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悪役令嬢の華麗?なる脱出劇  作者: サンショウオ
ゲームフラグとの戦い
95/155

その95(討伐隊出発)

 

 そしてお父様が準備した物を前に、私は茫然と眺めていた。


 目の前にはゴーレム馬に引かれた、あの戦闘馬車が置かれてあった。


 確かにお父様は乗り物を用意しておくと言っていましたが、これは領軍の秘密兵器ではないのですか?


 そしてマレットが率いる分隊と、エミーリアとエイベルそれに三頭の龍の計11人が私に同行するため待機していた。


「クレメンタインお嬢様、マレット以下6名、お館様からのご命令で同行させて頂きます」


 そう言うと私に軍隊式の敬礼をしてきた。


 こ、これは私も答礼しなければならないのでしょうか?

 私が悩んでいると、後ろからそっと近寄ってきたエミーリアが耳元でそっと囁いてきた。


「お嬢様、出発の挨拶をしてください」


 ああ、そう言う事なのですね。


「皆さん、これから私達は軍隊殺しと呼ばれる強力な魔物を退治に向かいます。大変厳しい戦いになる事が想定されますので、気を引き締めて参りましょう」

「「「は、分かりました」」」

「では出発しましょう」


 私がそう言うとエイベルが開けてくれた扉に向かって歩いて行った。


 馬車の中はガランとした空間になっており、側壁には引き下げ式の椅子と矢筒を固定する固定具やMPポーションを収めるケース等があった。


 まあ戦闘用の馬車なのだから、乗り心地を求めてはいけないのでしょうね。


 だが、私が引き下げ式の椅子を下ろすと、エミーリアがやって来てその椅子にクッションを置いてくれた。


「ありがとう」


 私がそうお礼を言うと、エミーリアはまた意外そうな顔を一瞬した後で、にっこり微笑んでいた。


 いい加減、私がお礼を言うのを受け入れてもいいだろうにと思ってしまった。


 ゴーレム馬に命令を伝えるのは魔力が必要との事で、マレットの部下の魔法師が行うようだ。


 馬車が動き出すと、体がぐっと後ろの方に引っ張られたが、隣に座ったキャヴェンディッシュが素早く支えてくれた。


「おっと、クレメンタイン様、大丈夫ですか」

「ありがとうございます」


 私の両脇には三頭の龍の2人のイケメンが占領しているのだ。


 2人は辺境伯様から破格の金額で私の護衛を請け負ったのだから、護衛対象の傍に居るのは当たり前ですといってこうなっていた。


 私の心臓が早鐘を打っているのは、2人のイケメンに挟まれて緊張しているからではなく、これから死地に向かう事に対してだと思いたい。


 馬車の中には常に私の傍に居るエイベルやエミーリアも居たのだが、完全に脇に追いやられてしまい、とても機嫌が悪そうだった。


 だが私としては、リッピンコットが森の中で帝国兵の眉間を撃ち抜いたあの魔法について知りたかったので、むしろ好都合だった。


 あの魔法は「高密度氷弾」と言うらしく、金属並の硬度がある氷塊を高速で打ち出せるそうだ。


 そしてこれは戦闘空間の魔法障壁も貫通すると自慢していた。


 そして戦闘馬車が辺境伯館を出て、ルヴァン大森林のある西門に向かって走り出すと、突然町の中から大歓声が沸き起こった。


 何事だろうと、馬車の窓から顔を出すと、そこには沿道に並んだ人、人、人の列が西門に向けて延々と続いていた。


 そして建物の窓も全て開いていて、そこから人がハンカチを振りながら声援を送っているのだ。


 まるで凱旋パレードのようだった。


「お嬢様ぁ、バトゥーラ要塞の敵を討ってくださいませぇ」

「クレメンタイン様ぁ、バタールを御守り下さいぃ」

「頑張ってください。次期当主様ぁ」


 私は大歓声の中、気恥ずかしくなって赤面していた。


 まさか、これもお父様の仕込みでは無いでしょうね。


 こんなに期待されてしまっては、討伐に失敗したら恥ずかしくて戻って来れませんよ・・・ああ、そうでしたわ。


 私が失敗したらこの町は無くなっていますわね。


 だが、そんな心配等全く考えていないエミーリアが、悪い笑顔を私に向けてきた。


「お嬢様、民衆に手を振ってあげてくださいませ」

「え?」

「これも次期当主としての義務でございますよ」

「うっ」


 何故、エミーリアまで次期当主という言葉を使うのでしょう?


 まさかお父様から何か言い含められているのではないでしょうね?


 私が疑いの眼差しを向けると、エミーリアの方から暴露してきたのだ。


「お館様が、どうやら次期当主になるつもりのようだと喜んでおられましたよ」


 それを聞いた私は、部屋の中で両親の前で啖呵を切った事を思い出していた。


 目の前のエイベルもマレットも皆、期待を込めた目で見つめてくるので、嫌とは言えない雰囲気になっていた。ええい、もう、やけくそよ。


 私は、戸惑いながらも民衆に向けて手を振ってみた。すると民衆からより一層の大歓声が上がっていた。


 周りからはこれで既成事実が出来上がりましたねという声が聞えてきたが、聞こえなかった事にしておこう。

 そしてようやく解放されたのはバタールの西門を出た後だったのだ。


 戦闘馬車が西門を出て黒い靄がある方に進んで行くと、早速、マレットが作戦を尋ねてきた。


「ところでお嬢様、その軍隊殺しをどうやって退治するのですか?」

「これよ」


 そう言うと私はマジック・バックの中から「楽々掘削」を摘まみ出すと、皆に見えるように振ってみた。


 軍隊殺しの弱点は、あの装甲のような外皮が無い腹の部分なのだ。


 直接攻撃を加えると直ぐに丸まって弱点が見えなくなってしまうが、これを地雷として使うなら自ら攻撃されにやって来る事になるのだ。


 魔物殺しが真っすぐバタールに向かっているというのなら、その進行方向に仕掛けておくだけだ。


 まあ、実際はそんな簡単にはいかないだろうが、態々そんな事を言って士気を下げる必要は無いのだ。


 それを説明すると三頭の龍の3人は、「楽々掘削」の威力が知りたいと言ってきた。


 まあ、この作戦に命を預けるのだからこれは同然の質問だろう。


 本当は実際に爆発を見せて上げればいいんだけど、貴重なマジック・アイテムを消費する訳にはいかないので、鉱山の岩盤を破壊するためのマジック・アイテムである事と、ターラント子爵館の外壁を崩壊させた威力を説明した。


 三頭の龍の3人は、その説明で大体の威力が分かってくれたようだ。


 マレットは領軍でも使えそうだと言っていたが、これは本来掘削用ですからね。


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