サラのお願い
ある日曜の朝、朝食を食べていると、血相を変えたサラが食事の入口のドアを叩く。
俺は厨房へコーヒーを持って移動してタバコをふかす。
ライラが俺が移動したのをみてドアをあけて聞くのだった。
「サラちゃん、こんな朝っぱらからどうしたの?」
「リンちゃん、お願いケーキ作って」と泣きながら頭を下げるサラだった。
話が見えないので、ライラが「落ち着いて説明してごらん」と促すと、サラが案内されたテーブルに座り説明する。
今日の午後、商会の得意先でガーデンパーティーがあるのだが、さきほど発注先から連絡があって馬車が事故にあいケーキが全てダメになってしまったという。 そこには3種類150個頼んでいて、他の店にもあたったが断られてしまっている。 思いあたる店を駈けずり回ってここにきたとのことだ。
ライラが「リンちゃんどうする?」するとボブが「ケーキ作るんなら、今日の昼の営業は休みにするし、リンが決めな。 なぁ、シュン」いわれ、「おう、リンの好きにしな。」って俺がいう。
するとリンが少し考えてから、サラにいう。
「作るのはいいですが、持って行きたくないので取りにきてくれます? あと、貴族とかにここのケーキだって言わないと誓えますか? 貴族とか関わりたくないので 。 ケーキはなんでもいいですか?」
リンの言葉に、サラが泣き止み、そして立ちあがりリンの手を握っていう。
「誓う。 絶対に言わない。 あと、ここにケーキ取りにくるし、種類はなんでもいい。 売値の倍で買うから。」
そんなサラの行動に驚き引き気味のリン。 サラからゆっくり握られてる手を離すのだった。
「何時までに必要ですか?」
「遅くて13時なの。 最悪出来るとこまででいい。」
「4時間ですか。。。シュン 手伝ってくれる?」と聞かれ「ああ、アップルパイ作ってくれるんならいいぞ」と俺は笑いながらいうと、「もちろん」とリンも笑顔で答える。
その後サラは邪魔なので1度帰らせた。
そこからは、多重思考によるシュンの魔術が活躍していく。 リンの指示で生クリームを泡立てながら生地作り、フルーツのカットをして行く。 スポンジも時間短縮で魔術をつかっていく。 ケーキが焼き上がり、デコレーションするのはリンだが、リンの様子をみながら魔術で手伝うシュン。
そして、12時に保冷魔道具のついた運搬用の箱をもったサラが来た時には片付けも終わっている。
リンが作ったのは、ショートケーキ、ザッハトルテ、プリンである。 それを見てサラは感謝し、金貨1枚分も材料費は使っていないのだが、金貨5枚を支払って、荷造りしたサラは帰っていった。
その後リンが作ったアップルパイを昼食後4人で堪能していた。
「しょうがなく受けましたが、もう今回みたいのは嫌ですね。 デザートは1人で作りたいです。 シュンが邪魔ってわけじゃないですよ。」
「ああ、わかる。 自分のペースでやりたいよな。 あーゆのは。」という俺に「そういうことです。」と微笑むリンだ。
「俺らは、面白い光景が見えて楽しかったな。」とボブが笑い、「ええ、生クリームと生地作り、フルーツのカットが同時進行だからね。 他には見せれないけど。」と光景を思い出していうライラ。
そしてライラがパンと両手を叩いていう。
「次きたら、しっかり断りましょ。 せっぱつまるのは、私たちには良くないわ。」
その言葉に俺も同じ意見だ。 結局俺たち4人はマイペースらしく、全員同意するのだった。。
リンが作ったケーキは貴族に大好評だったらしく、サラが何度かケーキを卸さないかと頼みに来たり、商業ギルド長も来たがライラとリンが断った。