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その27(ヒロイン1)

ヒロイン視点になります

 

 私の名前は熊野彩芽、高校生。


 まだまだ王子様という人種に憧れるお年頃なの。


 最近私の友人達は乙女ゲームに嵌っていて、いつもそのゲームの話題で盛り上がっていた。


 そんな友人達に勧められて私も始めたんだけど、思いのほか嵌ったのよね。


 そして気が付くと私は、最近嵌っている乙女ゲーム「ファン・ステージ」のヒロインになっていたの。


 このゲームにバーチャルリアリティーの機能があるとは知らなかったけど、よりゲームがリアルになったのは確かよ。


 そして私は当然このゲームの王子様である、第一王子イライアス・グレン・バーボネラの攻略ルートを進んでいるのだ。


 イライアスは俺様系で最初は歯牙にもかけてくれないのだが、婚約者であるクレメンタイン・ジェマ・ブレスコットも気が強いことからお互い良く衝突してて、クレメンタインの言葉による暴力に精神を削られ、父親譲りの剣の腕で模擬戦をしては打ちのめされて自信を無くしたところで、私がその傷ついた心を優しく癒してあげるのだ。


 それにしても男を武力と言葉で貶める女ってどうなのって思うのだけど、これもゲームを面白くする設定なんだよね。


 イライアスとの親密度が深まっていくと、あの残虐女とも告げ口令嬢とも言われるあの女が嫌がらせやら虐めを始めてくるんだ。


 これに上手く対処しないとリリーホワイト男爵家が没落するというバットエンドがあり得るのが、このゲームなのよ。


 そして私は学園に転入してきた時、幸運にもこのゲームのお助けキャラであるキャロルと出会うことが出来たの。


 彼女はとても気さくで、何より少し胸の膨らみが慎み深い私よりも更に慎ましいのだ。


 おかげで彼女といると何というか安心するのよ。


 キャロルはウェーブのかかった茶髪に黒瞳をした利発そうな子で、社交性があり、色々なところから情報を入手する特技を持っていた。


 そのため彼女から齎される情報は的確で、何処に行けば王子に遭えるとか、親密度がどの程度なのかをアドバイスしてくれるので、とても助かっていた。


 それにしてもあの残虐女の胸はどうなっているの。


 何故ヒロインである私よりも大きいのっていうか、ボンキュッボンなのよ。


 ゲームなのだからもう少し調整してもよさそうなものじゃない。


 私の最大の障害は、その見事な胸を突き出して見下して来るのだ。


 その劣等感と言ったら、言葉ではいい表せないくらい。


 おかげで闘志も湧くのだからいいと言えば良いんだけどね。


 私はお助けキャラに助言を貰いながら、残虐女の罠を上手く躱していくのだ。


 それにしてもゲームの設定で仕方が無いのだが、モブである他の女子生徒とは全然仲良くなれないんだよね。


 おかげでキャロルが唯一の情報源だったりするのよ。


 このゲームの他のルートを簡単に紹介すると、1人目は宰相の子息グラントリー・エリス・ギムソンで、彼は幼少の頃から国家運営のための知識を詰め込まされており、殆どの時間を勉学に使うガリ勉タイプなんだ。


 勉強ばかりしている彼は女性関係が苦手でなかなか本心を明かしてくれないけど、少しずつ関係を深める事で徐々に打ち解けてくれるんだよね。


 そして彼のルートでの最大の試練が、国内で起きる冷害なの。


 宰相という彼の父親の元には、領内で食料を賄うことが出来ない貴族達から陳情が集まってきて、それを唯一解決できるのが彼の婚約者であるアレンビー侯爵家なんだよね。


 ここは国内随一ともいう食料生産基地になってて、冷害の被害もあまりないから被害を受けた地域への支援も可能なんだ。


 だけど私がグラントリーと親密になると、彼のルートの悪役アレンビー侯爵令嬢が、その事を盾に関係を断つように圧力をかけてくるのよね。


 そこで私はキャロルに助言を受けながら、森の中で発育が早い根菜を発見し、小麦の代用となる食べ方を教える事で危機を乗り越えるんだ。


 その後、食料援助が出来るのにそれを行わなかったアレンビー侯爵家を見る周囲の目は厳しくなって、グラントリーが婚約破棄しても誰も異を唱える事は無いという設定よ。


 エンディングではアレンビー侯爵家は冷害対策での非行を非難され、爵位を落とされた挙句、寂れた土地への領地替えを命じられるんだ。


 2人目は、騎士団長の子息ジャイルズ・ガイ・ロンズデールで、イケメンだが脳筋の彼を上手く誘導して、手柄を立てさせるというイベントをクリアするんだ。


 彼の婚約者イブリン・リビー・ラッカムは、この国一の港湾都市を保有していて、交易で多額の利益を上げる第一王子派の資金源なんだよね。


 彼女の場合も当然私とジャイルズとの関係が深化すると、その資金力にものを言わせて圧力をかけてくるの。


 嫌よね。金にものを言わすのなんて。


 私はキャロルの助言を受けて、ジャイルズの領地であるロンズデール領で天然の良港を見つけてそこを新たな交易港にすることで解決するんだ。


 3人目のクレイグ・ニック・ベインの場合は、婚約者であるマリアン・モイラ・レドモントの実家が最大級の鉱山を保有していて、王国の貨幣製造に影響力が持っているパターンで、4人目の大司教の子息スペンサー・オールストンの場合は、教会内部での権力闘争といった具合なんだ。


 私はプレイしたことは無いけど、ハーレムルートと言う物もあるんだって。


 そして私はキャロルの助けも借りて順調に第一王子の攻略ルートを進み、やっとエンディングである学園での卒業パーティーでの断罪劇まで進んだんだ。


 そしてあの女が、私をなじりながらも自分がやった悪事を認めるってシナリオなの。


 なんだけど、何故かあの女はゲームのシナリオどおりに行動しないし、王子はゲームに無いセリフを吐いているのよ。


 そのせいなのかどうかは知らないけど、他の攻略対象者が次々と自身の婚約を破棄すると宣言していた。


 最早会場は誰も声を発する者は無く会場はしんと静まり返っていた。


 そんな中、低く通るような声が聞えてきたの。


「第一王子派が崩壊した」


 私は、その声を発した男の顔に見覚えがあるような気がして、もう一度よく見ようとしたんだけど、その声を発端に会場が大騒ぎになってしまい、それどころではなくなっちゃったんだ。


 もう訳が分からないわよ。


 私がプレイしていたゲームの世界で、やっとエンディングを迎えたというのにどうしてハッピーエンドにならないの?


 私は第一王子と結婚して、未来の王妃様になるはずなのよ。


 私の叫び声は、大騒ぎになった会場内で誰にも聞えない。


 次から次へと私のハッピーエンドを否定する声ばかり聞こえる中、私は混乱した頭ではこれ以上考える事が出来ずそのまま意識を手放したのだ。


項番変更28→27

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