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雪解けと亡霊

白雪は地面を隠したまま


顔のない亡霊は青い春へ


突っ伏したままの私は


凍え死ぬのを待っていた


一通の手紙を紙飛行機にして


遠くの遠くへ


顔のない亡霊の座る窓際の席へ


長く積み上げた思いと血文字


生暖かい温度は白雪に落ちて


亡霊がそれを開く


また一滴落ちて


白雪に落ちて


溶ける、雪が溶ける


チラつく白は薄まり


曇天はひび割れて夜空を漏らす


亡霊は吐き出すように言った


「大切だった」


僕の首は動かない


「幸せだった」


僕は動けない


「だからどうか、思い出の底で」


僕は、


「ーーー。」


貴方だけの言葉。この瞬間だけ


世界は僕たちのものだった


亡霊から漏れる雫の温度で


足元いっぱいの白雪が溶けた


キラキラと手紙とともに解けた


雲の隙間から月光が差し込む


あの雫と同じ温度の光


水面を裏返したような


美しい光


また季節が巡るのだろう


僕は君の名前を知らない


君の声も知らない


亡霊はやがて美しい思い出になって


きっと、あの月光のようになる


雪が光に解ける


水が月光を乱反射する


呼吸がままならなくなって藻掻く


言葉はやがて出ないまま


僕はいなくなった窓際の席を


じっと眺めている

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