43話 ツンデレ属性
「――きゅあっ!」
「……取りあえず連れてきたはいいけど、これはちょっとどうしたもんかなぁ」
溺れたイセを助けた後、俺たちは第1区画まで早々に撤退。
というのも、第3区画でこの子をテイムできる状態までもっていくのは不可能と判断したから。
この子、手持ちの野草や野菜には全く見向きもしないし、イキリ爺の接待は逆効果だし……。
それどころか溺れているところを助けたにも関わらず、恐ろしいくらい毛嫌いされて敢えなく撃沈。
ま、逆にそのお陰で俺がまともな存在っていう判定を得られたみたいだし、俺のお願いを聞き入れてついてきてくれたのは良かったけど。
というかボスなのに結構移動に融通利くんだな。
ダンジョンのシステム云々かんぬん言ってたからその辺ちょっとどうなのかなって思ってたけど。
「――きゅあっ!」
「ごがぁぁ……」
……。
それにしてもイキリ爺の奴かなり貢ぐタイプだったんだな。
その積み上げてる野草とか野菜ってマッスルチキンたちの間だと金銭的価値あるじゃなかったっけ?
「……。うーん。イキリ爺が嫌われてるからってのは関係なく野菜、野草は効果なし。ささみもコム粉もキラーフィッシュもホーンボアの肉にも興味はなし。ここまでついてきてくれたのが不思議に思えてきたな」
『おそらくモンスターとしての本能。まぐわう相手として十分な強さを持った存在が現れ、その存在に価値があるかどうかの判断を現在しているのだと思われます。つまり……王圧を放つあなたをイセは試している、という感じでしょうね。あなたがオスとして自分を満足させられる存在かどうかを』
「……。えっと、それって……。面白い冗談ですねえ。あはは。ともかく、今これ以上俺にできることはないし、一先ずはミネラル汁も確保できたから一旦向こうに戻ろうかな。もしかしたら向こうにイセにテイムさせてもらえる用になる何かがあるかもだし――」
「きゅ……」
俺が扉に手を掛けると、それに気付いたイセが俺のもとまでとてとてと歩いてやって来た。
……。
冗談じゃなくこれ、アナウンスの言う通りなのかもしれないな。
だけど向こうにイセを連れていくのは流石に……。
ただのペットの鳥って言うには目立つ見た目過ぎる。
小さいって言ったって人間の赤ちゃんより一回り以上大きいし……。
「その、ちょっと向こうに連れていくのは……ここで待っててくれない?」
「きゅっ!」
「うーん。どうしたもんかなぁ……」
『帰らないんですか? だったら先に失礼します。煙草の匂い着いてない服に着替えてリベンジしたいんで』
ぎゅっと俺の脚にしがみつくイセに困らせられていると、イキリ爺が颯爽と扉を潜っていった。
あいつ、本当に自由だな。
いっそ清々しいんだけど。
「……」
「あの、俺も一瞬、一瞬だけだからすぐ帰ってくるからさ。ちょっとだけ我慢して――」
「きゅっ」
大人しくイキリ爺に視線を送ったあと、俺と扉を交互に見たイセはついに俺の思いを察してくれたようで脚から離れてくれた。
テイムさせてくれる用に、ミネラル汁を使ってあなたのお陰でこのスープが作れたって言えばきっと――
「って、え?」
『繁殖、モンスターの拡充はボスの務め。そのために必要な場所の提供、スキル、形態変化、区画からの移動とそれに伴う代替モンスターのスポーン。これらはダンジョンのシステムによってサポートされます。よって……』
「人間の姿が必要と判断すればそれも可能、だと」
『はい。これはボスだけに与えられたものであり他のモンスターは対象となりません』
アナウンスの説明と同時進行で行われるその形態変化。
光に包まれたイセは次第にその姿を人に変えて……青い瞳が特徴的な女の子となったのだった。
「凄いな、ダンジョン」
「あのね、別にあなたのことが気になってる訳じゃないんだからね!だだまあその、あれだけお願いしてきたくせに放っておくのはおかしいでしょ!それに私、ボスとしてあなたを殺すこと諦めた訳じゃないんだから!」
「……。なるほど。イセはツンデレ属性なのね。解釈一致だわ」
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