65話 商店街と戦おうぜ
「――まだ時間はあるからゆっくり考えて再来週また来るから、だって……。どうしようかなぁ」
「桜まつりって言ったら毎年テレビ番組が来るくらい盛り上がるイベントですよね? ミュージシャンを呼んだり、お笑いタレントさん呼んだり、ステージはファンの方が遠方から見に来るくらいとか。自分はわざわざ見に行ったことないですけど、取り上げてもらったお店は1年安泰って聞きますよ」
「うん。おっきいイベントだっていうのは分かってるんだけどね……。土日の2日間の出店になるとか……休日はバイトさんもパートさんもあんまり入りたがらないし、ちょっときついかなって。それに……できれば新メニューをお願いしたいんだってさ」
「ああ……」
お店が終わってまかない飯も食べ終わったころ、俺は桜まつりのお誘いについて彰君に相談を持ち掛けた。
そしてその結果の彰君の、『ああ……』という言葉。
代表は人気店の新メニューという目玉を求めていて、喜々快々を集客のため、要は客寄せパンダにしたいってこと、さらにはそのメニューを町内会も絡んでますよ、といった風に宣伝して自分たちの手柄にしたいという意図があること、この2つが彰君にも伝わったらしい。
しかも売り上げの4割を町内会が受け取るとか……こっちが受ける恩恵はこっちの労力に合わない。
前に親父が出店していたって教えてくれたけど、俺がこっちにいた時にそんな誘いがあったなんて聞いたことないし、そもそも出店していたことなんてなかった。
おそらく、その時はその資格がないという判断を受け、出店した際はその資格があると判断されたのだろう。
別にそれが悪いことだとは思わないけど、なんとなく上から目線なのがどうしても気になる。
「まぁ出すなら無難に肉まん、角煮まんだと思いますけど……。新メニューですか……。簡単に言ってくれますね、代表。そのための労力があるんですよ、こっちには」
「そうだよね。今よりお客さんを増やすために参加しようかと思ったけど……ちょっとねえ。分かった断ってお――」
「――海鮮チャーハン!! 私まだ食べてなーい!! 忠利作って作って!!」
「あ、こんばんは真波さん」
「真波……また来たのあなた」
「こんばんわ。海鮮チャーハンを選んでくれてありがとうございます。マスターはお疲れでしょうから私が作ってきますよ」
また来た。
パターンパターン、いつものパターン。
でも他のみんなが嬉しそうだからいいか。
「ありがとうね! えっと……蟹田君! そ・れ・と……その言い方はないんじゃないイセちゃん。折角またデザート持ってきたのに」
「え!? ば、馬鹿にしないでよ! そんなもの持ってきてくれたって嬉しくなんかないんだからね! ただ、その一応だけど……何を買ってきてくれたの?」
「ケーキケーキ! もう! なんだかんだ気になっちゃってるの本当に可愛いんだから!」
「ちょ、ちょっと抱き着かれても嬉しくないんだからね!」
「えへへへ。でも顔は笑ってるよ」
イセが完全にコントロールされてる。
一緒にいる時間も多いみたいだから、その扱いに慣れたのかな?
綺麗な女の子のイチャイチャは眼福ですな。
最近はその手のものも見るように……うおっほん! この話はもうやめよう。
「そ・れ・で、みんなで何を話してたの?」
「実は桜まつりのお誘いを受けてさ」
「え!? 凄いじゃん! 参加するの?」
「いや、今回は断ろうと思ってさ。ちょっと条件とかいろいろ良くないし」
「あー、そうなんだ。……。まぁ、その、でも……ということならその日はあんまり忙しくならないんだよね?」
「多分」
「じゃあさ、私久しぶりに休みだからこれ食べに行かない? 中華料理の勉強にもなると思うし……」
真波が見せてきたスマホには桜まつりと同じ日にちに開催される横浜の点心フェアの広告。
点心……。これは餃子でこっちは……小籠包か。
今小籠包って焼き小籠包とか持ち歩きとかもあるんだよな……。
「その、どうか――」
「小籠包……。これ……。店頭で売ったら良さそうだよな。まつりの日は人通りも増えるし」
「売れるとは思うよ。肉まんとか角煮まんも一緒に売ればそこそこ。でも、向こうにお客さんとられて……。って出店しないんじゃないの?」
「真波が休み……。そうだな。向こうでは出店しない。でもその日に店頭売りをするのは役所に申請さえすればできる。なぁ真波、その日ちょっと俺に付き合ってもらえないかな? 一緒に向こうの客を掻っ攫って……最大級にバズらせてやろうぜ! それでもって次の祭りはこっちの条件で出店できるように、それと全ステージを真波一色にしてやろうやっ!」
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