表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/21

13話、試練②

朝起きてかまくらから出ると、狐の居た場所のおにぎりがなくなっていた。

かわりに、狐が20頭くらいいた。


なんとなく催促されている気がしたので、俺はまた山盛りのおにぎりを出してやった。今回は俺の背丈の倍くらい、たぶん3メートル位の山盛りのおにぎりだ。


狐たちは俺の方におじぎをすると、おにぎりを食べ出した。

「仲良く分け合えよー。なくなったらまたあげるからなー。」


俺はそう言って、川に行き、水を飲んだりトイレをしたりした。





朝ごはんのおにぎりを食べてから、昨日作った3本の手作りの銛を持って川面に目をらした。

魚影はある。

うまく捕まえられるかどうかだ。

ゆっくりと銛を構えて、深呼吸を繰り返し、2メートル先を魚が通った瞬間、全力で銛を投げた。

、、、逃げられた。



、、、ぜんっぜんムリ!

1時間ほど繰り返したが、まったく捕まえられそうになかった。失敗した銛を川に取りに行くのもしんどいし、1度諦めた。

そう、俺は心が弱いで有名な若者なのだ。


この後は火起こしでもしよう。

魚は今夜にでも、罠を考えて、それで捕まえることにしよう。

そう思って、俺はおにぎりを食べた。





銛を作るときに出た木くずやら木の皮、なんとなくまっすぐな感じの棒、木の節で穴があいている板的な木、この辺りをこすり合わせて、焦げてできた火種に火がつく感じだよな。

テレビで見たことあるイメージをなるべく再現するように準備した。


、、、5分で限界。もう無理ぽ。

火なんかつくわけないやん!

なんやねん! ライターかマッチをくれよ!

100円で買えるやん。いや、110円やけど!

ちょっとした準備があってこそ楽しいキャンプやん!

風呂にも入りたいし、水はまだ冷たいから、体とか頭を洗うには冷たいし!

あぁ帰りたい。

下山するか?

でもそれもめんどくさいしなぁ。はぁ。

人にあったら失格で帰れるっぽいのに、人けーへんし!


寝よ。ねよねよ。

俺はまたかまくらにもぐりこんだ。


ごろごろ眠ってたら、なんか思いつくだろう。

担任の先生も言ってた。

退屈は想像の母。

というわけでおやすみなさい。





起きたら、外は明るい。

昼過ぎくらいかな? まぁそんなに疲れてなかったし、昼寝くらいか。


なんか異世界転生とかって都合良く火とかおこせてるやん。分かりやすいチートをくれ、チートを。

、、、くれるわけないよね。

父、13歳で同じことしたって言ってたけど、土魔法でどうやって2週間サバイバルしたん? キャンプとか釣りとか教えてもらったけど、それなら道具置いていくもんじゃないん?

徒手空拳でどないせいと?

愚痴がとまらない。これじゃだめだな。



木の蔓を探して、籠でも編もう。それを罠にして魚をとろう。多分なんとかなるだろう。

そう考えて少し森に入っていった。

適当に編めそうな蔓をちぎったりナイフで切ったりしながら集めていく。



かまくらのある拠点に戻ると、狐たちがおにぎりを食べていた。なんと、魚を焼いていた、、、。

ええっ!

狐って火を扱えるの??


でもええや。

火を分けてもらおう。

俺は狐たちに近づいて行って、おにぎりを出してあげた。交渉のつもりだ。


朝に失敗した火起こしの木を、火にくべさせてもらって、火をつけた後、かまくらのそばに持っていった。

これで俺にも火がやってきた。

後は消えないように、火をもやし続ければいいのだ。


思わぬ所から火が手に入ってごきげんだ。

それにしても、狐はどこから火を持ってきたんだろうか、、、。



とりあえず火に大量の枝をくべて、魔法で出したおにぎりを食べた。

川で歯磨きして、さっき拾ってきた蔓で網みたいなものを編んだ。イメージでは籠にしたかったが、どう見てもでき損ないの網。しかし、これで俺は焼き魚が食べられる!



暗くなってきたので、寝ることにした。

明日は魚だ。





朝起きてかまくらから抜け出すと、火が消えていた。いや、まだ間に合うか? 木の皮や木くずを奥に入れてみた。

火よ、ついてくれ。頼む。


、、、付かなかった。

悲しみよこんにちは。


まぁ魚をとろうか。

今日は希望があるからな。

川の端に、石をどけたり置いたりして、少しだけ迂回路を作る。迂回路に魚を追い込みやすいように、本流の中にも石を積んでいき、泳ぐルートを誘導できるようにする。迂回路の上流側に、昨日作った10×20センチメートルくらいの網をセットした。

下流側から追い込んで、作った支流に魚が入ってくれれば、逃げ場のない水溜まりに魚が入るという計画だ。


支流に追い込み、不格好ながら、魚を川の外にかき出した。

よしっ! 1匹とれた。


偉大な1歩だ。

ナイフで内蔵を落として、川の水で洗った。



次は火だが、狐に交渉しようと思っている。

狐たちに近づいて、山盛りのおにぎりを魔法で出した。

その後で、串刺しにした魚を見せて、火が燃えるジェスチャーをする。


すると、1頭の狐がその辺に散らばった木を集めて、火をつけた。火をつけた!?

魔法が使えるの?

びっくり。島根では狐も魔法が使えるらしい。


でもおかげで、火には当たれるし、焼き魚を食べられるし、最高だ。

後は野菜だなぁ。食べられる草が良く分からない。

少しずつ暮らしが文明に近づいてきた。


俺は感謝の気持ちを込めて、山盛りのおにぎりの横に、山盛りのおにぎりを出した。





かまくらの中で野菜を手に入れる方法を考えながら、快適にお昼寝をしていた。

思った通りにはいかないもので、なぜか風呂に入るアイディアが出てきた。

支流を塞いで水溜まりにして、焼けた石を入れていけばお湯ができる。


明日は風呂に入ろう。

狐を味方につけると、なんでもできそうな気がするな。




夜ご飯におにぎりと焼き魚を食べていると、狐が1匹の野ねずみを差し出してきた。肉は欲しいが、ねずみには食指が動かないので断ると、次はいちごを出してくれた。い、いちご!

ありがたくもらうと、甘味は少ないものの、確かにいちごだった。

俺は狐と共同で、平和な暮らしができそうだった。

俺は相も変わらずおにぎりだけしか返せないが。



次の日の風呂は最高だった。

焼いた石を川に運ぶことを考えておらず失敗したが、風呂のすぐそばで石を熱することで解決した。



飯も風呂も寝床も満足のいく暮らしで、何とか2週間を乗りこえた。


父が迎えにきた時、何か少し言いたそうだったが、飲み込んだようだ。

俺も言いたかったが、とりあえずシャンプーしたりうまいものを食べたりしたいので、黙った。文句を言うとどうなるか分からないからな。

合格したならとりあえずそれでいいだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ