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その31(ランクアップ)

ゴブリン退治を終えて冒険者ギルドに戻ってきます。

 

 そして今、私とエミーリアは湧き水が湧いている場所で、体に付いた汚れを落としていた。


 どうやらこの湧き水は、近くのミッシュ山脈に降り注いだ雨が地中に染み込み、此処から地上に噴き出しているようだ。


 ここが森の中で魔物も居るのは分かっているが、それよりも返り血を浴びて真っ赤に染まった服を着ている方が耐えられなかったのだ。


 私は衣服を全て脱ぐと、そのまま泉にダイブした。


 気の毒なエイベルには周囲の見張りを頼んである。


 あの時、2人が殺られたと思ったのは私の錯覚だったようだ。


 それというのも、2人とも大した怪我をしていないからだ。


「それにしてもこうしてお嬢様と一緒に裸の付き合いをするのは、随分久しぶりでございますね」


 そうなのかとクレメンタインの記憶を探ってみると、湯あみの時は違うメイドが体を洗ってくれていたようだった。


 そして、何故他のメイドが担当だったのかは直ぐに理解した。


「まあまあ、こんな所にも汚れが」


 そう言うとエミーリアは体を密着させると、そのまま私の胸を両手で掴んできた。


「ちょ、ちょっと何処触ってんのよ」


 両手を使ってエミーリアの抱擁からどうにか抜け出すと、自分の記憶が無くなってからどうなったのか聞いてみる事にした。


「ねえ、エミーリア。貴女やエイベルが倒れた後って覚えている?」

「ええ、勿論でございます。お嬢様のあの雄姿を、しっかりとこの目に焼き付けておきました」


 私の雄姿?


 という事はあの血糊がべったりと付いた剣を振るっていたのは、やはり私という事なのか。


「お嬢様はエイベルの剣を掴むと、襲い来るゴブリンの集団を次から次へと切り捨てておられました。そのお姿は、辺境伯領でお館様と剣の訓練をしていた時のお姿にそっくりでございました」


 という事は、私が意識を失うとこの体はゲームで言う所のNPCになるという事だろうか?


 それとも元々のクレメンタインの意識が戻るのかのどちらかなのだろう。


 私が水浴びをしている間にエミーリアは汚れた服を洗ってくれていたようで、今は焚火をして服を乾かしている所だった。


 水浴びのおかげであの甘い香りも消えたので、人心地付くことが出来ていた。


 そこで昨晩の事をおさらいしてみると、やはり、ゴブリンを使って私達を亡き者にしようとした何者かの仕業だったようだ。


 だが、これで討伐クエストは完了したので、ランクアップが可能になったのだ。


 早いところ、この敵だらけの王都から逃げ出すことにしよう。



 王都の冒険者ギルドに帰ってくると、なんだか懐かしい感じがした。


 それが数日外出していたからか、あの森で死線を潜ってきたからなのかは分からない。


 だが、2人が集めてくれた大量の討伐証明部位のおかげで、晴れてDランクに昇格できるのは確かだった。


 私は任務完了の報告とその証明部位を持って受付に行くと、受付の男性職員ににんまり微笑んでいた。


「ゴブリンを討伐してきたわ」

「ほう、では討伐部位を出してもらおうか」

「これを」


 私がそう言うとすかさず後ろにいたエイベルが、討伐証明部位が入った袋をカウンターの上に置いた。


 その袋の大きさに受付の男性が目を見開くと、早速中身の確認を行っていた。


 男性職員の確認が終わるまでの間手持ち無沙汰だった私は、暇つぶしにギルドの内部をキョロキョロしていると、ギルドの案内用掲示板の所に人だかりが出来ているのに気が付いた。


 私がその人だかりを見ていると、討伐部位を調べていた男性職員がその視線に気づきその理由を教えてくれた。


「ああ、あれはこの冒険者ギルドに所属するAランク冒険者チーム「3頭の龍」がドラゴン討伐に成功した記事を掲載しているのさ」


 Aランクと言えば、ギルドマスターから説明してもらった最上級クラスの冒険者だ。


 底辺の私達からすれば雲上人のような存在なので、関わり合いになる事も無いだろうと感じていた。


 だが、そこでバーボネラ王国におけるブレスコット辺境伯の家格が、公爵に次ぐ事を改めて思い出した。


 そして低位の貴族達からすれば私もまた雲上人なのだと思うと、Aランク冒険者を雲の上の人と思った自分がなんだかおかしくなってきた。


 クエスト成功の記録が完了すると、Dランクへの昇格条件をクリアしていたことから、先程の男性職員からDランクへの昇格を希望するかと尋ねられた。


 これにはもちろん「はい」と答えると、ギルドマスターからDランクに昇格するための説明がありますという事で、女性職員が案内してくれるようだ。


 付いてきて下さいという事なので、その後を付いて行った。


 そして前にも来たことがある部屋に入ると、そこにはギルドマスターが寛いだ恰好で椅子に座っていて、笑顔で手招きしてきた。


「やあ、良くきたねえ。さ、座って」


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