58話 海鮮食材あわあわホタテ
『――ここから第3区画になります』
「って……これで第3区画? 10区画もあるってちょっと長いとは思ったけど……。このダンジョン作った奴手抜くの早すぎない?」
アスファルトでできた道を奥へ奥へと進むと、新区画侵入のアナウンスが流れた。
だけど光景はさっきと変わらない。
ゲームで言うところのボスラッシュとか勝ち抜き戦の闘技場とかそんなコンセプトなんだろうけど、こんなに味気ないのはプレイヤーのモチベーション取り上げるようなもんだって。
『でもほら、外の景色は変わってるじゃないですか。ぷふ……』
めっちゃ笑っとるじゃんアナウンス。
何が面白いんこれの。あれか、芸人さんのコントとかで何回も同じフレーズを繰り返すのが面白いのと同じ原理なのか?
俺は全然面白くないんだけど。
俺たちが強くて2階層くらい楽勝なの分かったし、モンスターハウスとかトラップ部屋とかそんなのが来ても良かった……いや、それは良くないか。
別に俺、あの杏仁豆腐食ってるわけじゃないし、ドMっていう性癖ないし。
「まぁ、時短になるしこれでチャーハンに使えそうな食材が出てくるなら地形なんてどうでもいい――」
「ふぃっ!!」
『第4区画への侵入条件は2種類のモンスター殲滅です。これをクリア後しばらくはモンスターの出現はありません。また他の階層区画も同様に、条件達成後達成に貢献した、或いは貢献した仲間は条件を達成したものという判定になります。あ、言い忘れてましたが、2階層は先頭の団体の中、途中でモンスター或いは人間が引き返した場合条件が全てリセットされます』
それ先に言ってよぉ。
あっぶね、間違えて引き返したりでもしたらしばらくクリアした区画はモンスターが湧かなくなってて、湧きの待ちが必要になるところだったじゃん。
なんか俺めっちゃ説明口調じゃん。
今日テンション高めだし、頭も絶好調かもしれない。
「とにかくモンスターからドロップする食材が欲しいならせっせと先に進んでモンスター倒しまくってボスも倒せと……。驚くほど単純明快。採取とかで時間が無くなって攻略する時間が足りなくなる可能性もあったから、なおさらグループ2つに分けといて良かった」
『説明ご苦労様です』
……アナウンスのやつまた煽ってきてるよ。
本当は全部そっちが説明するべきだったんじゃな――
『モンスターきますよ! 早く戦闘態勢に入ってください! ランク高いくせにスキル覚えるのも遅いし、なんか苦戦することもあるし、どんくさいんですから!』
ボロカスに言ってくれるな、このアナウンス。
また間違ってないところが腹立つわ。
「はぁ……。2階層の区画システムは理解した。あとここ入れてあと8区画……連戦連勝圧勝でいくぞ!! ここからはアナウンスに好き放題言われないように俺もガンガン攻めるからよ!!」
身体強化中脚を発動。
俺は戦い方のパターンを覚えたであろう仲間たちよりも先に進み、向かってくるモンスターの群れに突っ込んだ。
仲間を信じてまた出現しているコギシヲシラスは無視。
もっと後ろにいるもっとランクの高いモンスターを狙う。
名前は……『あわあわホタテ【E+】』
地面に泡をまき散らして滑りながら襲ってくる。
なかなか不気味な移動方法だけど見た目は割と普通――
「あわわわわわわわわわわわびびびびびっ!!」
鳴き声がめちゃくちゃ独特だわ。
なにそれ? どれだけアワビに憧れ抱いてるの? それとも嫉妬?
というかあんまりアワビって大きい声で叫ぶの止めて……。
最近お下劣ワード使い過ぎて妄想力上がってるんだから。
「泡使うってのもなんかもう……。いやもう止めだ止めだ! ひたすら掻っ捌いていく!!」
サバイバルナイフ片手に滑走するあわあわホタテと対峙。
あわあわホタテは俺の近くに寄るとその貝殻を半分くらい開き、中からもっさりとした触手を鞭のようにしならせて攻撃をしてくる。
思ったよりリーチの長い攻撃に驚きはするものの、避けられない程じゃない。
とはいえ……。
「流石にE+。結構威力あるな。それに、なんか飛んできてるのが鬱陶しいんだけど」
鞭のように振るわれる触手から細かい粒がこぼれ、それが俺の身体に当たるから微妙にダメージが……。
大したことはないけど、硬そうな殻といい、泡のよる自身に対する機動力アップと相手に対しての機動力低下といい。
アナウンスのことをさっさと見返してやりたいのに、なかなか時間掛かりそうな敵だ。
こいつは……間違いなく強い。ランク以上の実力がある。
一対一に持ち込まれたらとりあえずマッスルチキンは殺され――
「あわ、わび……」
『あわあわホタテがあわ粟【F】をドロップしました。あわあわホタテがビンビンな貝柱をドロップしました』
え? 俺全然戦ってないんだけど……もう1匹倒れた?
『王圧によって体内にあるあわ粟の泡発生が異常増加。体内にある貝柱が著しく刺激されて膨張。呼吸ができず、無理やり触手を振り回した挙句に窒息』
じゃあさっきの触手の攻撃とか粒の攻撃って、ただ暴れてただけ?
……。
さっきの俺の言葉滅茶苦茶恥ずかしいじゃん。
あんだけ溜めた言い方したのに、このモンスターただ自滅しただけじゃん。
『こいつ……間違いなく強い。……ぷふ。ただの馬鹿モンスターにそれって……』
触れるもの全て傷つけてくやん。
ああもうはっず。身体熱くなってきた。
「ぷぺぺ!」
あーちゃんの羨望の視線。
きっとあーちゃんには俺があっさり敵を倒したみたいに映ったんだろうな。
うっ。騙してるみたいで罪悪感が……。
「あわわわびびいび……」
「あ! わ! びっ!」
「ぷぺ!」
あーあーもう、どんどんあわあわホタテが死んでくんだけど。
何もしてないのに。
……あーちゃんの視線がつらい。
頼む、頼むから死なないでくれ! 靴舐めするからさあああ!! 戦わせてくれよおおおおお!!
『条件を達成しました。第4区画が解放されました。次は今までのプラスでむぎむぎホタテが……。ぷふふ』
もうまた同じタイプのやつじゃん! もっとレパートリーよこせよ!
もう貝柱とか海鮮チャーハンに使えそうだなって思っちゃってる俺自身にも腹立ってきたわ!!
お読みいただきありがとうございます。
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