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悪役令嬢の華麗?なる脱出劇  作者: サンショウオ
ゲームフラグとの戦い
74/155

その74(ツォップ洞窟第1層1)

 

 子爵館を脱出した私達は、エイベルに救助されてそのままツォップ洞窟に向かう事になった。


 既にこの町で私達はお尋ね者になっているので、いつ何時子爵の兵士がやって来るか分からなかったからだ。


 私はと言うと、エイベルが武器を見繕ってくれていたので、エミーリアと2人でどれがいいか選んでいるところだった。


 エイベルが買ってきたのは、1m程の長さの両刃の剣、投げナイフ、先端に刺が付いたメイス、鎖鎌等だ。


 私が気に入ったのはメイスだ。私の運動神経では刃物を扱っても刃こぼれを起こすのが関の山なのだ。


 それにこれなら殴るだけなので扱いが簡単そうだし、なにより血が噴き出さないのだ。


 ちょっと重たいがクレメンタインの筋力なら何とかなりそうだしね。


 暫く2人で武器選びをしていると馬車が止まり、エイベルが目的地に着いた事を教えてくれた。


 その場所はちょっとした広場になっていて、他の冒険者が使っている荷馬車が数台置かれていた。


 エイベルはその場所を管理している管理人に何か話すと、その手の中に銀貨を握らせていた。


 ツォップ洞窟の入口はここから少し下ったところにあるようで、そこまであぜ道が続いていた。


 洞窟の入口は魔法による結界が張られており、その結界はシャボン玉の膜のような不思議な紋様が浮かんでいた。


 そしてその手前には石で作られた演説台のような台座があり、その表面には魔法陣が刻まれていた。


 これが冒険者プレートを翳す台座のようだ。


 私が台座の魔法陣に左手首の冒険者プレートを翳すと、直ぐに魔法陣が反応し、淡く光ると、目の前の結界に穴が開いた。


 私達は結界を抜けて洞窟の入口に向かった。


 洞窟の入口は、石をアーチ状に積み上げて補強されており3人横に並んで入れる大きさがあった。


 私は入口に立つと少しの間立ち止まっていた。


 王都のラティマー商会で脱出ルートを決めた時は、ここまで来るのにこんなに苦労するとは思わなかったが、それもこうやって無事到着出来ると、なんだがいい思い出になっていた。


 そして洞窟に入る第一歩を踏み出したのだ。


 洞窟の中は当然外の光が入って来ないので真っ暗だった。


 暗闇は、王都で購入した暗視機能が付いたゴーグルがあるので問題なかったが、ガイドブックによると他の冒険者から誤射されないように明かりを付けましょうと注意書きがあった。


 そこでマジック・バッグから、兜に取り付けられる魔石を利用したライトを取り出すと、エイベルのシルクハットとエミーリアのブリムに取り付けた。


 そして私はヘアバンドに取り付けて、そのまま頭に被ることにした。


 なんだか、こんな恰好をしていると洞窟探検隊になったようで、少しわくわくしていた。


 ガイドブックでは、第1層から第2層に行くルートは3つあったが、向かうのは当然最短ルートだ。


 ようし、レッツ・ゴー。


 そしてそんな遠足気分は僅か5分で打ち砕かれていた。


 近道を進んで行くと、何やら足元に柔らかいものを踏みつけたのだ。


 そこは暗い地面が何やらもぞもぞ動いていて、更に無数の赤い点が一斉に灯ったのだ。


 何だろうと、下を向くとそれに従って頭の上にあるライトも下を向き、そこに現れたのは無数のげっ歯類がこちらを見上げている光景だった。


「ぎやぁぁぁぁ」


 私は一目散に逃げた。


 野良のネズミの体内には人間には害となる病原体が沢山生息しているのだ。


 あんなのに噛まれでもしたら大変な目に遭ってしまう。


 私がいきなり走り出したのに2人は最初呆気に取られていたが、慌てて後を追ってきたようだ。


「ミズキどうしたのです?」

「はあ、はあ、あれは、危険よ」

「え、どうしたのです。あんなの群れるだけのただの小物ですよ」

「あれは体内に無数の病原体をもっているのよ」

「え、びょうげんたい? それは一体何ですか?」


 あれ? この世界ではネズミは病原体をもっていないの?


 それともゲームの世界だから問題ないとでも言うの?


 だけど、わざわざ危険に飛び込む事は止めた方がいいわよね。


「他の道にするわよ」

「え、まあ、ミズキがそう言うのなら構いません」

「それじゃ、こっちの道にしますか?」


 そう言うと、先程とは違う道をエイベルが指さしていた。


「そうね、そうしましょう」


 そして、その道を進んで暫くすると先頭のエイベルが立ち止った。


 どうしたのだろうとエイベルの肩越しに先をライトで照らすと、そこには道の先が見えなくなる程の蜘蛛の糸が張られており、その中に無数の黒い蜘蛛が蠢いていた。


 それを見た私の全身には鳥肌が立っていた。


 エイベルは困ったような顔で振り返ると、あれは、毒を持っているから炎で焼き捨てる必要があると言ってきた。


 私のマジック・バッグの中には王都で買った「火炎放射」というスクロールがあったが、蜘蛛相手に使うような魔法ではないのだ。


 この魔法は、王都の冒険者ギルドで教えて貰ったA級冒険者チェスター・ベン・キャヴェンディッシュが得意とする火炎魔法だと聞いて思わず手に取ってしまったもので、家が買えるほどの値段がするのだ。


 仕方がない、別の道に変えよう。


 ガイドブックに載っていた3つ目のルートに変更して暫く進むと今度は足元で、パキッと音がした。


 そして黒い地面がゆらゆらと揺れているような気がしたのだ。


 とても嫌な予感がして、先程から心臓が早鐘のように打っていた。


 恐る恐る頭を下に向けてライトで足元を照らすと、奴がいたのだ。

 しかも大軍で。


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