54話 ヤバい来訪者
『この写真の子誰?めちゃくちゃ可愛くないか?小学生?中学生?』
『やっぱり可愛い子の周りには可愛い子が集まるのかな?供給感謝です!』
『ピンクの杏仁豆腐めっちゃ気になる!』
『この子店にいるの見たぞ。本物ヤバい可愛い。なんか働いてるぽかったけど店員さんなのかな?』
『↑だとしたら法律上アウト。でも俺もこの前料理運んでるの見ちゃったんだよな。舞子さんみたいな感じで抜け道があんのかな?』
こんなコメントがいっぱい。そんでRTが7000件、いいねが10000件。
めちゃくちゃバズった。
というかバズらせてくれた。
流石、現役人気アイドルは影響力が違う。
ピンクの杏仁豆腐は面白いくらい売れるし、その効果のお陰で……。
「あ、あの……。私、その……。罵ってもらってもいいですか?」
「いいですよ! じゃあ……この泥棒猫めっ!!っでいいですか?」
「あ、ありがとうございます!改めてイセちゃんのファンになりました! 絶対絶対絶対また来ます!」
杏仁豆腐を食べたお客さんがどんどんドMに……。
今みたいなパターンは1、2時間に1人だけど、なんか鼻息荒くして帰るお客さんが多くてちょっと不安。
で、でも、お、俺しーらないっ!
みんな幸せな顔してるし、なんかお礼とかめちゃくちゃされるし、お礼の品も届くようになったし……。
自分を解放できたのがプラスに作用してるっぽいからセーフ!
ただ……事件になった人とかの話が耳に入ってこないことを切に願うよ。まじで。
「って、バズったのがいいことばっかりでもないんだよな……」
「竜居さん!」
「ど、どうした彰君?」
「手が止まってるなって思って……お疲れですか?」
「いや、そうじゃないんだけど……。ちょっとね」
イセに対する高評価とは別に見られる心配コメントや批判コメント。
イセやイキリ爺がモンスターっていう意識が強くてそれをまったくもって危惧してなかったんだけど……普通に考えたらあの2人を雇ってるのがバレたら激ヤバなんだよな。
イキリ爺は大人っぽい見た目だからなんとかなるかもだけど、もうイセに関しては何もかもアウト。
最近は毎日毎日冷や汗かきながら寝てる、というかあんま寝れてない。
逃亡犯の気持ちがこんなことで分かるようになるなんて想像してなかったよ。
「――ごーがごーがごがごごががが!」
そんな俺の気持ちも知らずにイキリ爺のやつ呑気に歌いやがって。
変わった鼻歌だと思って笑ってる彰君の度量に感謝しろや。
「た、竜居さん」
「あ、ごめん。また俺手が――」
「いえ、そうじゃなくて監査がどうのこうのっておっしゃられるお客様が……」
きちゃったあああああああああああああああ!!
どうしよどうしよどうしよどうしよどうしよどうしよどうしよ終わった終わった終わった終わった終わった!
土下座するか?
2人の身分証明書なんてないぞ!
……あ、そうだ!プロフィール手帳!プロフィール手帳だ!
キラキララメ入り表紙のあれで乗り越えてやるぜえええ!
っできるわけないじゃん!!馬鹿かよ俺!!
「あ、あの……」
「彰君は仕事続けてて。俺は戦場に行ってくる」
準備もないまま、意を決することなくフロアへ。
親父の知り合いとかそういうパターンであってくれ!
「あ、お忙しいところすみません。私このお店の監査にきました石田由佳理と申します。本日はSNS上で話題になっておりました、イセさんについてお聞きに来た次第です」
がっちがちやで! がっちがちやで! ゾクゾクする、マジでゾクゾクする!
変な空気が流れてるし、冷静なイメージがあるあの常連の女性ですら、そわそわした様子でこっち見てるよ。
……。……。取りあえず自己紹介だよな。
「初めまして、店主の竜居です。その、イセに関してはその……」
「やはり言えない事情があるんですね。年齢は?」
「精神年齢は俺よりも上、らしいです」
「……。つまり何も伝える気がないと」
「別にそういう意味じゃないんですけど、これが事実――」
「伝えたくないと! 私に、役人にこれ以上詮索されたくないのであれば……」
「ん? あの俺の話聞いてます?」
なんかいきなり雰囲気、というか……流れ変わったな。
「私にチャーハンを!最高のちゃーはんで黙らせてみてください!話は以上です」
「えっ。チャーハンはちょっと……」
「なるほど準備がないとであれば――」
「これも美味しいよ!」
逆転の可能性が見えたかと思いきやチャーハン。
負け戦、かと思っていると常連の女性が石田さんの口に杏仁豆腐を突っ込んだ。
なに? この状況?
俺置いてきぼりなんだけど。
「うぐ、あぐ……。……。準備がないのなら、イセさん、イセちゃんが私を罵ることで1週間!猶予をあげましょう!」
「え? そ、それでい――」
「この堅物、ムッツリスケベが!! 出直してこいや! 別にまた来て欲しいからこんなこと言ってんじゃないからね!」
「はう! な、なぜ私がR18同人誌収集家だと言うことを知って……」
「いや、そこまでのこと言ってなかったよ」
「なかなかの罵声でした。1週間後、また会いましょう!それでは」
スラッとした体型ときりっとした眼鏡がこのオチのためのフリだったのかなと思っていると、石田さんはあっという間に店を後にしたのだった。
外部監査員って普通あんなのじゃないよな?
もしかしてこの店が加護を受けてるからとか、そんな理由で店を守ってくれた、とか?
なんにせよ、今日はゆっくり寝れそうだよ。
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