↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
サムライソード・ダンジョン  作者: 雨地草太郎
6/12

第6話 救出

 トガクビリの死体が消えてしばらく経つと、城の周りに風が起きた。

 黒い霧が渦を巻いて、空へ昇っていく。

 そして俺たちは、いつの間にか教室らしき場所にいた。


「ここは三階の空き教室……! 学校が解放されたんですね!」


 四季園さんが嬉しそうに立ち上がった。


「残っている人を探してきます!」


 勢いよく走っていくので、俺も慌てて追いかけた。


「ていうか……」


 ここ、女子校じゃねえか。男がいるの、冷静に考えて気まずすぎる。


 俺は方向転換し、階段を降りて昇降口へ向かった。

 校門の横までやってくると、振り返って校舎を見た。

 真新しい建物だ。これが戦国時代風の城になっていたのだからとんでもない。


 俺がぼーっと待っていると、四季園さんが女子生徒たちと一緒に出てきた。全部で十五人いる。


「伊吹さん、校舎にいたのはこれで全員です」

「妹さんは?」

「いませんでした。その、間に合わなかった人の顔も確かめてみたのですが……」


 つまり、他にも死体があったのだ。


「きっとどこかで隠れてるよ。そのうち会えるさ」

「……そうですね」


 四季園さんはこくこくとうなずいた。


「長野市役所は無事でしたね?」

「ああ」


 来る時、異変がなかったことを確認している。


「あそこに避難所ができているかもしれません。全員で移動しませんか。亡くなられた方は……今はどうにもできません」

「そうだな。申し訳ないけど、生きてる人を優先しよう」


 四季園さんが全員をまとめ、動き出した。

 女子生徒たちはみんな疲れているようで、足取りが重かった。市街地をのろのろと進んでいくと、正面に大型ホームセンターが見えてきた。城にはなっていない。


 そこには避難所が開設されていた。

 大人たちが率先して、たどり着いた人に飲み物を渡している。


「皆さんはここで休息を取ってください」

「紅葉(くれは)ちゃんは?」

「私は戦う側になったので、人助けに行きます」


 女子生徒たちは困惑した様子だったが、四季園さんにエールを送ってくれた。彼女らはおばさんたちに案内されて建物の中へ入っていった。


「恭一じゃないか!」


 その声に俺はハッとした。駆け寄ってきたのはスーツ姿の父さんだったのだ。


「無事だったんだな!」

「父さんこそ! 母さんは?」

「一緒だ。……全員無事で、本当によかった」


 父さんは俺の肩をポンポン叩いて笑った。


「あのさ、父さん」

「どうした?」

「俺、あいつらと戦わなきゃいけないんだ」

「……もしかして、あの変な声が言ってたやつか? 俺は何も出なかったが、周りに自分の能力を出せる人がいてな……」


 あちこちで同じ現象が起きているようだ。


「それだよ。武器も持ってる」

「だ、だが、絶対に戦う必要はないんじゃないのか?」

「他にできる人がいなんだ。俺は小さい時から正義の味方に憧れてきた。やらなきゃいけないんだ」


 父さんは不安そうだ。俺だって無茶を言っているのはわかっている。


「絶対に死なないから。待っててくれ」


 無言の時間があった。


「……できれば、毎日顔を見せに来てくれ」

「わかった。……ありがとう」


 父さんはまた、俺の肩を叩いた。


「母さんにも気をつけてって伝えてくれ」

「ああ」


 俺はなんとなく手を差し出した。父さんとしっかり握手を交わし、避難所を離れた。父さんは長いこと、俺と四季園さんのことを見つめていた。その表情は、もうわからなくなっている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。