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45話 美味すぎるライバル店

「おー! いい感じじゃないか!」

「冨田か」

「おいおいおいおいどうしたどうした? 折角昔の馴染みでうちの会社から出資してやってるんだからさ、もっと元気だしてやってくれよ!」

「それは分かってるけど、そんな呑気にやってられる状況じゃないんだ……。はぁ……俺なんでここに出店なんて、というか早めに1人立ちしようと思ったんだろ……」

「それは当然淳のラーメンが美味くて……あれ、俺が出資決めたのっていつだったかな? ……。……。ま、まぁいいか、そんなことは。それより状況がどうのこうのって――」

「向かいの店、見てみろよ」


 俺は暗い表情の淳に連れられて外へ。


 確かに凄い光景だけど、でもこれって……。


「結構並んでるが……。あそこ、中華料理屋だろ?あのアイドルがおすすめしてる」

「ああ」

「あっはっはっはっはっはっ!! 大丈夫大丈夫!! 確かに同じ飲食店だけどさ、こっちに来る客と向こうじゃ客層がちがうって! それに向こうは鳥がメイン! ラーメンは売りじゃないんだからさ!」

「いや、それがさ……。美味いらしいんだよ、最近あそこのラーメンが」

「いやいやいやいや、そんなにどれもこれも美味いわけないって。仕込みの時間考えてみ、無理無理無理無理。手の込んだラーメンの提供なんて絶対無理」

「でも……」

「あーもう! だったら敵情視察だ! 奢るからついてこい!」

「お、おい!」


 冨田の手を引いて俺は向かいの店、喜々快々の待機列に並んだ。


 これからだとあと1時間は待ちそうだが、それでも冨田に元気が戻るなら休憩時間を全部費やしたって構わな――


「列の進み、早くないか?」

「なんか見た目以上に中が広いらしくて、回転効率もいいらしい」

「ふーん。だったら尚更中が気になるな!」

「……。つくづく冨田ってプラス思考だよな」

「ああ! だからこそこうして起業して成功してお前んとこの店に出資出来てるんだよ! あっはっはっはっはっはっ! これから何が出てきても俺はお前みたいにはならん! 安心しろ!」



「……。これ、ギリギリ負けてるかもな。ヤバくね。本当にヤバくね」

「さっきまで安心しろって言ってたじゃないか! 裏切るの早すぎるって!」

「あ、はは……。ま、まぁ今のは冗談だから。あ、あれだ、淳のラーメンとは種類がほら違うから客をとられるなんてことはねえって!」

「味で勝ってるって、嘘でも言えや!」

「いや、それはだって……」

「まぁ、そうなるのも分かる味だけど」


 思いの外早く来店できた俺たちが頼んだのは勿論この店のラーメン、元祖中華そば。


 やけに黄色い麺こそ、気にはなったが見た目のインパクトはそこまでじゃない。


 それなのに、一見薄そうに見えるこのスープのガツンと来る香り。


 頭の中では勝手にこのスープに米を入れた時を想像させられる。


 それだけ食欲をそそるこのスープ、だがそれだけ濃いスープだと麺の機能が落ちる、という可能性もある。


 スープを飲みにきたのか、ラーメンを食べに来たのか分からなくなるような中途半端なものなら淳の圧勝だったのだが……。


 ――ずずずず!


「ちぢれ麺、うっまぁ」

「どうしよう。どうしようどうしようどうしよう……これ、美味すぎるって」


 そんなスープによく絡むものの、低加水麺を食べているような小麦の香りが損なわれていない。


 だからといってコツコツとした食感なわけでもべちょっとした食感なわけでもない。


 丁度いいもちもち加減。


 俺はこんなに美味い中華そばは食ったことがないし、シンプルなのに満足感が強いのも初めて。


 これ、もうダメかも。

 あーあ、失敗した。確定。赤字確定――


「――大丈夫。あなたたちのラーメンも美味しい。ただ、まさかこんなに早くここまでのものが作れるなんて……。あなたたちにはまだまだ頑張って欲しい。この店の、私のためにも。だから、そのための暗示をかける」


 なんだこの女性客は……。

 なんか、頭がふわふわして……。


「――あ、あれ? 俺……」

「美味すぎて……美味すぎて逆にやる気出てきた!これを越えるラーメンを俺は作る! 悪いとは思うが……協力してくれないか、冨田?」

「え? あ、ああ! 当然だろ! 打倒喜々快々! あっはっはっはっはっはっ!」


 なにか違和感が残るが……冨田のやつがやる気を取り戻してくれたならそれでいいか。


 ふぅ。煮卵と替え玉とチャーハンも頼むか。

お読みいただきありがとうございます。

モチベーション維持のためブクマ、評価よろしくお願いします。

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