32話 1階層ボス戦①
「――ごがあああっ!!」
「本当に増えてきた。これもうオイルスライムの方がいなくなりそうだし、くそ鳥を殲滅するのは無理かもな。……。あーちゃん。奥の方にオイルスライムっている?」
「ぷぺぷぺ」
身体全体で否定を現すあーちゃん。
この辺りにいるオイルスライムはほぼイキリ爺の下に移動させたらしい。
ならミネラルホークが直接攻撃してくることはないし、ここはイキリ爺に任せて俺はボスに行った方が良さそうだな。
えっと、マップを見るにここを直進するだけでボス、そして2階層への階段があるか……マップ上だと距離があるように見えるけど、身体強化中の機動力をもってすれば、障害のない一本道なんてどうってこと、多分ない。
おそらくボスの下には爆発の危険があるって理由でオイルスライムのスポーン地点を配置していない、そういう構造になっているんだろうけど、やっぱりすべての兵、主要武器を前線に押し上げるのは利口とは言えないな。
俺も何かあったら自分の周りだけはちゃんと強い奴らで固めて……でもイキリ爺は切り込み隊長させたいな。
やっぱりあいつは全線で今みたいにあたふたさせた方が活きる。
「ごが、あっ!!」
「うん。また命中。ちゃんとすれば優秀なのよ。あいつは。性格がヤバいだけで。……。おーいっ!! 俺たちは先に行ってくそ鳥の発生数減らしてくる! お前もオイルスライムがいなくなったら俺たちのところに向かってくれ!」
「がっ!」
俺の指示を受けると、炎の中から腕を出し親指を立てるイキリ爺。
だんだんと炎の中に戻っていく様子も相まって……あの映画思い出すな。
「はてさて……それじゃあ行きますか。あーちゃん。しっかり掴まっといてね」
「ぷぺっ!」
あーちゃんが自分の身体を伸ばして巻き付くように掴まったのを確認して、俺は脚に力を込め……一気に解き放った。
草原を駆け抜ける爽快感。
だんだんと焦げ臭さなくなり俺たちは心地よい風を正面から浴び、その脚を早める。
「どんどん飛んでいってるな。あそこから」
「ぷぺ」
進めば進むほど、羽ばたくミネラルホークの数が多く視界に入る。
そしてその先にあったのは、小規模な砂漠とオアシス。
この草原と砂漠との境。
これがボスエリアと第3区画の境界線ということだろう。
「ということは入ったら向こうも戦闘態勢ってわけだ」
「――こけえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!」
案の定踏み入れた瞬間に開戦の合図。
水獣鳥イセの泣き声が辺りに響いた。
さらには……。
「なるほど。仲間を側に置かない分こういう防衛システムがあると」
砂漠の砂はだんだんと湿り、色を変える。
自分の下にやってくる前にこの泥でその脚を、機動力を奪おうってわけだ。
「ま、それが間に合うほど、俺は遅くないけど」
そんなこざかしい仕掛けが機能する前に辿り着こうと、俺は一層急いでオアシスの中を目指す。
微かに見える池とそれを隠すように生い茂るヤシの木、それにその間から姿を見せる……水色の馬鹿でかい鳥。
「先手必勝!! その首、じゃなくてドロップ品は俺がもらったああああ!!」
俺はイセがまだまだ余裕な表情を浮かべていることをいいことに、オアシス侵入直後いきなり攻撃を仕掛けた。
何がEランクだ。
顔は凶悪どころかおっとりしてて……こんなのただデカくて水色の白鳥じゃん。
モンスター、ましてやボスっぽくないんだよ!
なんらキラーフィッシュとかホーンボアのがモンスターらしくて怖かったわ――
――バシッ!
「え?」
肉と肉とがぶつかりあう音。
それを響かせた俺の足と……池の中から現れた体よりもでかい鳥の脚、というか太もも。
こいつ、優雅な顔つきに対して強烈な脚技で戦う近接タイプかよ。
奇妙な体つきだけど、初めてのちゃんとした強者って感じが……
「燃えるねえ。な、あーちゃんもそう思うだろ」
「ぷぺっ!」
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