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その33(Aランク冒険者)

上級冒険者が学園に在籍していたら違ったストーリーが出来そうですね。

 

 Dランクへの昇進作業が完了して受付のある場所まで戻ってくると、まだ案内用掲示板の所に人だかりが出来ていた。


 私はせっかくなのでAランク冒険者の英雄譚でも見て見ようと、人だかりの中に入って行った。


 そこにはAランク冒険者チーム「三頭の龍」という名前の下に、3人の姿絵と個人名それに記事が掲載してあった。


 記事の内容は、先程受付の男性が話してくれた事と同じだった。


 ドラゴンと言えばこの世界最強の魔物のようで、それをたった3人で倒すとはどんなマッチョなのだろうかとその姿絵を見てみると、予想に反してイケメンだった。


 流石はゲームである。


 1人目は金髪碧眼の明るい性格に見えるイケメンで、金色の金属鎧を纏い、右手には身長と同じ程長い長剣を持っていた。


 姿絵の下に記載してある名前はチェスター・ベン・キャヴェンデッシュとなっていた。


 私がその男の姿絵を見ていると、横にいた冒険者が親切にもその男の事を解説してくれた。


「お、嬢ちゃん、やっぱりあんたも爽やかイケメンのチェスター狙いか。この男は炎弾のチェスターと言ってな。その火炎魔法は湖の水も全て水蒸気に変えるらしいぜ。王都の若い女性の半分はこいつ狙いだ」


 ふうん、魔法使いで剣士なのね。


 それはもしや、上級職だといくつもの職業を兼任できるっていうやつなの。


 炎を操ると聞くと爽やかと言うよりも、熱い男と言った方がイメージが合うのではないだろうか?


 次にその隣の男の姿絵を見た。


 2人目は茶髪赤眼の涼し気な微笑を浮かべたイケメンで、銀色の鎧を纏い右手には魔物等簡単に両断できそうな大きな斧を持っていた。


 名前はコンスタント・ハーヴィー・リッピンコットと書いてあった。


 すると今度は先程とは違う冒険者がこれまた親切にもその男の事を解説してくれた。


「いやいや、嬢ちゃんも、この癒し系のコンスタントの方がいいよな。この男は氷結のコンスタントと言ってな。その氷魔法は火山をも凍らせる事が出来るんだ。王都の若い女性の半分はこいつ狙いらしいぜ」


 つまり、この2人で王都の若い女性の人気を二分しているという事か。


 それにしても家名持ちという事は貴族のようだけど、これだけのイケメンなのに社交の場で貴族令嬢達が騒いでいないのは何故だろうと不思議に思った。


 そして3人目の姿絵は、長い黒髪にアメジストのような紫色の瞳をした女性で、なんというか美しすぎて近寄りがたいといった感じだった。


 この女性は名をアビー・グウィネス・キャナダインと言うらしい。


 するとまた、頼んでもいないのに解説をしてくれる冒険者が現れた。


「やっぱりアビーは冒険者仲間の憧れの的だよな。彼女は空間を操作する魔法を使うんだ。攻撃に使えばその空間に捕らえた敵を圧殺できるし、防御で使えばドラゴンのブレスだってはじき返すんだぜ。それに治癒魔法は部位欠損も直せるし、致命傷を受けていても直しちまうんだ。ああ、俺も身も心も癒して欲しいぜ」


 成程、流石はAランク冒険者だ。


 かなり話が盛られているようだけど、それだけの能力持ちということなのね。


 うん?


 ちょっと待って、この3人が学園に居れば、まさしく乙女ゲームの世界じゃないの?


 攻略対象の2人のイケメンと、ヒロインを妨害する悪役令嬢がここにいます。


 そうか、これは続編の前触れなのね。



 明日には王都を出て行くので、最後の記念として冒険者ギルドの酒場で昼食を取ってみる事にした。


 そこは4人掛けテーブルが10席あり、厨房と客席の間には料理や酒などを出すカウンターがあった。


 設置してあるテーブルや椅子は、乱暴な冒険者相手のためか頑丈な作りになっていた。


 この時間帯は酒場に殆ど客がおらず、給仕の女性もカウンターの傍にあるスツールにちょこんと腰掛けて、客がやって来るのを待っていた。


 まあ、この普通冒険者はこの時間依頼を受けているはずなので、酒場が繁盛していたらおかしいのだ。


 それでも数人の客が居て、酒を飲んでいる者もいた。


 私達が中に入って行くと、先程まで暇を持て余していた給仕の女性が、さっとスツールから立ち上がると、私達が座った席目掛けてやって来た。


 そしてそれは見事な営業用スマイルで注文を聞いてきた。


「いらっしゃい。注文はどうしますか?」


 私達は長居するつもりも無いので、ランチと果実水を注文した。


 出てきたランチは、腸詰肉の盛り合わせとサラダそれにパンとスープがついていた。


 私は人が少ない場所なので安心してゴーグルとマスクを外すと、昼食を頂くことにした。


 料理は体育会系の冒険者向けのためか、スープはやや濃い味付けで、肉も噛み応えのある物になっていた。


 昼食を終えたタイミングで先程の給仕の女性が食器を下げにやってきた。


「貴女、綺麗な顔をしているのね」


 うん?


 それはどういう意味なのだろうと小首を傾げて見ると、質問の内容を説明してくれた。


「ああ、酒を飲みに来る冒険者が貴女の事を噂していたのよ。ミズキさんでしたっけ。貴女が醜女とか、顔に酷いやけどがあるとかね」


 ああ、そう言う事か、でもそんな噂ならクレメンタインの外見からは大きくかけ離れているので、むしろ歓迎だった。


 是非ともその噂を広げて欲しい。


「馬鹿な冒険者達に、貴女はとても美しい女性だといっておきますね」


 いや、それは止めて。


 厄介毎しか招かない未来しか見えないから。


 給仕の女性はちょっと不満顔だったが、私がそれを望んでいない事を説明すると納得してくれた。


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