30話 俺たちサイコパス
「ごが……」
「……」
第2区画。
俺たちは爆風によってそこまで押し戻されていた。
意識を失っていた時間、それにギリギリのタイミングで口にした肉まんのお蔭で十分に俺とイキリ爺は動けるようになっていたが、他のマッスルチキンたちはランクの低さが影響して……。
正直俺はイキリ爺以外どの顔も一緒に見えるし、テイムしていたわけでもないから精神的ダメージはないんだけど、ずっと一緒にいたイキリ爺は……そりゃあいつもみたいに明るく振る舞えるような被害状況じゃないよな。
あんな奴だけど、今ばかりはどうしても話し掛けにくい。
……。腹、減ったな。
ちょうどマッスルチキンたちからドロップしたささみがあるから料理しちゃおう。
あれだけ落ちこんでるんだ、仲間の肉を食われても気づかんだろ。
ふ、こんなところ誰かに見られたらサイコパスって思われるだろうな。
でも俺の頭はあの爆発でおかしくなった、残りの肉まんは真っ黒。だから仕方ない。ささみ食いたい。
「オイルスライムちゃん、油くれるかい?」
「ぷふぅ」
何かあった時用のソロキャンプグッズを取り出して、小鍋と火を準備。
そして一緒に飛ばされていたオイルスライムちゃんに、油を分けてもらう。
うん。
あんなことがあったけどやっぱりかわいい。
他の個体よりちょっと小さいから毎回ここまで飛ばされてしまうんだろうけど、それもまた良し。
それに真っ黒な肉まんも嫌な顔せず食べてくれたし、むしろそれをもっと要求しだして結局テイムしちゃったし。
死んだマッスルチキンたちがこの光景を見たらあんぐり口を開けるだろうな。
「……。あいつらなんか。思い出すだけで……やっぱり全然悲しくない。ギャンブルして、筋トレして、自分の仕事が終わったらチキンチキンたちを馬鹿にして、檻の中のモンスターたちにちょっかい出して……。……。……。あれ? ささみ用の奴より凶悪じゃないか?」
あいつらを思い出すほど、首を傾げたくなるから、もう考えるのは止め。
持ってきていた携帯用の塩、胡椒、醤油、みりん、チューブのニンニク、オイスターソース、砂糖をジップ式の透明な袋に流し入れて、その中にささみも投入。
ささみにしっかりと下味が付くと、今度はそれに携帯用の簡単片栗粉をまぶす。
その後皮目を下にして、オイルスライムちゃんの油で満ちた鍋に投入。
こんがり皮に焼き色を付け、ひっくり返すと火を弱めて揚げ焼く。
揚げ焼いたささみは取り出して余熱で火を入れ、その間に鍋に余っていた下味で使ったたれを投入。
醤油、塩を少し足し、濃い味にしたらそれを揚げ焼いたささみの上にかける。
ネギはないけど、味はきっと油淋鶏になって……そいえば酢忘れてたな。
でも、これだけ外に調味料持ってきてたら十分でしょ。ちょっと忘れるくらい是非もないよね!
「お前ら……。俺が食べて自分の肉や血にしてやるからな。ほらこれ、オイルスライムちゃんの分。……にしてもオイルスライムちゃんって長いな。油引く係だから……あーちゃんにしようか。あーちゃん、あーんしてあげようねえ――」
「ごがああああああああああっ!!!」
やっば。
流石に気付いたか。
あいつが変わってる変わってるって言っても流石にこれが仲間って分かったら怒る……
「ごがあ!!」
『なに自分だけであいつらの肉食おうとしてんすか! 俺も食いたいっすよ! 腹減ったすよ!』
怒らなかった。
いいや。地面に書いた文面上もその書いてる様子も怒ってるはいるんだけど、俺の思ってた怒りとは違う。
こいつ……想像の斜め上をいってやがる!
「でも……。お前そうやってるだけで本当は悲しいんじゃ?」
『ああ。あれはあいつらが賭けで俺から奪って食った食料の数を思い出してたんですよ。あーああの分勿体な、って』
「最悪だな、お前。俺もお前のこと言えないけど」
『そんなこといいんでくださいよそれ!』
「ごがあああ!!」
「ちょ!熱いぞ!」
熱々のささみに手を伸ばしたイキリ爺。
しかし熱がる様子はなく、ただ美味しそうに仲間を食うだけ。
これってもしかしてスキルか?
『テイムしたマッスルチキンは爆発からの生還で炎耐性を獲得しています。また、多くの時間を共にした同族を食べたことで鳥族への強制力を行使できるようになりました』
火耐性……もう熱さが怖くない。
なら、オイルスライムを動かすこともあのくそ鳥を打ち落とすことだって……。
「こいつらの死は無駄じゃなかったわけだ。……。ありがとう。それといただきます。うーんうまっ!! でもやっぱり鍛え過ぎだな。普通の個体の方が美味いや」
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