33話 1階層ボス戦②
強烈な蹴りのぶつかり合いに鱗があるに関わらず、心だけでなく足もじんじんと熱くなる。
それはイセも同じなのか、どこか楽しそうに見えなくもない。
……力の籠った脚と脚。
これを離せば壮烈な打ち合いが始まる予感がある。
ただ、それをどっちから仕掛けるか――
「―こかっ!」
「そうだよな、お前も辛抱たまらんよなあ!! おらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらふんふんふんふんふんふんふんふんふん!!」
「ぷぺぷぺぷぺぷぺぷぺぷぺぷぺぷぺぷぺぷぺぷぺぷぺぷぺぷぺぷぺぷぺぷぺぷぺぷぺぷぺぷぺ!!」
重なる脚を一度引き、改めて蹴りを放つイセ。
それを一度避け、岸に降りると俺も蹴りを繰り出す。
イセの方がその羽で羽ばたける分両脚で攻撃ができる分、打ち出す数が多い。
だから俺はそれをカバーするように気合でスピードを上げる。
有酸素運動として滅茶苦茶きつい。
けど、真横のあーちゃんが一緒に声を出してくれるから、やる気は絶えない。
「おらおらお……まず根比べはお前の負け。だから罰ゲーム決行! 出てこいよ! その池からよおっ!! 身体強化中(腕)」
「こけっ!」
永遠に思えた攻防に、疲れを感じたのかイセは蹴りを止め、一歩後退。
水中に顔を突っ込んで逃げようとする。
俺はそれをさせないために、ギリギリのところで水上に身体を飛び出させてその羽をがっしりと掴んだ。
そして1本釣りの要領でイセを持ち上げると岸にその巨体を叩きつけた。
流れは完全に俺にある。
なら、このまま一気に仕留める。
「こけっ!!」
「くっ! でも、そんなんで止まると思うな!!」
再び俺が岸に戻りサバイバルナイフで攻撃を仕掛けると、叩きつけたイセはダメージを負いつつも、蹴りを繰り出した。
俺はそれをなんとか強化された腕を使って横に逸らしたものの、重たい一撃は体に衝撃を送り、一瞬止まりたくなってしまう。
しかしそれを根性で乗り越え、サバイバルナイフをその身体に突き刺した。
手応えはある。
だけど、筋肉質なその身体はサバイバルナイフをこれ以上深く差し込ませないために硬くなり……全然抜けな――
「こけっ!」
「くそっ!やったと思ったのに!」
イセはその両脚でサバイバルナイフをぐりぐりと動かす俺の身体を掴むと、無理矢理ひっぺ剥がす。
その勢いでサバイバルナイフは抜けたけど……致命傷には一歩届かず。
このしぶとさ……流石はボス。
俺の方が圧倒的にランクが高いのになかなか手強い。
とはいえ、イセのあの蹴りを強化された腕でいなすことができるのは分かったし、大きなダメージもある。
このまま戦闘を続けていれば、勝てるのは明白――
「こけ……」
「お前、色が……それに傷が治って……。ドロップ品、水再生式無限もも肉……こんなのがドロップするんだからお前自身もそりゃあ再生するか」
地面を這い距離をとったイセは目を瞑り、水色の身体を一部白色に変化させた。
すると、サバイバルナイフでつけた傷はすぐに塞がり目をゆっくりと開けた。
身体の色が変わったのはどういう仕組み化は分からないけど、自分が内包する水分を利用することで再生スキル? を発動させたからだろう。
ということは、イセは水に浸かっている間ほぼ無敵ってことで……池に戻してはいけない。
「こ、け……」
「飛んだ!? くそっ! こうなっちまうと、もう安々と池から出すのは――」
「ぷぺ。ぷぺぷぺぷぺぷぺぷぺぷぺぷぺぷぺぷぺぷぺぷぺぷぺぷぺ……ぷっっっぺっ!!」
「あーちゃん? まさか!?」
急に振動を始めたあーちゃん。
嫌な予感が脳裏をよぎる。
でも、もうそれを止めるには遅すぎて……。
「あーちゃんっ!!」
マッスルチキンをみすみす殺してしまった1回目の第3区画攻略。
あの時のことに罪悪感を感じていたのか、それとも弱っていた自分に食べ物を与えてくれたと思って、恩返しをしようとしてくれたのか、あーちゃんはその身体を熱く熱く煮え滾らせるとイセが着水するよりも早く池に飛び込んでいった。
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