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悪役令嬢の華麗?なる脱出劇  作者: サンショウオ
ゲームフラグとの戦い
79/155

その79(ツォップ洞窟第4層3)

 

 フィセルの貧民街にあるとある2階建ての建物の1階で、Cランク冒険者パーティー竜の逆鱗のメンバーが上機嫌で酒を飲んでいた。


 元々この場所は小さな食堂だった場所で、1階は客席と厨房それと洗い場となっており、2階に寝室と居間があるという構造だった。


 4人が座っているテーブルの上には、外の屋台で買ってきた串焼きとドライフルーツそれにラッカム家の隊商が運んできたというさきイカがあった。


「あの貴族女は、今頃グラインダーの腹の中か?」


 バーニーがそう言うと、イライジャがつまみを口に入れて咀嚼すると、にやりと笑った。


「ああ、時間的にそろそろ第4層に行ってる頃合いだぜ」


 バーニーはその答えが大いに気に入ったようで、上機嫌で目の前の木製ジョッキを持ち上げると一気に飲み干した。


 そして厨房と客室の間にあるカウンターに置いてある酒樽の所まで歩いて行くと、コックを開けて空となった木製ジョッキに並々と酒を注いだ。


 そして同じテーブルに着席している3人の仲間を見渡してから再び口を開いた。


「どうだった俺の演技は上手かっただろう? それにしてもあの女がなかなか現れないからギルド職員なんてつまらない仕事を随分やらされる羽目になったぜ」


 その言葉に直ぐに反応したのは、ガタイの良いドムだった。


「それを言うなら俺だって、いつ来るとも分からないあの女を待ってずっと突っ立ってたんだぜ。足が痛くてしょうがねえぜ」

「嘘つけ、酒場でデズモンドの野郎と酒盛りしてたじゃねえか」


 バーニーがそう言ってドムに避難がましい目を向けていた。


 すると大人しく酒を飲んでいたデズモンドが不満そうに口を開いた。


「なんだよ。その良い方だと俺が何もせず酒を飲んでたように聞こえるぜ。ガイドブックを細工して、まっすぐグラインダーの元に行くようにしたのはこの俺だ。手柄と言えば俺が一番さ」

「おい、その情報を集めてきたのはこの俺だぜ。それなら俺の手柄が一番だろう」


 そう言ってイライジャが不満を露わにしていた。


 4人が自分の手柄を主張し合っているのは、あの女みたいな顔をした貴族男から受け取った報酬が目の前にあるからだ。


 今からその報酬をどう分けるかでお互い牽制しているのだ。


 男から支払われた報酬は焼き物の器に木製の蓋がついており、ずっしりと重く振ってみると金属がこすれ合う音が聞こえる事から相当の額であることが分かるのだ。


 欲望に目が眩んだ4人は如何に自分の役割が重大だったかを主張して、少しでも分け前を増やそうと、先程から熱い議論を戦わせているのだ。


 そんな白熱した議論に終止符を打ったのはバーニーだった。


「まあ、待て。先にお宝を拝んでみようぜ」


 その一言で全員が黙ると、コクリと頷いていた。


 それを見たバーニーはニヤリと笑みを浮かべてから、木蓋を外して中を覗き込んだ。


 そんなバーニーの行動に釣られてたように、他の3人も椅子から立ち上がるとその焼き物の器の中を覗き込んだ。


 そのタイミングで焼き物の器が爆発したのだ。


 それは中央にマジック・アイテムである「楽々掘削」をセットし、周りに小さな鉄球を入れた構造になっており、木製の蓋を開けると楽々掘削が炸裂する仕組みになっていた。


 起爆した「楽々掘削」の爆風に乗って四散した鉄球が、中身を覗き込もうとした4人の無防備は体を次々と撃ち抜いて行った。


 文字通り蜂の巣になった4人は何が起こったのか知る事も無く絶命していた。




 穴の底で暫くの間、男が下ろして来るだろうロープを待っていた私達は、いい加減騙されたことを自覚すると、次にどうするか考えなければならなかった。


 だが、状況は更に悪化しているので絶望感が募っていた。


 そんな中、エミーリアとエイベルが何とか脱出できないかと奮闘していた。


 それはエイベルが両手で輪を作り構えている所に、エミーリアが僅かな助走を付けて踏み込むと、エイベルが腕力で一気に上に持ち上げるのだ。


 エミーリアもそのタイミングで大きくジャンプしているのだが、流石に10mはある壁を乗り越える事は出来ず、途中でアイスピックを突き立てて何とか上に登ろうとするが、体重を支え切れず落下するという事を繰り返していた。


 だが、固い岩盤にアイスピックは太刀打ちできず既に折れて使い物になっていないのに、それでも諦めずに何度も挑戦していた。


 私もその努力に無駄だとは言えず、ずっと見守っているのだ。


 そんな私の頬に液体が付着したのだ。


 何だろうと手で拭ってみたが、暗視ゴーグル越しだと色が良く見えないので何の液体だが分からなかった。


 そこで、ゴーグルを外し、ライトを付けて見るとそれは血だった。


 慌ててエミーリアにライトを当てると、彼女の両手は真っ赤になっていた。


「エミーリア、もう止めて」


 私がそう叫ぶのだが、エミーリアは止めるつもりはないようだ。


 再びエイベルを土台にしてジャンプすると壁に向かって両手で掴もうとして叶わず、そのまま落下してきた。


 私は落下してくるエミーリアの体を受け止めるとそのまま抱き込み、動けないようにした。


「お願い、もう止めて。貴女がこれ以上傷つくのを見ていたくはないわ」

「ですが、このままではお嬢様をお館様の所にお連れするという使命が達成できません」


 そう言うと再び動こうするエミーリアをしっかりと抱き締め直した。


「駄目」


 私の瞳から零れ落ちた涙がエミーリアの頬に落ちると、ようやくエミーリアが動きを止めてくれた。


 そんな時にまた上に人の輪郭が現れると声が降ってきたのだ。


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