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手紙
拝啓
伝えたいことがありました
歩くたびに落とす宝石と
内で燃える魂の焼ける音
仕事終わりに見る車窓と
ふとした時に思い出す波の音
あなたは物語でした
私にとって世界でした
腹の中を蠢き
胸のあたりを焦がしながら
喉を刺して血を流し
口から這い出る言葉の一部は
やがて世界になるのでしょう
あなたには伝わるでしょうか
私があの日見た夜景も
誰かにとっては背景で
私にとって大切な
物語であったこと
私は私を作品にしたい
筆の先に宿る神様になりたい
誰かの言葉の鍵になりたい
この生命をもって完結する
文学になってしまいたい
私の真ん中にある
魂の灰が
いつかあなたの胸に
汚れと傷と痣を残して
あなたの世界を彩った
文学になりますように
敬具




