食堂経営者として
アークの所から、食堂に戻った俺とリン。
「シュン、2人だとこの家広いな」
「そりゃそうだ。 だって、ボブとライラ 結構デカかったしな。」
そんな会話すると、食堂の入口の扉がノックされる。
(早いなあいつ)と俺は独り心の中でごちる。
「どちら様でしょうか?」と言って、扉のドアを開くリン。
リンがドアを開くと、そこには、濃紺の髪に茶色の瞳でいかにも町人風だが、容姿は整っており上の中で、少し渋めでかっこいい30代後半の男だった。
「リンさん、お久しぶりです。」と男が挨拶する。
そんな男の態度に、
「お会いした事ありましたか?」とリンは難しい顔をしながら、男にいう。
「え! リンさん、酷いですよ。 忘れているなんて!」と男は驚いた顔をしつつも悲しそうである。
俺は、そんな2人のやり取りをみて、お腹を抱えて笑っていた。
「ちょ、ちょっと、シュン殿、リンさんに言ってないんですかぁー」と恨めしそうな顔をして俺のほうをみてきた男。
リンは、まだ気づかないのか、誰だこの男はという顔をしつつも俺のほうを見ている。
「悪りぃ。お前もやや老け顏でくるからだ。 久しぶり、カール。 中入れ。」と俺がいうと、「カールなのか! お前生きてたのか!」と叫び驚くリンである。
そして、食堂のテーブルにカールを案内して、リンがコーヒーを3人分用意する。
リンは未だに、カールが生きていた事が信じられない様子だ。
俺はコーヒーをのみ、タバコに火を付けて一服する。
「魔界に行った後、今の大魔王と戦ったり、なんだかんだあって、すっかりリンに言ってなかったんだけどな、 カールは、あん時魔界に戻らないでこの世界に残ってたんだ。 でよ、こいつがここに居るっていうの最近思い出してな、リンが1人でカフェやるの大変だろ。 ちょうどいい奴ってことで、カールがいいんじゃねぇっていうことで従業員として来てもらった。」と俺がリンに説明する。
「そうだったのか。 カールまだ生きてたんだな。」と笑うリン。
「ええ、まだ生きてますよ。 650年ぶりぐらいに、暇? 食堂で働かない?ってシュン殿に言われて断われるわけなく来ましたよ。 にしても忘れられるとは。 まぁいいですが。」とこちらも皮肉を込めていうカールだが別に怒っているわけではない。
「でもよ、カールの擬態って、歳もとれるんだな。」
「えー、こーみえて、魔族年齢的に人間でいうとちょうど30代なんですよ。 なんで、そのくらいの年齢まで擬態できるんですよ。 今は、そうですね、20代から30代の幅で擬態することが多いですね。 2人と別れたあとは、10年ぐらい旅して、そのあと辺境に孤児院建てて、30年ぐらい院長して、死んだことにして、10年旅してまた孤児院に戻るっていう繰り返しです。」
カールは、簡単に650年の生活を話すのだった。
「相変わらず、溶け込むの上手だな。 俺ら、歳とる事は魔術使っても無理だしな。」
「自分がなった事のないと無理ですからね。 にしても、相変わらずなお2人のようで」と笑いながらいうカールであった。
それから、俺は、迷宮都市での今の生活について話す。
ここに来て4年経過している事、元のオーナーであるボブとライラから食堂と住居を譲り受けたばかりであること。
食堂とカフェの営業時間や、それ以外は自由で空いた時間に仕入れや食材の買い出しに行くぐらいであること。 半年に一度魔界に行くため3週間休業にする事や、夜ダンジョンの間引きしている事も説明する。
カールが魔界という言葉に反応して、難しい顔になる。
「シュン殿とリンさんにお願いですが、魔界には私がここにいる事は黙ってもらえますよね。」
「ああ、言わねぇーよ。 今まで言ってないしな。 まぁ、もしお前が会う気になったり、魔界に戻りたくなったら言ってくれればいいさ。 それに、カールに夜の仕事を頼む事もしねーしな。 ありゃ、俺らの領分だ。」と俺がいうと、「定期的に血浴びたいだけだ」と補足するリンである。
そこには納得し、カールも安心したようだ。
「私は基本ここで働くということで了解です。 にしても、趣味程度で特に利益は求めずで、4年間もお2人と生活する変わった人間が居たなんて。 にしても、我々にとって居心地のいい場所ですねここは」
「ああ、ギルドや貴族に目をつけられなきゃ、この街は無用な詮索するような奴はいねぇー。 元々冒険者だった奴が商売してるのが多いみてぇーで、そういう奴が多いみたいだし。 偽善者もほとんどいねーしな。 そういや、カールは身分証どうするんだ?」
「それなんですが、お2人にあって擬態の年齢決めようと思っていたので明日にでも商業ギルドに行って、身分証作ってから、その後はこの街を少し散策でもと考えてます。」
「そーだな、俺らが一応23歳で通してるから、20代後半でいいんじゃないか。 リンの従兄弟って事にしよーぜ。 カール・グリントな。」と話しながら設定を作る。
「それ、いいですね。」と納得するカール。
こうして、無事カールが迷宮都市で従業員として働く事になる。