35話 1階層ボス戦終
ファンタジーの醍醐味といっても過言じゃない魔法が発動されるときに展開される魔法陣。
それが俺の目の前に描かれるとイキリ爺がカッコよく登場……はしない。
「折角の場面なのにお前が絡むとやっぱり締まらないのなんなん?」
何故か尻だけしか出ていないイキリ爺。
しかも魔法陣はそこら中をうろうろ。
もしかして魔法陣を潜ることに抵抗してるのか?
だったら……。
「こっちに引き寄せ……られるな。よし、せーのっ!」
俺が指をくいっと折り曲げて自分の下に誘うと、魔法陣は俺の思った通り近づき、イキリ爺を手の届くところまで運んでくれた。
そこまできたら抵抗を失くすためにやれること、つまりはこの両手を合わせて尻に突き刺すという小学生のいたずらレベルだけど凶悪な攻撃が可能になる。
尻にはまだ羽が残ってるとはいえちょっと抵抗があったけど、そんなのは洗えばいいし。
なんならこの戦いに勝った後で、イキリ爺を使ってミネラルホークにこの手を洗わせてもいい。
きっと屈辱だろうな。
俺がそれやれって言われたら真面目に靴を舐めるより嫌かも。
「ごがっ!」
「まったく手間かけさせやがって」
俺の一撃で尻をビクつかせたイキリ爺は、魔法陣から卵が産まれるようにつるりと現れた。
尻をさすってるその顔、その目はちょっと赤い。
そんなに痛かったかな、俺のカンチョ―。
「ご、ごが?」
「何が起きたかわかってないみたいだけど、そんな反応は後にしてくれ。それよりお前はあのくそ鳥をここから遠ざけてくれ!」
「ご……ごがあっ!」
何となく状況を察してくれたイキリ爺は早速雄たけびを上げてミネラルホークを誘導。
イセの回復手段を完全に断ってくれた。
これで仲間を生み出すことも、回復することもできなくなったってわけ。
「ここからはそんな可能性すらない絶望タイムだ! 思う存分攻撃するから、覚悟しろよ」
「こ、こけ! こけ! ごげぇぇええっ!」
残った力で精一杯暴れるイセ。
だが、俺は攻撃の手を止めない。
一方的に突き刺して突き刺して……あーちゃんを殺したのがこいつってわけじゃないけど、理不尽に恨みを込めて突き刺す。
『――1階層のボスを討伐しました』
そしてそれが十数回続いた頃。
俺の耳には念願のアナウンスが流れた。
手強かった、というかしつこかったが……あーちゃんの決死の行動は無駄じゃな――
『ランクがB-になりました。身体強化系のスキルが強化されました。身体強化小(肩甲骨)を取得しました。スキル王圧を取得しました。ランク差があるモンスターに対して強力な圧を掛けることができます。テイムしたモンスターたち、マッスルチキンとオイルスライムのランクが一律【D-】まで上がりました。マッスルチキンがチキンマスクに進化します。オイルスライムがオイルスライム(クイン)に進化しました。水獣鳥イセから水再生式無限もも肉【D】がドロップしました。自動的にアイテム欄に追加されます』
「え? 進化。テイムしたモンスターが? じゃああーちゃんは――」
「ごが」
アナウンスされた内容にその可能性を感じ、喜びが内から溢れそうになっていると俺の視線の先に海パン一丁筋肉隆々鳥の被り物おじさんが映った。
……。
チキンマスクってそのまんまじゃん!! これモンスター判定でいいの!? もうほとんど人間なんだけど!!
「そ、そんなことよりあーちゃん。あーちゃああああああああん!!」
「ぷへへ」
イキリ爺が視界に入らないように顔を逸らすと、俺は愛しのあーちゃんの名前を叫んだ。
すると、池の中から可愛らしいティアラを付けたあーちゃんが。
「死んで、なかった。うあああああああん!! あーちゃあああん!!」
「ぷへへ!」
身体強化の鈍くしか動かせない身体を必死に動かし、あーちゃんを抱きしめに向かう。
よかった本当によか――
「ごがあ!」
「ぷへっ!」
「てめえ! この変態マスク! 俺のあーちゃんに触るんじゃねえ!!」
俺を追い越してイキリ爺があーちゃんに抱きついた。
こいつ、絶対許さん。
もう1発その尻に決めてやろうか? あ?
『1階層を突破。2階層への階段が解放されました。喜々快々のカスタムが可能になりました。1階層の突破報酬として第3区画で採取可能な野菜、野草をアイテム欄に追加しました』
「……。そうだ、勝つことばっかりに気をとられてたけど、これでカスタムができる。……よっしゃっ! 2階層は気になるけど帰るぞ、お前ら!!」
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