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6話 ささみ

「とはいえあいつらがどこで沸くのかも分かんないんだけど……。あ、そういえばなんでこのタイミングでここが襲われたんだろ?なぁイキリ爺、お前知って――」


――バリバリむしゃむしゃべちょぺちゃ……ごくん。


こいつ……食って良いって言う前に俺の差し入れを1人、いや1匹で……。


さっきのマッスルチキンもそうだったけど食い意地が凄――


「ごがぁっ!」

「え?」


『おや?イキリ爺の様子が……イキリ爺はマッスルチキンに進化しました』


……。

それ、ポケ●ンの進化定型文のやつに似すぎじゃない?

なんでこのダンジョン、というかアナウンスが俺たちに寄り添う言い回しすんの?


あのつよつよ法務部出てこない?


「きぃ……」

「まぁそれはそれとして……食事、もっと言えば野菜が進化の条件ってことか。……。そういえば卵のドロップが2倍になったんだよな……。なら、卵用と食肉用でチキンチキンを分けてささみと卵の生産場に……。でも肝心のチキンチキンは数が――」

「ちっちっちっちっ」


新しい食材を卵同様安く、簡単に手に入れられる方法に頭を悩ませようとすると、俺の肩にマッスルチキンとなったイキリ爺の逞しい手が乗せられた。


しかも反対の手の人差し指を振りながら見せるどや顔。


こいつ、進化して余計腹立つ仕草覚えやがって。

キャラ立ちってところまで進化すんなや。


「ききっ」

「……。こっちに来いってか?」


不良が喧嘩に誘い出す時のように、顎をくいっと柵の方へ向けたイキリ爺はゆっくりと歩き始め、俺を先導する。


本当はいろいろツッコミたいところだけど、もう疲れるから無視でいいや。


「――きぃっ!」

「ん?あっ!まさか孵化したのか?」


柵の近くまで足を運ぶと小さいチキンチキンがわんさか わんさかやってきた。


憎たらしい大人と違って子供はペットにしたいくらい可愛らしいな。

あーよしよしよしよしよしよし。


「――ごがぁ」

「え!?なんでお前、柵の外に?」

「ききっ」


子供たちを掌で撫でていると、背後にはチキンチキンが1匹。

襲ってくる様子がないのは既にこの柵、俺の養鶏場の一員だからだと思うが……それよりこいつ、何か咥えてるな。


「花、いやただの草か?あ、もしかして子供の餌を?」


柵の扉を器用に開けてチキンチキンを中に戻すイキリ爺。


どうやらこいつにだけ柵の仕組みを教えたことで子供の餌の確保が当番制になっているらしい。

見た目こそだらしないやつだが、その実リーダーシップはあるらしい。


子供の育成方法は確立できている。

それに餌の中に店の野菜を混ぜればあっという間に大人、それからマッスルチキンになるし……あとはどいつをどれだけ殺すか、だな。


「……。そういえばさっきのマッスルチキンは暴れ回ってたみたいだったが、あれって――」

「ごかあああああああああああああああああ!!!」

「ききっ!?」


草をパクつく子供たちの姿に心癒されながら、イキリ爺に質問を投げ掛けようとした時、意地汚大人いチキンチキンが子供たちを押し退けて草を強奪。


その身体は光輝き、マッスルチキンに進化した。


それだけならまだしも、マッスルチキンは強くなったことで気が大きくなったのか、チキンチキンたちの群れに筋肉隆々の腕を振り上げながら走っていった。


同じ種族の中でもこんなとんでもなく狂った奴が生まれるとか面白いけど……あいつは食用肉の刑にしてやらなとな。


「俺の目の前で養鶏場を荒らすたあ、肝が据わって――」

「ききっ!き、あっ!」


柵の中に入って制裁を加えようとすると、中にいた大人チキンチキンたちがマッスルチキンを御輿のように担ぎ上げてもうスピードでやってきた。


その顔は緊張からなのか、影が増えたというか、なんか北斗の●の作画みたいな濃さになってて滅茶苦茶怖い。


しかもそれが複数だからホラーよ、ホラー。


「ききっ!」

「ああ。なるほど、これでさっきのは追い出されて逆ギレしたと」


イキリ爺が咄嗟に柵の扉を開けると、進化したばかりの意地汚いマッスルチキンだけが外に追い出された。


「多分餌係が帰ってくる度にこれが起きていて……。こなループ、使えるな。あとは俺のいない間もこの意地汚いマッスルチキンをお前が殺せれば……いけるか?」

「き、ききぃ……」

「流石に不安か……。仕方ない、今回は俺がやる」


チキンチキン(卵)とマッスルチキン(肉)を分けるシステムも確立できた。


あとは俺以外にもこれを殺す役が務まる仲間を増やすだけなのだが、イキリ爺にこの仕事は重すぎるか?


そう思いながら俺はマッスルチキンの背後をとると、心臓からは少しズレてしまったものの、その脇腹を一刺。


マッスルチキンは簡単に地面に這いつくばった。


攻撃スキルを手に入れた俺なら……Jランクなど恐るるに足らず、だなっ!


『初めてパッシブスキルを発動。経験値を取得。ドロップランク3に上がりました。テイムモンスターのマッスルチキン(イキリ爺)はランクJ+にランクアップしました。ささみのドロップ数、卵のドロップ数が増加しまし――』


――べきっ!


「おま!?」

「ききぃ……」


再びのランクアップアナウンスに耳を傾けていると、倒れていたマッスルチキンの顔が丸太くらい太い足で踏み潰され、ささみ3つが手に入った。


ランクアップして、ボデイビルダー体型に磨きがかかったイキリ爺にとってもはやこの戦闘は作業でしかなくなったらしい。


「システム、完成。となれば……廃棄野菜を持ってきて 乱獲しまくりますか。さぁて卵屋とはもう言わせないからな。ふふふふふふ」

お読みいただきありがとうございます。


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