53話 最高の笑み
「――よしっ! ただいま喜々快々。疲れてるけど、早速作ってみますか!あーちゃんもイキリ爺もお疲れ様だよ、本当に」
「これでゼリー? だっけ。あれと同じくらい美味しいものが作れるのよね? 私が行けなくて苦労しただろうけど……みんなお疲れ様。その、あの、えっと……なんか私がきっかけ? になってたから任せるのはいろいろあれだなって思ってたけど……ありがとうね、みんな。あ! だからって別にイキリ爺もあーちゃんも好きってわけじゃないんだからね! 勘違いしないでよね!」
「ぷぺ?」
「あ、ごがあああああああああああああ!!」
「ちょ、ちょっと急に大声出さないでよ!」
店に帰ってくるなり、イセのツンデレが炸裂。
イキリ爺はそれに泣きながら喜び、なぜか俺と握手。
よく分かってなさそうなあーちゃんもニュッと身体を伸ばしてそれに絡んできた。
なんとなく前よりも絆みたいなものを感じる。
今度からテイムしたモンスターたちと歓迎ついでに爆破されるのも悪くはない……わけがない。
「ねぇ。私を放っておいて仲良くしないでくれる? 別に私も混ざりたいとかじゃないけど!」
「あはは、ごめんごめん。ごめんついでに多分美味しいのできると思うからちょっと待ってて」
「……嫌。私も手伝う。それで、な、なにすればいいの?」
杏仁豆腐、厳密にいえば杏は使わないから杏仁豆腐もどきなんだど、それを作ろうとするとささっと俺の横にイセがぴったり寄り添ってきた。
前回の中華そばの時はただ待たせるだけだったけど、この辺の反応が大分人間性というか、社会性を帯びてきた感じがする。
うん。でもそんなことよりもやっぱり可愛いな。
イセは後輩にいたら最高のタイプな気がする。
「ねぇ、どうしたの? も、もしかして迷惑だった?」
「そ、そんなことないって! なにをやってもらおうか考えててさ!えっと……じゃあこの木の実チャカリットを割ってみようか」
「ん! わかった!」
俺がアイテム欄からチャカリットをいくつか取り出すと早速イセは木の実を……足で割り始めた。
強烈な踵落としで次々に割っていくその姿は、まるであの時のイセ。
可愛くなってもやっぱり脚部分は他の部位よりも筋肉質で、太く発達し……イキリ爺のやつ、視線がイヤらしいな。
「ごっが――」
「お前は割れたチャカリットの中身、ここが仁になるから、これを集めてくれ」
「ごかぁ……」
残念そうな顔のイキリ爺。
というのもこいつ、イセのあの足とチャカリットの間にこっそり腕を挟み込もうとしていた。
もうドMモンスターもドSアナウンスもいるんだから、そこに新しく参入なんてして欲しくないぞ。
「それじゃあ俺はプルテンをミネラル汁に入れて……あーちゃん、冷蔵庫から牛乳取ってもらってもいい?」
「ぷぺ!」
……全員でデザート作りええなぁ。
これバイトさんとパートさんにもお願いして……お給料上乗せする代わりに一緒にやってもらえないかな。
これくらいならそんなに難しくないし、やるのは仕込みの時だけだし……。
「ふぅ……終わったわ」
「ごが!」
「お疲れ! じゃあこれをミネラル汁と一緒にミキサーにかけて……。……。……。よし、次は漉し布に入れて絞る。イキリ爺見せ場だぞ」
「ごが」
上腕二頭筋をアピールさせながらしっかり作業をこなすイキリ爺。
アピールを見ながらしっかりとドン引くイセ。
うん。この構図になるだろうなって思ってた。
「きも」
「……ごが」
「あー、はいはいありがとうイキリ爺。それじゃ次鍋に牛乳、生クリーム、トウヒヒのシロップ、絞ったチャカリットを入れて沸騰前まで……。うわ。やっぱり熱はいるの早いな。それに匂いが強くなって……見た目はほんのりピンクだけど杏仁豆腐っぽいじゃん、チャカリット。見た目アーモンドっぽいし齧ってみても似てたからそうなるかなって思ってはいたけど」
美味しそうな甘い香りが厨房に広がり、全員の顔が柔んでいく。
イキリ爺とかこのまま食っちゃいそうなくらい涎溢してるんだけど。
「――とはいえまだ完成には時間が……。ってドロップ品が混ざってるから、冷めるのも早いのな。えーと、あとはプルテンにミネラル汁を混ぜたやつを入れて、ゆっくり混ぜて型に流し込んで……。トウヒヒのシロップとミネラル汁を混ぜたやつを後から掛ければ取りあえずok。シリンボーも乗せて冷蔵庫に……。よし、これで待つだけ――」
「やっほー! 定休日だって知ってたけど来ちゃったよ! なにか作って!」
「忙しい、んだよな? 最近よく顔出すけど」
完成まであと少し。
全員待ちきれないのか貧乏ゆすりを始めた頃、いつものように真波が裏口から入ってきた。
「忙しいけど、別に寝れないとか自分の時間がないってほどじゃないから!それよりご飯いい?」
「冷蔵庫に今朝作った炒め物の残りならあるけど――」
「あ、じゃあそれいただき! 安心して、お金はもう払えるか、ら……。ってこれも美味しそうなんだけど! うんうん。もうできてるできてる!」
「え?あ、そうか冷えるのも早いから――」
「よっしゃ、先にこっちみんなで食べよ! 私が奢ったげる!」
真波はあっという間に固まった杏仁豆腐を手早く人数分切り出して器に盛った。
俺はそれに軽くため息を溢しつつも、仕上げのシロップとシリンボーを添え、ついに喜々快々特製杏仁豆腐の完成。
「ほら、まずはイセから。感想お願いな」
「うん! ……。……。……。美味しい! 独特な味だけど匂いもいいし、最初硬いかと思ったけど、ぱって口の中で消えちゃった! それにこれ――」
――ぱしゃっ!
「ん? なにひゅるの! 真波!」
「いやー、可愛すぎてつ1枚撮りたくなって……。ごめんね、でもSNS上げていい?」
「うん。大丈夫! でも本当に可愛い?」
「そりゃあ勿論! ね、これ見たら誰でもそう思うよね?」
「あ、ああ。すごい可愛いと思う」
俺が少し照れながらそう答えるとイセは満面の笑顔を浮かべ、イキリ爺はそんなかイセを見つつ、なぜか前屈みになって杏仁豆腐もどきを食べ進めるのだった。
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