28話 オイルスライム
「――ぎぎ、ごがあぁあ!」
「ごがあ!」
「ご、ごが!」
「ごがぁ……」
「イキリ爺さぁ、他の奴らはもう諦めたんだからお前も諦めろって。もう、1番ランク高いんだから」
行きたくないとだだをこねるイキリ爺を2匹のマッスルチキンに引っ張らせながら、俺はため息を溢す絶望顔のマッスルチキンの背に乗って移動開始。
そしてマッスルチキンによる流石の筋肉がここで発揮され、嫌がるイキリ爺がいるとはいえ、あっという間に第2区画に到達。
続けて今まで進むことがなかった森の奥そこへ向かい俺たちは脚を踏み込んでいく。
残っていたであろうホーンボアは前に来た時に狩ったから前半スムーズもスムーズ。
コムボールごその辺をちょろちょろ歩いているけど、白い玉を転がすのに必死であまりこちらには気付かない。
結構音は出してるのに……この反応ってことはこいつら実は聴覚ないのかな?
にしてもイキリ爺やマッスルチキンが勝手に野菜や野草をとりにくらいだから危険は少ないと思っていたけど……ここまで穏やかだとむしろ不穏だな。
そういえばまだ第2区画と第3区画の間に防御壁張ってなかったしもしかしたらホーンボアが第1区画に入ってきたみたいに他のモンスターが移動してるなんてことも……。
「ごがっ!」
「ん? これもモンスター、だよな? ってことは……やっぱりこっちに入ってきてるのがいる、と」
マップを開きモンスター第2区画のモンスターを改めて確認するが、俺たちの目の前で微動だにしないこいつ『オイルスライム』の名前はない。
何かによって連れてこられたか、或いは飛ばされたか……。
なんにせよ動かないってことは、怪我でもしてるってことなのかな?
黄色くてプルプルで目が愛らしくて、ザ・ゆるキャラみたいな見た目で……今までの奴らに慣れすぎた俺だと可愛いという刺激が強すぎる。
なんとかテイムできないかな?
「そうだ。餌上げればワンチャンあるかも。えっと肉まん肉まんと……」
「ごがっ! ごがががぁ! ああぁあっ!」
「何? お前らもこれ欲しいの? ダーメこれはオイルスライムちゃんに上げる用だから。お前らはその辺の草食っとけな」
「ごが……」
「ちゃ、ちょっと、お前らさぁ……」
卑しく餌をねだってきたマッスルチキンとイキリ爺を適当にあしらうと、それが悔しかったのか、全員そのまま俺を押し退けてオイルスライムを囲った。
頻繁に出る舌打ち、高圧的な声、振る舞い、これは完全にいじめです。
ギャンブルと不良と草依存。
こいつら極道の人でも目指してるのか?
「ぷぺぇ……」
震えながら可愛らしい鳴き声を漏らすオイルスライムちゃん。
どっちが敵でどっちか味方なのか……そりゃあ可愛い方が正義に決まってるよなあ!
「お前らちょっと退け。……あーよしやし、そうだよね。怖かったよね、でも安心して。おじさんがこの悪い鳥さんたちにちゃんと言い聞かせておくから。まずはイキリ爺、お前から教育すんぞ。歯ぁ食い縛れや。身体強化中(腕)――」
「ごがあああっ!」
俺が教育上必要なスキルを発動させると、素早くオイルスライムを持ち上げ、笑顔で撫で始めたイキリ爺とマッスルチキンたち。
この掌返しの早さはあの卵スープの常連の比じゃない。
「ま、分かればいいんだよ。分かればな。それでもってお前らは今回の探索中絶対オイルスライムちゃんに傷をつけさせるな」
「「「ごがっ!」」」
軍隊並みのスピードの敬礼。
こいつら、どこでそれを覚えたのか知らないけどやればできるじゃん。
「――オイルスライムちゃん肉まん美味しい?」
「ぺふぅ……」
「ごっが……」
「おい! お前! その涎、オイルスライムちゃんに当たったら……教育再開だぞ、ってあれ、次の区画か?」
しばらく肉まんを頬張って可愛く身体を大きくするオイルスライムちゃんを連れ、涎を垂らすマッスルチキンとイキリ爺に注意を促していると、俺は癒しを感じながら第2区画である森を抜けて、その先に広い草原、第3区画を発見したのだが……。
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