4話、給食
俺はとぼとぼと学校に向かった。
今日は、りおちゃんに話さなければならない。
絶対に聞いてくるだろう。
おにぎり魔法とともに生きていくことを決めたけれど、どうしても気後れする。
歩きながら何とか、なんとか気持ちを作るんだと言い聞かせていると、学校についた。
教室で早速りおちゃんがこっちに来た。
相変わらずかわいい。
細くて、歩いてくる時、光を透かしてほんのり茶色に見える黒い髪が優しく揺れて、とてもかわいい。
「ねぇ、りょうすけ君。何の魔法を授かったの? 私はね、水だったよ。MP全部使ったら、1回でお風呂がいっぱいになったよ。」
声を抑えないで話すりおちゃんの言葉に教室内がどよめいた。授かってすぐの水魔法使いは、大体20リットルくらいが普通だから、りおちゃんは10倍ってことになる。
そりゃ教室内もどよめく。
天才だ。
「俺はね、おにぎり魔法」
「えっ? おにぎり?」
「そう。おにぎり。」
「そんな魔法あったんだね。初めて聞いた。おにぎりが出せるの?」
素直に聞いてくれるりおちゃんは、見下したり蔑んだりする表情ではなくて、不思議そうな顔をしていた。
ほっとした。
「具のない白いおにぎりを出せるんだ。MP全部使って、1回で10個。ちなみに1つ食べると、MPが1回復するっぽい。」
「えぇー、すごいじゃん。」
「食べる?」
「んー、朝ごはん食べてきたからなぁ。給食の時に1つくれる?」
「うん。いいよ。」
教室内は、なんだそれ? という空気になったけど、りおちゃんが笑って受けとめてくれたので気にならない。
りおちゃんはまるで女神だな。
そんなやりとりをしたせいで、俺は給食の時間が待ち遠しくなった。
りおちゃんが俺が出したおにぎりを食べる。食べるんだよな、、、なんかぞくぞくする。
☆
待ちに待った給食の時間になった。
今日のメニューは、ご飯、牛乳、切り干し大根の含め煮、ニギスの抹茶フライ、ABCスープだ。
りおちゃんはご飯を減らして、俺のところにお茶碗を持ってきてくれた。
「りょうすけ君。ここに入れてー。」
りおちゃんに天使の笑顔で言われる。あぁにやけ顔が抑えられない。嬉しすぎる。
「じゃ、出すね、、、。おにぎり。」
俺はそう言って、りおちゃんの持つお茶碗に出した。
どうか、どうか最高においしいおにぎりであってくれ、、、。
「「いただきまーす。」」
みんなで食べ始めたけど、俺はりおちゃんの反応が気になって仕方ない。りおちゃんをじーっと見ていた。
あぁ斜め後ろから見るりおちゃんもかわいい。ぷっくりした唇がなんとも言えない。俺が絵の天才だったら、余すことなく描ききれるのに、なんて馬鹿なことを考えながら見つめた。
りおちゃんがおにぎりを1口かじった。咀嚼して飲み込んでいる。
りおちゃんがこっちを向いて笑った。
「おいしいよ。」
俺は今なら何でも許せそうだ。
教室から、
「おいしいの? ほんとに?」
といえ声が上がった。
りおちゃんが笑顔で、
「うん。おいしい。最高の塩加減です。」
と応えたせいで、俺にもくれよという奴が現れた。
こいつはいつも給食をおかわりしまくる小林拓海、通称ふとっちょだ。
俺は幸せいっぱいだったから、MPの許す限りふとっちょの持ってきた茶碗におにぎりを出した。ふとっちょは嬉しそうに、お礼と握手までして席に戻っていった。
てか、ふとっちょはおにぎりを9個も食えるのか?
そんな思いが頭を掠めたが、まぁいいかと思い直した。
☆
おにぎり魔法のことを、りおちゃんに正直に話せてすっきりした。
でも放課後、空のタッパーに魔法でおにぎりを10個出した俺は、それを持って悩みながら下校していた。
MPを育てるには魔法を使わなきゃならない。
けれど俺は他の魔法と違って、おにぎりという現物が残る。MPの自然回復とかも考えると、1日に30個程度のおにぎりが出せるが、3人家族だから家で消費できる分はせいぜい10個。
みんなも食べたいと言ってくれたし、ふとっちょもいるから給食で10個。そう考えると、1日に10個位はやり場のないおにぎりが出る。
食べ物を捨てるわけにもいかないし、一体どうすればいいのか。
とりあえずこれは冷凍庫行きだろうな。まだ少し冷凍庫の余裕はあったしなぁ。でもなぁ。
次、やっと白いおにぎりの秘密が少し分かります。
見てくれている人がいて、嬉しいです。