3話、検証しよう。
おむすび術師の方がごろが良さそうだけど、めんどくさいからおにぎり術師のままいきます。
翌日の早朝、俺は大きめのタッパーを持って、鷹日神社に向かった。
おにぎり魔法の検証のためだ。
早朝なのは、ゆっくりしてると、りおちゃんも検証しにくるからだ。1回の魔法でどのくらいMPを消費するのかを検証するのは、授かってからの基本行動だからな。
俺はまだ、りおちゃんに話す勇気はないから、早朝。
会って、なんて話せばいいんだよ。
おにぎり魔法だったんだって?
ムリムリムリ。ムリ目のムリ。
恥ずかしすぎる。
だから1人で検証するのだ。
まずは柏手を打ってステータスの確認。
野津 良佑
年齢 10歳
HP 103
MP 10
所有魔法 おにぎり魔法
やっぱり昨日と変わってない。
少しだけ期待したんだけどな。神様のいたずらかもって。まぁ昨日おにぎりが出てるから、諦めてはいたけど。
ここからは地道な検証だ。
まずは、おにぎりと唱えて必要MPの計測だ。
持ってきたタッパーに右手をかざして、おにぎりと唱える。
白いおにぎりが1つ出てきた。
柏手を打ってステータスを確認する。MPが1減って9になっていた。
おにぎりを1つ出すのにMPを1使うことが分かった。
具入りのおにぎりにはならないかと、
「しゃけのおにぎり」
と唱えてみたが、出たのは具なしのおにぎりだった。
使用したMPは1。
こんぶのおにぎり
ツナマヨのおにぎり
梅のおにぎり
おかかのおにぎり
明太子おにぎり
焼きおにぎり
鶏五目おにぎり
のりの巻かれたおにぎり
1つ言う毎に、柏手を打ってステータスを確認したが、MPは1ずつ減って、相変わらずおにぎりは白い具なしのおにぎり。
おにぎりが10こタッパーに並んだ。
そして俺のMPは0になった。
0になってもどうということはない。
もうおにぎりが出せないだけだ。
結局俺の魔法は、白いおにぎりを1つ出せるだけの、しょぼくれた魔法だということが分かった。
早朝から検証に来て、少しお腹がへってきた俺は、おにぎりを1つ食べた。
うん、塩味はするみたいだ。あったかいし、塩のおにぎりとしてはとてもおいしい。
もう1個食べよう。
大きさはコンビニで売っているような三角おにぎりだから、10歳の俺には1つじゃ物足りないからな。
もぐもぐ。ごっくん。
さて、お腹も膨れたし、検証も済んだし帰るか。
俺は、柏手を打って、神様に感謝をして帰ろうと思った。
何の気はなしに、ステータスと呟いてみると、0になったはずのMが3になっている。
自然回復? にしては早い気がする。
なぜだ? まさかおにぎりにMP回復効果があるのか?
慌てて俺はおにぎりをもう1つ食べて、ステータスを確認した。
MPが4になっている。
おにぎり1つでMPが1回復するのか、、、。
もう1つ食べてはっきりとさせたいが、もうお腹がパンパンだ。
でも、あんまり役に立たないよな。おにぎりを1個食べて1。
おにぎりはそんなにたくさん食べられないから、回復量としては微々たるものだ。
うーん。
まぁ使っていればMP総量も増えるだろうし、あと4つおにぎりを出してしまうか。
そう思った俺は、おむすびを4つ出した。
タッパーのふたが閉まらなくなった。
さすがにおにぎり11個も入るタッパーではないからな。
感謝の気持ちを込めてお供えしておこう。
鷹日神社には、稲荷系列の神社だから、たくさんの狐の像がある。
俺は8つの狐の像の前に、それぞれ1つずつおにぎりをお供えした。
それでもおにぎりは3個余った。
これは持ち帰って、父母に食べさせてやろう。
そう考えて家に帰った。
☆
家に帰って、結果を父母に話すと、微妙な顔をしていたが、
「まぁ、これで食うには困らんな」
「このおにぎりとってもおいしいわ」
と慰めてくれた。
俺はおにぎり魔法とともに生きていくんだなぁと、実感できた。
確かに、いつでもおにぎりが出せると考えるといい魔法だと思う。
お腹が空いた時とかに便利だ。
主にお腹が空いた時とかに。
うん。
現代では、火をつけるのは簡単だしな。
水魔法で水を出せるのと、変わらないか、と自分を慰めた。
父母はそれぞれ2個目を食べようとしていたが、2個目には味付け海苔を巻いていた。
そうだよな。ただの塩むすびじゃあ飽きるよな。
俺も今度から海苔を持ち歩こうかな、と考えたが、めんどくさいなと思い直してやめた。