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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

今日から異世界で最強猫ちゃん

作者: 武川やまね


うーん。


ふぁーよく寝た……にゃん。


にゃん?


にゃんってなんだ? わたし。


うーん、まあいいか。


いや良くない。ここどこ?


周りは「森」。私が寝てるの「草原」の上。

あれー? 私はたしか授業中「うたた寝」してたはず……。


なんで、こんな所に私いるの? 夢?

夢かなぁ?


うーん、まあいいか。


しかし、やっぱり森。

そよそよした風が気持ちいいねぇ。

空も青空だし、空気も美味しい。


良い夢だなぁ。リアルで。


のんびりとしてたが、周りを良く見ると、

草間の陰からモソモソと何かが動く。


何だろう……?


たくさんの猫。


数十匹はいそうな数の猫。


その猫達は辺りをキョロキョロし出すと、突然、

「ニャーニャーニャー!」と騒ぎ出した。


なんだなんだ!

どうした猫ちゃんたち!

お、お、落ち着ちて!

と私もアワアワ、キョロキョロしたら首が軽快に動く!

あれ、なんか、私の首がすっごく曲がる!


私の体がチラチラと見えた。

白と黒の毛皮でモッフモッフだ。

自分の「手」を見ると「肉球」だ。

着ぐるみを着てる?

いやなんか体の感じがおかしい……。

目の前で口元をチラッチラッするこれは「口のヒゲ」か?

何だこれ!


「ニャーニャー!」


わたし、猫になってた!


「ニャーニャー!」


どういうこと! ニャーしか言えない!


私もニャーニャー騒ぐ猫ちゃんの仲間入りをしていると、


「ニャ、ニャワーー!!!!」


一際、大きな声で叫ぶ猫。


そちらを見ると、


「グルルルルルルル」


デッカい犬。いや、あれは……。

「狼」が居た。

狼はゆっくりこっちに歩いてくる。


狼さん、何か御用かな? 縄張りに勝手に入ったとかなら謝りますけども……。そんな口からヨダレを垂らして……。はしたないですよ?


すると、


タッと……


狼がこっちに駆け出した。


「「「ニャーーーーー!!!!」」」


ニャーの声が一際大きくなった。

たくさんの猫達は一目散に逃げ出した。

皆、バラバラの散り散りだ。


これは、絶対食べられるヤツ! 私も逃げなきゃ!


走ろうとすると、足が絡まって上手く走れない! けど! 実家で飼ってた猫の走りを! その走りを思い出して! 頑張って私!


なんとか走った! 軽快に走っている (つもり)。

後ろを見る余裕が無い。ちゃんと逃げてるはず! (つもり)。とにかく遠くへ……遠くへ……!


ーー


ニャー……。


なんとか逃げた? しかし、死ぬかと思った……。

あんなん人の体の時でも、出会ったらやばい大きさの狼だった。2メートルくらい?


疲れた……。 ふいー。


オーケー、オーケー。


落ち着いて考えよう?


これは夢?


手で頬を触ろうとすると、バランスを崩しそうになる。ん? 頰が触れない。 あ、今のわたし猫だった。 前足で立ってるもんな。


なら、後ろ足で首の辺りを……


テシテシテシテシ。


あー気持ちいい……な。



って気持ちよくなってる場合じゃにぇええええ!


これは!


夢じゃ!


にゃい!


はああああ。


わたしは猫のようだ。なぜだか知らないけど。

しかし、私の体。

これはアメリカンショートヘアの大人のメスだ。毛艶も良いから2、3歳かな。

ツヤツヤ、フカフカだから、ペットショップに行けば、かなり高値なんじゃないかな? うふふ、私は高い女。なんてね。


……現実逃避している場合じゃにゃいな。


これからどうしよう?

猫だから野生でもなんとかなる?

でも、私アメショーだよ?

野生も未経験の目もキュルンとしてる家猫だよ? ヤクザ猫みたいに、修羅場も生き抜く感じの猫じゃないよ?


どうしよう?


「ウォーーーーーン」


遠くで狼の鳴き声がした。


「ピャッ!」


猫にあるまじき声を出した私は……。


あっ! あそこに入り口の小さな洞窟がある!

あの狼じゃ入れそうもないサイズの洞窟を見つけた。ちょうど猫サイズくらいの入り口の洞窟。

まあ見ようによっては穴だけど。


そこにササーッと入り込む。


しばらく進むと通路の途中のような部分に出た。洞窟内は真っ暗のはずなのに、ボンヤリとだが中が見える。

おおー、これが「夜目」という奴ですか。

猫ってすごいねー。


とりあえず何か無いかなーっと進むと、洞窟の脇に透き通った水が流れている。小川のようだ。この通路は先に進むと、歩ける幅より小川の幅が大きくなる通路のようだ。

おっ、この水は飲めそうかな? と思って近づこうとするが、そこで私はハッ!となった。


これ!


サバンナでシカとかウシとかが小川で水を飲もうとすると、ワニとかがガバッと水面から出てきて食べられるヤツ! テレビで見た!


危ない危ない。


ここはあんな狼がいる場所だ。

普通じゃにゃい場所。

慎重にならないと。


恐る恐る水面を覗くと……やっぱりなんかいた!

黒っぽい、ウナギみたいな奴がゆらゆらしてる。なんにゃ? ウナギなら大丈夫かな?

と思っていると、遠くにネズミがいるのが見えた。チューチューと小川の水を飲んでいる。あら、あのネズミ食べられるかしら?


と、ゆらゆらと泳いでいたウナギが水面に顔を出したと思ったら、目の前に「電気の玉」を作り出して、それをネズミにぶつけた。


ネズミは水を飲むのを辞めて、避けなきゃ!って顔をしたけど避けられなかった。バチィィッ!ってうるさい音と、眩しい光。おそるおそる目を開けると、そこにはプスプス焦げ焦げしてるネズミの姿が……!


ウナギはガバッと水面から体を出してネズミをパクッと食べると、ズルズルと小川の中に戻っていった。蛇みたいに体がネズミの大きさに膨らんでる。


何だアレ!?


「ピキャーッ!」


猫にあるまじき声を出して私は逃げ出した。


ーー


入ってきた穴の近くまで戻る。


にゃんにゃん(何なん) あのウナギ……。電気の玉を作り出してたよ。あんな生物、地球にいる? いや、いにゃい。私の好きな動物専門チャンネルでも見たことが無い。

小川で水をもし飲んでたら、プスプスいってたのはあのネズミじゃなくて私……。


怖っ!


ゾクっとした。


ちょっと判断を間違えていたら私もああなっていた。あのネズミみたいに、焦げ焦げに……。


この世界、怖っ!


はぁ、しかしこの洞窟は危険だわ。外に出ようかしら?


「ウォーーーーーン」


狼いるよ! 近くに! この穴を出てすぐの所に!

前門の狼、後門の虎ってヤツ! 本当にどうしよう。とりあえず、洞窟内に居るしかないか。


お腹も空いたし、喉も渇いてきた。



洞窟内で途方にくれていると、小さいネズミが数匹チュチューと私の前までやってきた。私を見て首を傾げている。あら、可愛い。


私を見てなんとも思わないんだろうか?

なぜ逃げない? もしかして子ネズミだから、まだ「色々と」知らないのだろうか?


そんな子ネズミに対して私の本能が働いた。


「ニャッ!」


私は子ネズミの一匹をひと噛みした。ネズミの首元を噛んだ。そのままでいると、口の前で暴れている子ネズミはしばらくすると動かなくなった。他の子ネズミはそれを見て、ピューっと逃げ出した。


私はその子ネズミを本能の赴くままにバリバリと食べた。ネズミは初めて食べるけども、悪くない味だった。

うん。鶏肉みたいな感じ。



ふいー。


ネズミを食べて少し落ち着いた。


落ち着いた私はふと考える。


私に食べられずに逃げる事が出来たあの子ネズミ達は、これで「成長」するのだろう。私みたいな「大きい生物」を見たら逃げるべきだと学習して。そして逃げ延びて生き残った個体が次世代を残して、生物の連鎖は続いていく。私の好きな動物専門チャンネルでも、口を酸っぱくしてはいないだろうけど、何度も言っていた事だ。


で、どうやら私もその連鎖の一部のようだ。

何も無い山?、森?みたいな場所で。

テレビを見ながら、「ほーん、生物界って大変ねぇ、ポリポリ」と呑気にチップスを食べてた昔の私を殴りたい。


いや、


だが、それなら今の私も殴られるべきなのだろう。だって今の私もまだ、現実を直視出来ていないから。


私はこのままだと、どうなる?


食べられる個体?


……嫌!


そんなの嫌だ。私はまだ恋人も作っていない。年齢=アレのソレだ。このまま無残に食べられて死ぬのは嫌。


私は、


私は……


「ニャニャン!」


デキる女(メス猫)なのよ!


お腹が膨れて、調子に乗っているだけじゃ無いんだから!


言い訳しつつ決意した。



とりあえず洞窟を探索ニャン!


と意気込んだが、行けるところは行き止まり。

後は「電気ウナギ」のいる通路を通らないとい


嫌やわあ……


あんな所を無事に通れるだろうか? いや否だ。

「電気玉」は1秒足らずで作り出してたし、一瞬でネズミに着弾してた。 あんなの避けられる? ムリムリ。


仮に私に年の離れた弟がいたとして、目の前で私に石を投げて私が避ける練習をしてからならば、出来なくもない。

「おっほー慣れてきたぞ! もう少し近くで投げてもでぇじょうぶだ!」なんて言えるなら、まず、でぇじょうぶだ。それが出来ないのが惜しいなぁ。


まあ。現実逃避は置いといて。


とりあえず、あのウナギをなんとかしないといけない。

ところで、なんと私には作戦がある。某ハンティングマンガで主人公が強敵に対して1発殴った時の方法を取るのだ。


私はその方法を取るべく、小川のまえで香箱(こうばこ)座りをして、待機だ。

この姿勢って案外ラクなのね。知らなかったわ。


私はじっとチャンスが来るのを待つ。


はぁ。しかし、子ネズミ1匹しか食べてないからもうお腹が空いてきた。目の前の小石を小川に落としたら、女神様がでてこないかしら? あなたの落としたのはこの肉の塊ですか? それともこちらの肉の塊ですか? はい、両方下さい。


うん、私、肉食の頭になってるな。


おおっと、現実逃避してたら機会(チャンス)がやってきた。

また、ネズミが小川で水を飲んでるのだ。チューチューと。そしてまた「電気ウナギ」がやって来た。ゆらゆらと……顔を出して……電気玉をネズミにぶつけて! 小川から体を乗り出した……今!


私は駆けた。

ちょうどネズミを飲み込んだ所のウナギは私に気づく間も無く、「首元を咥えられて」その勢いのまま陸に揚げられた。


よし! このまま縊り殺してやんよー!!

っと噛む力をさらに加えようとしたら……、


シビビビビビビビ!


こっ、こいつ! 体にも電気を流せるようだ! 口が痛い!でも、この程度ならなんとか我慢して!

噛むーーー!


私は我慢して噛んだ。


こんなの!


痛いですって手を挙げているのに、止めないヤブ歯医者の治療に比べたら!



私はなんとか耐えながらも、口にぐーっ! っと力を入れてると、その内シビシビが収まって、ピチピチしていた電気ウナギもだらんとした。


ふー……。やったか……。私……。


ウナギを離して座り込むと。


「レベルが2になりました。職業を変更しますか?」


えっ? あっ、はい。


現職 : 家猫

変更可能職:野良猫、泥棒猫、ガテン猫



これから、最強に進化する猫ちゃんの物語が……。








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― 新着の感想 ―
[良い点] 続きが気になる作品です
[一言] かわいいです。異端すぎる異世界ものですね でも探偵になる猫もいるし設定的にありありだと思いました ジョブチェンジでどんな猫特性が発揮されるのか気になります
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