27話 行かなきゃ
『いやぁ、最近町中華に私ハマってて』
『知ってます知ってます! あの棒棒鶏の動画はもうバズりにバズりましたもんね! 今再生数どれくらいでしたっけ?』
『確かぁ、そろそろ4桁万回だったと思います。お陰で私もここにいれて……。みんなにも行ってもらいたいんですけど、お店行ったのに満席で無理だったぁ、ってファンの人も多いみたいなんですよね』
『そうなんですよ!実は私もプライベートであの棒棒鶏食べに行ったのに行列が凄すぎて!』
『そうなんですよね。でも肉まんの持ち帰りだけなら別口でできて、私最近そればっかりマネージャーさんに買ってきてもらってるんですよ』
『そんなのできるんですね! でも私はやっぱりあの棒棒鶏食べたいなあ!痩せたいもん! 楽に――』
――ピッ!
「肉まん10個に新調した大型のサバイバルナイフ。明日は休み。店の鍵は閉めた。……行くかボス戦」
肉まんを提供するようになって、それで満足してくれるお客さん。
むしろそれだけを求めてくれる人も増えた。
売り上げは怖いくらい膨らんで、順風満帆。
とはいえ、今テレビでも言っていたようにお客さんが入れないなんて状況はまだまだあるし、正直なところまだまだ稼ぎたい。
店に使った改装費用、これは難なく回収できるけど、親父の残したボロ家のリフォーム、彰君たち従業員の賃金アップ、料理人の雇用、定休日の増加、そして最大目標の2号店。
お金はあったらあっただけいい。
だからこそこの乗りに乗ったタイミングでボス討伐なのだ。
従業員のスキルは十分なレベルになったし、そろそろラーメンに本腰を入れていく雰囲気も出てきた。
単純に忙しさってことを考えてもこのタイミングしかない。
「思いきって連休をつくったんだ。なんとしてでもこの期間中にボスを倒す」
これでもかと意気込んで扉を開ける。
初めてでもこんなに緊張しなかったのに……やっぱりボス戦って特別――
「ふんふん!」
「ぶももももももももも!!」
「……。ごーが……。ごが!」
「ごががっが」
ホーンボアの檻の前に座るイキリ爺とマッスルチキンを殺すためのマッスルチキン3匹。
そして、何故か檻の中に入れられた10匹のキラーフィッシュ。
こいつらも仕事に慣れて余裕が出てきたってのは分かるけど、何してるんだ?
「その手……。千ソゲソ草とモギギ草……。それをみんなで出しあって……。あっ。お前らもしかして……」
――パンッ!
――ビュンッ!
ホーンボアが角を発射。
それをなんとか交わしつつ、キラーフィッシュも飛んで攻撃。
乱れ飛ぶお互いの攻撃。
それにやんややんやと興奮しながら声を上げるマッスルチキンたちとイキリ爺。
……滅茶苦茶ギャンブルしてるやんこいつら。
俺の思い描くダンジョンのモンスターの戦いってもっとこう自分の縄張りを守るために決死の覚悟をもって、みたいな仰々しいイメージなんだけど、娯楽つっよ。流石に人間味溢れ過ぎてない?
そういえばランクが上がってイキリ爺の身体なんか羽が少なくなってきてるし……人間化が著しく進み過ぎだって!
「ぶ、もおおおぉぉおお……」
「ごっがあああああああああ!!!」
「終わったか。しかも1匹勝ちか」
ホーンボアが倒れると1匹が両手を上げて雄叫びを上げた。
そんなマッスルチキンにイキリ爺は舌打ちをすると、これ用にいつの間にか用意された木箱を取り出し、そこから千ソゲソ草を20数えて手渡した。
倍率までしっかり計算しながらギャンブルしている辺りがなんか生々しくて嫌。
他のマッスルチキンもだんだんイキリ爺に毒されてるよ、これ。
「おーい。ギャンブルは程ほどにしてボス行くぞボス」
その光景に完全に緊張感が抜けた俺。
ボスという言葉に緊張が走り、ハードボイルドな顔つきで汗を流し始めるマッスルチキンとイキリ爺。
あー、なんだかんだこのからかってるって感じは嫌いじゃないというかむしろ大好物だわ。
ただ……本当にボス行くんだよな、俺。
いや、行かないと駄目だ。……行かなくちゃ駄目だ行かなくちゃ駄目だ行かなくちゃ駄目だ行かなくちゃ駄目だ。
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