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悪役令嬢の華麗?なる脱出劇  作者: サンショウオ
ゲームフラグとの戦い
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その77(ツォップ洞窟第4層1)

 

 ガイドブックには、ツォップ洞窟の第4層には強力な魔物が居るので強い警告文が記載されていた。


 だが、このガイドブックを持っていた冒険者は、強力な魔物に遭遇せずにタバチュール山脈の反対側に抜ける方法を手書きで記載してくれていた。


 第4層には素材集めの冒険者は居ないので、ライトを消して暗視が出来るゴーグルを付けて視野を広げていた。


 ライトだと光が当たっていない部分が全く見えないのでかえって危険なのだ。


 私達はその手書きのルートを通っていたが、人一人がやっと通れるくらいの狭い通路が続いていた。そして地熱のせいか蒸し暑く、背中を汗が流れていた。


 暫く進んで行くと目の前に大きな通路に出る事が出来た。


 そこは天井も高く、幅も広いので今まで歩いてきた通路のような圧迫感は無くなっていた。


 そして地面は、ごつごつとした岩ではなく岩が砕かれたやや粗い粒子の砂といった感じに変わっていた。


 そして、その砂には何かが移動したような跡が残っていた。


 その跡は中央が深く凹んでいてその左右に何かが突き刺さったような跡があり、かなりの大物そうだ。


「お嬢様、ここは危険だと思います」


 私もそう思っているのだが、ガイドブックによるとこの通路の先にタバチュール山脈の反対側に抜ける通路があるのだ。


 ここはどうしてもこの通路を抜ける必要があるのだ。

 私達は祈る気持ちで慎重に進んで行った。


 そして通路の先にあったのは、ガイドブックには載っていない広い空間だった。


「あれ?」


 一瞬私は道を間違ったのかを焦りを感じて、実際の通路とガイドブックを相互に見比べてみたが、途中で道を間違うような分岐点も無くまっすぐ1本道だった。


 念のため、エミーリアやエイベルにも見て貰ったが、やっぱりガイドブックが間違っているという結論になった。


 こうなってくると、この先の道が本当に正しいのか分からなくなってきた。


 3人で相談してみたが、念のためもう少し進んでみましょうという事になった。


 そして広い空間の中に入ると、そこはドーム状の構造になっていて、少し先には人が簡単に落ちてしまいそうな大きな穴があった。そしてドームの向う側には2本の通路が伸びていた。


 ガイドブックが正しければあの2本の通路のうち左側が正しいルートのはずだったので、そちらに進んでみる事にしたのだ。


 ドーム状の空間の地面は、かなり荒れていた。


 それは砂丘の上をオフロードバイクでめちゃくちゃに走った後のような感じで、注意して歩かないと転びそうだ。


 それでもなんとかドームの反対側まで進み、その先にある通路を見ると、向う側に何かが居るようだった。


 立ち止ってそれが何なのか確かめようとすると、それはこちらに向かってきているようで、徐々に輪郭とかがはっきり分かるようになってきた。


 それは、体長5mはありそうな大きなダンゴムシだった。


 見つかると拙い事態になりそうなので隠れる場所を探していると、エミーリアが私の腕を掴むと後ろに向かって走り出した。


「お嬢様、あれは危険です。直ぐに逃げましょう」


 私は腕を引っ張られて走っていたが、ここの地面は凸凹が多くて歩きにくいのだ。


 そんなところを走ったら結果は火を見るよりも明らかだった。


 盛大にこけると、周りの石が弾け飛んでカツンカツンと音を響かせたのだ。


 当然魔物にも気づかれる訳で、先程のダンゴムシがこちらに向かって動き出していた。


 ガイドブックにも記載されていたが、ツォップ洞窟の第4層の魔物は強力なのだ。


 下手に相手の力量を計るとか言っていると簡単にやられてしまう。


 初手で最大の威力の物をぶつけるのが最良と判断して、マジック・バックから「火炎放射」のスクロールを取り出した。


 この魔法は、王都の冒険者ギルドで教えて貰ったA級冒険者チェスター・ベン・キャヴェンディッシュが得意とする火炎魔法だと聞いて思わず手に取ってしまったもので、家が買えるほどの値段がするのだ。


 スクロールに付いている封印の帯封を解き、巻かれた紙を広げると猛烈な火炎が目の前に現れたダンゴムシに襲い掛かった。


 その炎の威力はすさまじく、炎の大きさによってダンゴムシの姿が見えなくなる程だった。


 魔法が発動している間、周囲からは物が焦げる匂いがすると、私の頬は炎で赤くなり、前髪がチリチリに焦げないか心配になったほどだった。


 火炎が収まった先は洞窟内が火炎で焼かれて真っ黒になっており、その中央に丸まった何かがあった。


 何だろうと見ていると、それは現代日本の大型車両用のタイヤのように見えた。


 表面には山形の溝まであったのだ。


 それが最初はゆっくりと、次第に早く回転しだすとそのままこちらに向かって転がってきたのだ。


 重量のある巨大なタイヤは、それ自体が凶器と同じなのだ。


 それが今目の前に迫ってきていた。


「お嬢、避けて」


 そう言ったエイベルが私の腰をがっちりつかむとそのまま横っ飛びをしており、エミーリアもそれに続いていた。


 すると先ほどまで私が居た場所を巨大なタイヤが通過して、壁に激突していた。


 その衝撃で地面が揺れ、壁の一部が崩壊していた。


 成程、あれが転がっていれば洞窟の岩も砕かれて砂利や砂になるって事ね。


 だが、それだけでは終わらず、タイヤは方向を変えて再びこちらに向かって回転しながら迫ってくるのだ。


 タイヤは次第に速度を上げて迫ってきていた。


 エイベルが両刃の剣で切りかかるが、高速で回転するタイヤには文字通り歯が立たなかった。


 エミーリアも鎖鎌の分銅を叩きつけていたが、簡単に弾かれていた。


 そして私のメイスは言うに及ばずだ。


 タイヤの突撃には今の所何とか横に飛んで避けているが、それが精一杯で通路に逃げようにもその暇を与えてくれなかった。


 そして次第に早くなる攻撃に、じりじりと追い詰められていった。


 魔法も物理攻撃も効かず、時間と共に敵の攻撃速度が上がっているとあっては、最早轢かれるのも時間の問題だった。


 何とか逃れる先を探しているとあの人が落ちそうな大きな穴が目に入ったのだ。


 どれだけ深いのか皆目見当がつかないが、このままではいずれは轢き殺されてしまうので、他に選択肢はなかった。


 2人に声を掛けると一斉にその穴に向かって走り出した。


 穴の中に飛び込むと足元には何もない空間が広がっており、そのまま落下していった。


 落ちて行くと、途中にどこかにぶつかったのか頭の中に星が浮かぶとそのまま意識を失ってしまった。


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