2話、親に話す
「ねぇりょうすけ君。どの魔法をもらったの?」
隣から谷口りおちゃんが聞いてきた。
華奢で、笑顔がかわいくて、妖精みたいな女の子だ。
「どのって言うか、、、。まずは親に話してからかな。また教えるよ。」
俺は冷や汗をかきながら、なんとかごまかした。
「そっかぁ。そうだよね。私もまずは親に話すことにしよう。すぐ後ろでこっち見ながらで待ってるしね。」
そう言って、りおちゃんは両親の元へと走っていった。
そう。魔法を授かるイベントは一大イベントゆえに、親が後ろで見守っている。俺もこの後、報告せねばならない。
とりあえず正直に報告するしかないよな、、、。
そう自分に言い聞かせて、俺はとぼとぼと親の元へ歩いていった。
「なにしょぼくれた顔してんだ。どれだっていいんだ。現代なら、どの魔法をもらったって、そんなに大差ないさ。」
父は俺の肩を叩きながら言う。続けて母も、
「そうよ。それでどれだったの?」
と笑いかけてくる。
いや、父母よ。どの、ではないんだ。聞いたことないんだ。大きい声では言いにくいんだ。
そう思った俺は、
「家に帰ってからでいいかな? お腹すいちゃったよ。」
とそそくさと駐車場に向かって歩き出した。
☆
俺は帰りの車内で心を決めた。
「あのさ、どれでもなかったんだよね。魔法。俺は聞いたことないんだけど、知ってる? おにぎり魔法。」
「「おにぎり?」」
父母は声を揃えた。母は、
「帰ったら使ってみようね」
と優しく言ってくれた。少し鼻の奥がつーんとしたけど、泣きそうなのをこらえた。
もう10歳だからね。
家に着くと、早速使ってみた。
使うのは起動句を言えばいいらしい。
父母いわく、イメージしやすいなら何でもいいとのことだったので、右手を伸ばして
「おにぎり」
と言ってみた。
右手の少し先から、白いおにぎりが1個現れ、地面に落ちて、ころっと転がった。
砂がついたおにぎりを拾うと、少しだけあったかかった。
割ってみると具はなにも入ってなかった。のりもついていない白いおにぎりだった。
どうやら、おにぎり魔法は、本当におにぎりを出せる魔法みたいだ。
そこから父母の言葉はよく聞き取れなかった。
俺は自分の部屋に込もって、少し泣いた。
それから、おにぎりともう一度唱えて、食べてみた。塩味はちゃんとした。
涙のせいじゃないと思う。
次回より、本格的にスタートします。