44話 飯落ち
「……。これがあなたの、人間の世界……ダンジョンと全然違う。凄い……」
「ごが!」
「ってなんであんたが威張るのよ! 変態異臭鳥!」
「ご、が……」
「そんなに風にしたって私あなたなんか眼中にないから!まぁ、そこそこ強くはあるみたいだけど」
「ごがぁ……」
イキリ爺が罵倒と誉められを一心に浴びている最中、俺は客席に座る2人とは別に帰って来て早々に厨房へ。
なんだかんだ俺に好意を向けてくれるのならテイムも必要ないと思ったけど、扉を潜る前にイセの言った一言、ボスとして俺を殺すことを諦めていない。
これが妙に引っ掛かって、本の少しだけど不安に感じた俺は若干焦りを覚えて厨房に、というわけだ。
「本当はこっちの世界に興味津々のイセをもっと驚かせたいけど最悪の場合人間になんてこともあるし……。これが最善の一手だよな。あ、もしこの時間に逃げ出してもまずいな。あーちゃん、ごめんだけどイキリ爺だけだと心もとないから客席で見張っててもらっていい?」
「ぷぺ!」
そういうと、眠そうな顔を擦って客席に向かうあーちゃん。
あーだこーだ言ってくるのが出てきてもモンスターヒロインはやっぱりあーちゃんしか勝たないわ。
「それよりも急いで作らないと。まずスープ用に水を沸騰させて、コム粉も用意して……」
スープから麺作りまで普通であれば、そんな短時間で終わるはずのない工程が多い料理、ラーメン。
だけど、これを短時間で済ませることができるのもダンジョンドロップ品のいいところ。
ミネラル汁は寸胴に火を掛けてから数分で沸騰するし、鶏ガラはびっくりするほど早く旨味を最大限放出。
ミネラル汁を含ませたラーメン用のコム粉も数分休ませるだけで、しっかりと伸び、もちもちな生地に仕上がる。
一応割合はややミネラル汁多めの中加水麺用に混ぜ合わせている。
全部の工程が普通だと1日以上掛かるところ、全く問題なく30分で同程度以上の仕上がりに出きるのだから、他の店や製麺所にこれをバラしたら最悪バッシングの嵐かもしれない。
「――まぁ、このことを言うつもりはないけど。さて、麺切ってくか」
そうして簡単に完成させた麺はやや太、ちぢれ。
これが今のところ俺が作るスープと1番相性がいいと、彰君のお墨付き。
ただ、それも前までの製法だった場合で……。
たっぷりミネラル汁を突っ込んでもいい相性だといいんだけど……。
「ねぇ、それなに? さっきまでずっと集中してて……ちょっとかっこよかった、じゃなくて! 怖かったから話しかけられなかったじゃない!」
あー。
ポンコツツンデレ可愛いんじゃ。
目覚めたくないのに、目覚めそうなんだけど。助けてあーちゃん。
「どうしたの?」
「な、なんでもない! それよりこれはラーメンって言って、イセの産んだあの鳥のドロップ品で作った料理なんだ。これが作りたくて、イセには俺たちのところに、出来ればテイムさせて欲しいなって……」
「料理のためなんかで私に、わざわざあの地を離れろ、ですって? ふん! いくらあなたに言われたって、そんなことに使われる気はさらさらないわ!ミネラルホークを産み出すの結構疲れるんだから。それにテイムされちゃったら、あなたと戦うこともできないじゃない。……あの戦いは辛かったけど楽しかったから」
「ん? それってもしかして……」
「ご明察。私はというか歴代の私たちは記憶を引き継いでるの。自分の使命、侵入者を2階層へと行かせないっていう想いを引き継ぐついでにね」
「なるほど。じゃあ見た目が小さくなっても戦闘の勘は消えてないと」
「そう! もう2階層は解放されてあなたは私と戦う必要はないかもしれないけど……お望みならいつでも――」
「ちょっと待って! もう少しでゆで上がるから! あ、その前に丼にかえしを注いでスープを……。よし、あとは麺を絡ませてトッピングしてやればok!」
会話をしながら麺を切り終えていた俺は、ゆで上がりも異常に早いこの麺を投入。
イセの話が思わぬ方向に進んだから間に合わないと思ったけど……。
「これが、ラーメン?」
「商品名は元祖中華そば。全然元祖じゃないけど。彰君、うちの従業員がこれがいいっていうから採用したんだよ。さ、熱いうちに食べて食べて」
「うん! いただきます! って別に美味しそうなんて思ってないんだひゃらね」
――ずぞぞぞ
ツンデレ吸いを決めるイセ。
こんなテクニカルな食べ方は初めてだけど、これはこれでよし。
「――凄いなに、これ……美味しい! これ、本当に美味しい! これが毎日食べられるならなんでもできるかも! ……あ」
『水獣鳥イセ(幼体)がテイムできます』
「ちょ、まっ!――」
「この勝負も俺の勝ちだな!テイム!」
飯落ち完了。
これでミネラル汁のドロップが捗るってもんよ!
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