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203号室
湿った空気に花の匂い
スケッチブックを擦る音
削れる温度をかき集めるように耳を塞いだ
貴女の見ていた風景を思って
書き出した群青の瞳は
けして私を映さない
消え入りそうな吐息だけ
反転した摩天楼
古びたオルゴール
腕に残る貴女の温度を忘れないように
また耳を塞いだまま
ブルーライトを全身で浴びて
頭の中に異国語を溜める
中毒症状に溺れた体を
紫煙で助ける夢を見た
淡いピンクの暖かさ
メリーゴーランドの光が舞って
チカチカ揺れる日々の中で
私は思い揺れるワンルームの底
混ざり合う空気に花の匂い
キーボードが跳ねる音
抜け落ちた恋を集めるようにまた口を塞いだ
私の見ていた写真を持って
駆け出してゆく貴女の背中は
「さよなら」を探すように
ネオンライトを全身に浴びて
頭の中を花でいっぱいに
アルコールに浸かった体を
錠剤で浮かぶ夢を見た
白い画面の無機質さ
部屋のライトを静かに消して
ユラユラ消えてく日々の中で
息の根を止める203号室




