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恋う町並み
車窓は本の匂い
流れる街の色々
大地を走る揺れと火のない街灯
旅慣れした男のリュックサック
遠くに見える冬海と
微かな春の匂い
トンネルをくぐるたびに写る
私の姿は亡霊
置いた故郷の思い出も
それを分った友人も
あの日歩いた町並みも
すべて如月の空に映る白昼夢のようで
小説の一節のような車窓は
亡霊の小さな未練
いつか忘れるその瞬間を
あの日の町並みと同じように
恋う日が来る
あの美しい思い出のように
また春が来る
微糖のエスプレッソが揺れる