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9話、狐フィーバー

なぜかこの頃、家の前にネズミや鳥の死骸が置かれるようになった。

俺の家だけじゃなくて、ふとっちょの家にも、りおちゃんの家にも置かれているらしい。


大人たちは気味悪がっている。

でもクラスの他の子に聞いてもそんなことはないと言うので、俺たちは思い当たった。


そう、たぶんあのお稲荷さまだ。



俺たちは放課後、お稲荷さまの元へ向かった。

冬の透き通った空気に木漏れ日がさして、お稲荷さまはいつもより神々しく見える。日が沈むのがだんだんと遅くなって、放課後でも明るい神社にやってこれる。あぁ春だなぁ。

という現実逃避はやめておこう。


俺はお稲荷さまに単刀直入に聞いた。

「なんで動物の死体を玄関先におくんです? 嫌がらせですか? ちょっと平日忙しくてこれなくて、おにぎりあげなかったらこれですか?」

「ちがうのじゃ。嫌がらせのわけないのじゃ。肉を差し入れればそれを売るなりしてお金になるかと。お礼じゃ。」

「ふぅ。俺たちは捕まえた肉をそのま食べたりしませんよ。それにネズミは食べないから売れないし、鳥は確か勝手にとったら警察につかまります。ジェネレーションギャップってやつですかね?」

「いや、りょうすけ君。ジェネレーションギャップって、さすがにお稲荷さまに使う言葉じゃない気がするよ。」

冷静に突っ込むりおちゃんが、かわいい。

「そっか。んーまぁなんでもいいや。で、どうやって置いたんです? お稲荷さまって動けるんですか?」

「いや、動こうと思えば動けるがのう。ちと大変なので使いをやった。」

「使い?」

「あぁ狐じゃ。我が一声かけると、数十頭の狐が動いてくれるのじゃ。眷族とでも言うのかのぅ。」

「そうなんだ。この辺にそんなに狐っていたっけ? いつもはどこにいるの?」

「そこまでは知らんのぅ。聞いてみるか。おーい、集まれー。」

「そんな簡単なんだ。まぁ、もうやめるように言っておいてください。動物はお揚げには化けないから。あっ、おにぎり供えるね。今日はおかずないけど。」

「うむ。よいのじゃ。」


俺たちは来たついでに、他のお稲荷さまにもおにぎりをお供えして歩いた。ふとっちょはいつも通り、おにぎりを食べながら歩いていた。今日は右手におにぎり左手にマヨネーズを持って、1口食べる度にマヨネーズをかけている。さすがふとっちょ。さすふと。

するとりおちゃんが、

「ねぇ、他のお稲荷さまは喋らないのかな?」

「あっ、そうだよね。喋るのかな?」


じーっと見つめてみるものの、反応はない。

戻って聞いてみるかと、いつものお稲荷さまに聞くと、波長が合わんのではないか? との事だった。皆、喋るらしい。他のお稲荷さまもおかずが欲しいと嘆いているようだ。

でもさすがに8体のお稲荷さまにお揚げを持ってくるのも大変なので、聞こえないのをいいことに、おにぎりだけで我慢してもらおう。そうしよう。


するとまわりから静かな足音がしたかと思うと、狐が集まってきた。狐。狐。狐。狐に取り囲まれた。数十頭より多くない? こんなにいるの?? 100は軽く越えてそうだ。もう道も見えない。景色がほぼほぼ狐。びっくり。でも何となく狐達が笑ってる気がして、不思議と怖さはなかった。


「ちょっとお稲荷さま! さすがに多くない?」

「これは我のだけではない。他の稲荷どもも狐を呼んだみたいじゃ。」

「えっ!? なんで?」

「どうもやっぱりお揚げがほしいらしい。」

「うーん、、、。とりあえず狐さんに帰ってもらわないと、、、。これは事件になるから、早いとこ。」

「そうじゃのぅ。1匹だけ残って帰ってもらおうかのう。おい稲荷。みんな帰らせぃ。何とか話してやるから、な。」

お稲荷さまがそう言うと、1匹だけ残って後は帰っていった。りおちゃんが残った1匹をなでなでしている。なんだかりおちゃんが幸せそうだ。

「野生の狐ってなんか菌とかあるんじゃなかったっけ?」

そう俺が聞くと、お稲荷さまが、

「野生ではあるがのぅ。我の眷族じゃて、大丈夫じゃよ」

とのことだった。



お稲荷さまが狐と喋っているが、俺たちには分からない。通訳してくれた。

「どうもその辺の山とかにひっそりといるらしいぞ。犬に紛れて暮らしてるのもおるんじゃと。川縁の草むらの影とかもか。ほぅ。色々とあるんじゃのう。えっ? おにぎりを食べてみたい? まぁいいじゃろう。言うてみるぞよ。なぁおぬし、こやつがおにぎりを食べたいそうじゃ。あげてくれんかのう?」

「いいよ。おにぎりはいくらでも出せるよ。おにぎり。」

俺は、ちょっと熱いよと、おにぎりをお稲荷さまの足元においた。狐はくんと一嗅ぎして、ぱくんと食べた。

「なにぃ、他の狐にもくれとな、、、。まぁくれるんじゃないか? もっと欲しいらしいが、よいかのぅ?」

「いいけど、ここに出したらいいの? そんなにたくさん? 100個以上いるよね?」

お稲荷さまが狐と喋っている。

「むぅ。分かったわい。我のためにいつも働いてくれておるからの。我が預かっておいてやるのじゃ。他の狐には、我のとこに来るように言うておけ。」

そう言っていたので、とりあえずおにぎりを10個程出した。俺も魔法の操作がうまくなって、一気に出せるようになった。

「なんじゃ、もっといっぺんにだしてよいぞ? 我が預かるゆえにな。」

お稲荷さまがそう言うので、俺は300個のおにぎりを出すイメージをして、おにぎり魔法を使った。多めにイメージすると残りMPの分だけ、出てくれるので使いきるのが楽だからだ。


うん。山盛り。お稲荷さまが白いおにぎりに埋もれた。

前に授業で習ったかさこ地蔵みたいだな、なんて思っていると、あっという間に、おにぎりが消えた。


狐が足にすりすりしてから帰っていった。お稲荷さまにもお礼を言われた俺たちは、いつも通り柏手を打ってステータスを確認してから家に帰った。

俺のMPは0だった。

あっ、使いきったら今MPがいくつなのか確認できないじゃん!


はじめて感想をもらえました。やったー。

しかし物語って進まない。なぜ、、、。

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