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化膿する・夕涼み
『化膿する』
大人になった
甘酸っぱい歌詞も澄み切った空も
どこか遠くへ置いてきて
消えて落ちて後ろ側へ
あの日教室で聞いたピアノの音が
ずっと耳元で細く鳴って
傷になっていた
土のついた飴玉も炭酸の抜けたサイダーも
あの校庭の炎天下に置いてきて
視界が落ちて揺らめいて
キツく歩きづらい革靴の中で
その傷は腐って
化膿している
痛みを増している
血も滲まず腐っている
『夕涼み』
洗濯物を干すために窓を開ける
エアコンが効いた部屋に風が流れる
4℃も低いこの部屋より
ずっと涼しい風が吹く
昨日の雨のせいだろうか
きっとそれだけではない
遠くから爽やかな匂いがして
夏の空気が頬を撫でる
僕はこの景色と感覚を全身で感じて
それが頭の中で文字に起きる
夏風が揺蕩う
夕の涼しい風が僕を包む
思わず目を閉じる
洗濯物はカゴの中のまま
ただ、世界の美しさに酔っている
透き通った空を録画するように
小さなレンズで眺めている
ただ、酔うように眺めている




