「いや、私たちの間では力比べはその序列を決める上で大事な風習。これもいい機会だからちゃんと結果が出るまでとことんと……」
「知らないよ! そんな風習巻き込むなや! ドラゴニュートって堅物種族かよ!」
誰も止めようとしないのはなんでなん?
これがドラゴニュートの日常なの?
萎縮しちゃって卑猥ミサイルも役立たずになってんじゃん!
いい格好して、なんだかんだ一方的にテイムまでしてやろうとか考えてた罰か、これ。
でもやり返すとまた面倒なことになりそうだし、女の人に手を出すわけにはいかないし……。
「もう少しで、その指が折れ、るっ!」
「おうおうがんばれがんばれ! どっちかの骨が折れたら勝負終了な」
「いや門番! あんたらも笑いながら恐ろしいこと言うのやめなよ! わかった! こっちの食糧あげるから勘弁して」
「「「マジで?」」」
「え? マジだけど……。え?」
「力比べとかし始めてすんませんでした!」
食糧その言葉で涎を垂れ流し始めたドラゴニュートたちは一変。
綺麗な目をしながら立て膝をついた。
飯の力ってすげー……。
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