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14/21

14話、我が家は特殊。

1つ目の試練を終えて戻ってきた翌日には、もう6年生の始業式だった。

クラス替えがあったけど、ふとっちょとりおちゃんとは同じクラスになった。


俺は2人にどんな試練だったのかを聞いた。

りおちゃんは、家族で大山を歩いてのぼるピクニックをしたらしい。それなりに時間はかかったけど、楽しかったそうだ。これは、神様をおもてなしする時に、山歩きができないといけないからだと理由までちゃんと教えてくれたそうだ。

ふとっちょは、試練らしい試練がなかったそうだ。色んな食べ物をおいしく焼いて食べるというものだったとのこと。おいしいご飯を神様に食べてもらうことが大切と教わったようだ。


比べて、俺だけおかしくない?


2週間のサバイバル、、、俺のところの神様はいったいどんな神様なの?

ヤバくない?


夜、父と話すことにした。



晩ご飯の後で俺は聞いた。

「試練を終えた人に聞いてみたんだけど、俺だけ難易度がハードモードだった。なんでなん?」


父は言いづらそうにしつつ、冷蔵庫からビールを持ってきて、缶をあけて飲み始めた。

「あれなぁ、うん。神様のせいでなぁ。ずるしたら分かるっていうのも、お前に引き継ぐ予定の神様が見てるから分かるって話なんだよ。」

「えっ!?」


「引き継ぎの試練って、神様からしたら何十年かに1回のエンタメになっているそうだ。これは我が家の神様じゃなくて、別の神様から聞いた話だから、我が家の神様に当てはまるかは分からないけれど。お前の試練も、困った時に少しずつ神様が必要なものを出しながら、お前の人となりを把握するという趣旨で行われたんだ。ついでに話をしたりして楽しもうと。だからおもてなしする神様によって、試練の形は違うし、それを決めるのは大体が神様だ。

けれど、なぜかお前はそこまで困らなかった。雨の時ですら困ってなさそうで、逆に神様が困ったってさ。私の時は、火をもらったり食事をもらったり、温かいスープをもらったり、その試練で色々と学んだよ。山の中で生きていくには、何が必要というのもその時に学んだから、今ではリュック1つあれば、それなりの期間生きていける。」


「ということは、あの狐は神様が変身した姿だったってことか、、、。」


「違うんだ。あれはほんとに狐。私のところにも、神様から何度か連絡があってなぁ。意味の分からないことになっているが、理由を知っているかと聞かれた。結局、ミューズ様が直接、狐に聞いたそうだ。お稲荷さまの使いだったんだと。」


「お稲荷さまの使い、、、。」

俺は心からお稲荷さまと仲良くなっておいて良かったと思った。またおにぎりをお供えにいこう。もうほんとたくさん供えてあげよう。お揚げもつけよう。うん。



何となくでも理由が分かったので、それで良いことにした。分かったのは、我が家は特殊ということだ。

確かに父は言っていたしな。よそはよそ。うちはうちだって。




6年生の総合学習の授業で、地域貢献というのがあった。中学校での神様の引き継ぎに向けて、自分の魔法を使いこなしたり、魔法でできることを増やしてそれによって地域に貢献するという、なんともざっくりとした内容だった。


水魔法のりおちゃんは、畑の水まきだったり汚れた建物の洗浄だったり色々とできる。毎年6年生がするので、その辺りもある程度、整理されているのだ。


火魔法のふとっちょも、畑で収穫した後のいらない草や茎などを燃やしたり、町の草を集めるという名目で掃除をしてから燃やしたりできる。


困るのが、俺だ。おにぎりが出せるという魔法。

これまでなかったのだ。

ぱっと思いつく感じで子ども食堂におにぎりを納品しようとしたが、先生と親に止められた。曰く、大魔法使いを量産するのはまずいらしい。


結局、先生が手伝ってくれることになって、俺は皆の昼食係ということになった。

大魔法使いの量産は、クラスの29人で抑えるつもりらしい。


なんともしまらない。


りおちゃんは相変わらずのとんでも魔法を見せつけ、ありとあらゆる建物の壁面の掃除を一瞬でこなしていく。建物を薄い水の膜で覆って、そこに洗剤の膜を追加し混ぜ合わせながら洗うというチートっぷり。


ふとっちょは、もはや草を集めるという次元ではなく、燃やしていいものを聞いて、目に見える範囲のそれらを、他に影響を与えることなく燃やし尽くしている。


肩身のせまいクラスメイトの気持ちが分かる。

1回にコップ一杯しか出せなかったり、マッチくらいの火しか灯せなかったり。

みんな、俺もおんなじだ。

仲良しだけど、この2人やりすぎだよね。どこの主人公やねん!

俺の立場はどうなんねん!

まぁ2人とも、威張るなんてなく、和気あいあいと楽しそうにしている天然の人たらしなので、そこまで気にはならないけど。


地域の大人たちも、自分が経てきた経験と照らし合わせて、2人が異次元なのを分かっているから、周りの俺たちにも同情的で、大変だねと優しく声をかけてくれる。

島根の大人は優しいなぁ。

みんな移住しようぜ。




引き継ぎを2ヶ月後に控えた夏休み、父に連れられキャンプに行った。

コンパクトガスバーナーの使い方を教えてもらったり、食べられる草や、時期によって食べられる実をつける木も教えてもらった。

うさぎなどを狩って食べることは難しいそうで、大体は干し肉を持っていくといいことも聞いた。

でも狩らなきゃいけない時もあるだろうと、うさぎかリスを探したけど、見つからなかったので、いのししを仕留めた。

直進してくるいのししをギリギリで横に避けて、足の付け根にナイフを差し入れて、動きを制限し、馬乗りになって仕留めていた父は、もはや人間じゃないと思う。


自分なりの倒し方を見つけるといいと、アドバイスにもならないアドバイスをもらった。

そこからの心臓を刺しての血抜きから、皮剥ぎ、部位別の解体と見せられたが、できる気はしなかった。父曰く、なんとなくでも見てるとできる日がくるとのこと。

俺は、現代っ子だ。そのハードルは別に越えたくないと思った。


だってスーパーに売ってるし。それで充分。





キャンプの1通りの流れが分かったので、次は2つ目の試練。10月に引き継ぎも迫っているので、とっとと行うらしい。

2つ目と言っても、これができれば引き継がれるそうだ。


普段から島根にすんでいる神様を、もてなして5日間、キャンプをすること。まぁ何とかなりそう。

しかもグループで行う。今回は、1年前倒しで引き継ぐのが俺たち3人だけというのもあり、その3人がグループになるようだ。


あんなチート2人が一緒なら、余裕な気しかしない。

気楽にキャンプを楽しみたい。

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