10話、キャンプだホイ
登場人物の名前を間違えたり、その人物が、自分を俺と言っているのか僕と言っているのかが分からなくなったり、書くって大変。
でも早く思い描いたところまでいきたい。
世界は普通にまだ幸せのまんま。おかしい。もう未曾有の危機1歩手前になっている筈なのに、、、なんてこったパンナコッタ。
ふとっちょは、いつ見ても俺のおにぎりを食べている気がする。何なら近頃は火魔法をうまく操って、手の上で焼きおにぎりを作れるまでになっていた。焼きおにぎりに塗る醤油は、100円均一で醤油スプレーなるものを買ったそうだ。ポケットに醤油の入っている男は、全国探してもそんなにいないだろう。よく食べるけど、ふとっちょって天才じゃないかな。いつもポケットに何かしらのご飯のお供。
りおちゃんは元々凄かったのが、ここにきておかしなことまでできるようになった。水を出す量を調整するのは勿論のこと、霧まで出せるようになった。霧よりもっと細かくして家では加湿器のかわりにしているらしい。魔力を込め続けることで、水を猫の形にして動かしたりとか、もはや水魔法のレベルを軽く越えている。かわいいし凄いし、なんかもう女神なんじゃないかな。
かたや俺。相変わらずおにぎりしか出せない。おにぎりを大きくしたり薄くしたり、色々とできるようになったものの、出てくるのは白いおにぎりのみ。俺はふりかけののりたまとゆかりを持ち歩くようになった。ポケットにふりかけを常備する男。ふとっちょのことを笑えないぜ。でも塩むすびばかりじゃ、やっぱり飽きるぜ。
お稲荷さまも狐もおいしく食べているらしく、俺はMP消費を兼ねたお供えで、毎日のようにお稲荷さまをおにぎりで埋めていた。
ちなみに俺のMPは300を越えた。
ふとっちょは2000を越えて、りおちゃんは200を越えた。
もはやふとっちょは前人未踏の域で、大人たちは戦々恐々としているが、当の本人は食べられれば幸せらしく、淡々と平和な毎日を送っている。
そんな風に魔法を使いこなせるようになってきたけれど、使い道はそんなになく。
島根の魔法は、10月に神様がやってくる時のお世話用として受け継がれてきたものだ。どこの家庭も代替わりは13歳からなので、まだまだ先だ。のんびりと魔法を鍛えていればいい。
代替わりの一応の試練として、幾つかあるけど、それも試練をすませた人は、内容をまだの子供に言ってはならないらしく、大変という話を聞くばっかりだ。
子供がいない家庭は、何歳になってもお世話係を続けるらしい。ただ近所付き合いがあると、他の家の子供で、お世話する神様がいない人に引き継げるとのことだ。案外うまくまわっている。田舎ほど近所付き合いは大切だ。
大魔法使いになった俺たちでも大変なのだろうか。少し楽しみだ。
5月になって、毎年恒例の野津家のキャンプに、今年はふとっちょとりおちゃんがついてくることになった。
バーベキューに釣りにと、キャンプが大好きな俺はうきうきだった。去年、炭への着火の仕方も教わっているし、釣りも父に仕込まれているので、りおちゃんにいいところを見せたい。
5月の夜は寒いから焚き火もするし、きっと楽しい。あぁ早く来ないかなぁ。
☆
みんなで我が家の車に乗ってキャンプ場についた。今年は、島根県の飯南町にある「ホテルもりのす」に併設されたキャンプ場だ。
もりのすは俺から見てもおしゃれで、楽しい。ここで結婚式をする人もいるそうだ。はじめて一緒に行ったキャンプ場で、いつかりおちゃんと結婚式、、、。ロマンチックだ。
父よ、すてきなキャンプ場を選んでくれてありがとう。
さて、父母が協力してテントをたて始めたので、俺たちのはバーベキューの準備だ。バーベキューコンロを手際よく組み立てて、炭を組んでいく。はじめは細かいのを上手に組むことが大切だ。そして空気の通り道をイメージして、炭を並べる。
できた。ここから、バーナーで細かい炭に火をつけるのだ。かっこいいところを見せよう。
そう思ってバーナーを手に取ると、ふとっちょが、
「火をつけるんなら俺がやるよー。」
と右手を炭にかざした。
「ふぁいやー」
とふとっちょが言うと、しっかりとした火が炭にともった。こんな一瞬で火がつくの???
いや、俺の見せ場は? ふとっちょー!
りおちゃんは、ふとっちょに、
「さすが前人未到の火魔法使い!」
と背中をパンパン叩いていた。なんてこった。
俺が悲しみにくれていると、父が、
「おお、もう火がついたのか。早いな。さっそく肉を焼こうか。」
とやってきて言った。
こうなったらやけ食いだ。肉を食いまくってやる。
俺にはまだ魚釣りがある!
お腹いっぱい食べたので、昼からは釣りだ。キャンプ場から少しだけ歩いた場所がいい感じに魚がいそうなことを、俺はすでにアタリをつけていた。
今日は俺の家の釣り竿を、2人には貸した。
父母は、のんびり俺たちを眺めて過ごすらしい。ありがたい。俺より父の方が釣りがうまいからな。父が入ると、りおちゃんにかっこいい俺を見せにくくなる。
さて、俺はゴカイという虫を釣具屋で買ってきていた。ミミズに無数の足をくっつけたみたいな見た目で、まぁ気持ち悪い。これを半分にちぎって、針が隠れるように刺して入れていく。
これは、りおちゃんは嫌がるだろう。俺の見せ場だ。俺も少し気持ち悪いが、慣れたので我慢できる。
りおちゃんのとふとっちょの釣り針にゴカイをつけてあげた。投げるところは、さすがに俺だけで教えるのは大変そうに見えたのだろう。父母が手伝いにきてくれた。
りおちゃんに少しだけ良いところを、見せられた。後は魚が俺の竿にかかってくれることを祈るのみ。
ぼーっとみてると、アタリがあった。俺は、
「きた!」
とリールを巻いた。ちらっと確認すると、りおちゃんはこっちをみている。よし。俺はどんどん巻いていった。
釣り上げたと思ったら、魚が針から外れた。
ぽちゃん、そう悲しい音がなったと思ったら、りおちゃんが、
「水の手!」
と声を出す。
すると、魚が落ちた辺りの水面から、水をすくうような形の、水でできた大きな両手が現れた。
その中には俺が逃した魚が入っている。
そのままその手はこっちに向かってきて、魚を捕まえたら入れようと思っていたバケツの上まできた。そしてバケツに魚を落とすと、水は霧散するように消えた。
りおちゃんは笑顔で、
「釣れたねー。」
と言ってくれたが、果たしてこれは釣れたと言うのだろうか、、、。
その後ものんびりと釣りを続けたが、釣れなかった。
せっかくのキャンプだし、ということで、りおちゃんが10メートル位の川の水を持ち上げて、魚のいない水をどんどん落としていき、バケツに魚を連れてくるという、訳の分からない魔法を使っていた。
聞くと、自分の水魔法の水を少し混ぜると、その辺の水も操作できるらしい。
それなんてチートだよ! と心の中で突っ込んだ。
捕まえて焼いた魚はおいしかった。
もちろん、楽しみにしていたたき火は、ふとっちょの独壇場だった。
そうして俺のキャンプが終わった。