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悪役令嬢の華麗?なる脱出劇  作者: サンショウオ
ゲームフラグとの戦い
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その76(ツォップ洞窟第2層)

 

 ツォップ洞窟の第1層ではちょっとしたハプニングがあったが、何とか第2層に降りる事が出来た。


 ガイドブックは冒険者向けに作られているだけあって、冒険者が欲しがる情報が沢山載っていた。


 例えば、メタル百足は第2層の南にある蜂の巣穴と呼ばれる壁面に多数の穴が開いている場所によく出没するとか、洞窟ワームは石柱の林と呼ばれる場所に生息しているとかの素材を得る場所の情報だ。


 そして比較的安全に食事が出来る場所の情報も載っていた。


 だが、私の興味は単に第3層へ降りる入口が何処にあるのかだ。


 そして目的の場所は直ぐに分かったので、比較的安全なルートを3人で検討してみる事にした。


 私は冒険者があまり行かないルートを選んでみたのだが、エミーリアとエイベルは逆に冒険者が多くいるルートの方が安全だと言ってきた。


 それは魔物が出ても、他の冒険者が退治するからと言うのがその理由だった。


 確かに一理ある。


 そこでガイドブックをもう一度調べて見ると、他の冒険者が戦闘をしている時は、緊急通報で助けを求められない限り近づいてはいけないと書かれていた。


 戦闘中に近づくのは獲物を横取りする行為と見なされるので、攻撃されても文句を言えないかららしい。


 でも、そう考えると運悪く戦闘に出くわしたら第3層に行くのが遅れそうだ。


 ここでの選択は、危険だが早く進めるルートと安全だが時間がかかるルートのどちらを選ぶかという2択だ。


 私の案に2人が反対のようなので、ここは2人に従う事にした。


 安全ルートでは、今いる場所から第3層に降りる入口がある場所の途中で、メタル百足が現れる蜂の巣穴と呼ばれる場所を通ることになっていた。


 私達が進んで行くと、早速前方から剣戟の音と何か固い物がぶつかる音が聞えてきた。


 音から判断すると冒険者がメタル百足と戦っている場面だと想定できた。


 1度目の足止めである。


 まあ、私達は素材集めに来たわけではないので、魔物を退治してくれているのはむしろ好都合と考えるべきなのだろう。


 戦闘が終わるのを待って現場を素通りすればいいのだ。


 やがて戦闘の音が消えたので、ゆっくりとこちらの存在が相手に分かるようにライトを照らしながら進むと、戦闘後の冒険者達と出くわした。


 冒険者達の獲物は想像通りメタル百足で、素材となる外殻を剥ぎ取る作業を行っている最中だった。


 冒険者が作業をしている場所は、洞窟の壁に沢山の穴が開いていた。


 この場所が蜂の巣穴と呼ばれるのはこのせいだろう。


「お疲れ様です。傍を通らせてもらいますね」


 私が声を掛けると、作業をしていた冒険者達は手を休めてこちらを見上げてきた。


「お、おう」

「よう、嬢ちゃん達、本当に洞窟に来たんだな」


 そう言った冒険者は、恐らく私達が冒険者ギルドに立ち寄った時にあの場所に居たのだろう。


 せっかくだから第2層で注意すべき魔物等の情報を聞いてみる事にした。


「第2層で危険な魔物は居ますか?」


 私がそう尋ねると、目の前の冒険者は私の左手首の冒険者プレートを見たようだった。


「Dランクだとどんな相手でも油断するとやられるぞ。俺達が普段戦ってるメタル百足だって噛む力は強いし下手すると腕や足をもっていかれるしな。ま、油断しないってことだ。無事町に戻ったら酒でも奢るぜ。女性冒険者なんて珍しいからな」


 そう言われてフィセルの冒険者ギルドの男臭さを思い出していた。


「ここに女性冒険者が居ないのはターラント子爵が原因なのですか?」

「ああ、冒険者なんて不安定な職業より愛人の方がいい暮らしが出来るだろう」


 成程、そう言う考え方もあるのね。


 私はお礼を言うと、酒を奢るという話は何とか誤魔化して先を進むことにした。


 私達は、このままタバチュール山脈を抜けて反対側に出る予定なのだが、それを馬鹿正直に言うつもりも無いのだ。


 その後も何回も戦闘の場面に出くわしては足止めをされるという事を繰り返しながら、ようやく第3層に降りる入口付近まで辿り着くことが出来た。


 そこにはガイドブックで比較的安全と記載された、冒険者用の休憩所のような空間があった。


 第3層に降りると直ぐに第4層への入口がある事から、下に降りる前に腹ごしらえをしておくことになった。


 慣れた動作でマントを下に敷くとその上に座り車座になった私達は、バックパックの中から食料を取り出していた。


「サディアス・ブリューさんから保存食を色々貰いましたので試してみましょう」


 そう言うとエミーリアは隊商から貰った袋を取り出して、その中身を広げていた。


 そこにはさきイカ、乾燥貝柱、乾燥昆布、カワハギの干物等が出てきた。


「これは酒のつまみではないの?」


 思わず現代日本の知識でそう言ってしまったが、エミーリアやエイベルは元々このような物を食べ慣れていなかったようで、きょとんとした顔をしていた。


 だが、これらの食材を食べながらお茶を飲んでいると、エミーリアが先程言った私の言葉に同意していた。


「お嬢様の言う通り、何でしょう、これは、とってもお酒が飲みたくなりますわね」


 私は、こんな危険な場所で酒等飲めるはずも無く、思わず苦笑いをすると木製の器から水を一口飲み込んだ。


「あ、パンもありますよ」


 そう言うとエミーリアは袋の中からラスクを取り出した。


 私はカリカリとラスクを齧りながら、ガイドブックの裏面に載っている第3層と第4層の情報を眺めていた。


 第3層は、冒険者が持ち帰る燃える土が採取できるが、毒の泉、熱い間欠泉等の危険な場所があり、浮遊クラゲ等の魔物もいた。


 だが、幸いにも、直ぐに第4層に降りる入口があるので、それらを考慮する必要は無さそうだった。


 腹ごしらえを終えた私達は、第3層に降りると、直ぐに、タバチュール山脈の反対側に抜ける第4層に降りて行った。


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