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第5回 ゼロから始めるボルトの製図

先週説明があったので、講義開始と共に図面を描き始める。


輪郭線を作った後、表題欄のスタンプを押す。

図面はまず中心線を一本引くところから始まる。僕はまずはボルトのヘッドの部分を先に描くことにした。

図面の詳しい書き方なんかは、それこそ教科書に書いてあることだからここでは言及しない。


しばらくして、教授がホワイトボードに何やら書き始める。

「正六角形の書き方がわからない人が多すぎるので説明しますね。

 本当はこんな説明したくないんですけど、おかしな図面を描く人があまりにも多すぎる」


教授はそう言ってコンパスを用いた正六角形の書き方を示していく。

「こうして説明をする時に聞いていない人に限って、間違えているんですよ」


コンパスが嫌いな僕は定規を使って描いたが、とりあえず注意を受けていないから気にしないでおこうと思った。



今度はねじ部を書いている時だった。教授が僕の横を通る。

「上下対称じゃない」


それはつまり、中心線が中心を通っていない、そう言いたいのだろうか。

しかし、それを確かめる前に教授は去っていった。

周りを見ると、似たように「上下対称じゃない」と言われた学生は多く皆が皆疑問に思っているようだった。


たまに「いや真上から見てみればわかるだろう」と呆れながら言われる学生もおり、自分も試しに真上から見てみたが上下対称じゃないようには見えなかった。定規で測ってみても、上下の値は一致する。



もうわっかんねぇなぁ~!と思いながら書き進めることにした。






大体の形が出来上がり、寸法を記入し始める。ここで僕は自分が取り返しのつかないミスを犯したことに気が付いた。


最初に僕はボルトのヘッドを描いた。僕はそれをだいぶ図面の真ん中よりに描いてしまったのだ。それに伴い、主投影図が図面のだいぶ右に寄ってしまったのだ。


確か、手書き製図の手引きには図面の輪郭線と投影図間は15㎜以上は空けておかなくてはいけない、と書いてあった。僕の図面は、もしこのまま寸法を入れてしまうと輪郭線との間隔が無くなってしまう。



時計を見ると、講義終了30分前。ここまで書くのはだいぶもたついてしまったために1時間以上かかってしまった。今から修正を加えて間に合うかどうか…


しばらくどうしようかと思案したが、思案すること自体が無駄な時間だと思い、やめた。これはもう修正できるような余裕はない。このまま提出するしかない。


寸法許容差をどうするか、表面性状をどうするか、と言った具合で描くことはまだ沢山あった。けれど時間は無慈悲にも過ぎ去り、講義終了のチャイムが鳴り響く。


「皆さん図面を提出してください」




こうして、僕の初めての手書き機械製図は終わった。未完成のまま、何もかもが中途半端の図面を僕は提出した。

この図面が来週どのような評価で返ってくるのか不安だった。「酷すぎる図面は破り捨てられたり放り投げられたりする」とソースの無い情報だけ聞いてしまっていた僕は、不安でいっぱいだった。



少なくとも、次の課題はしっかり予習をしておこう。そう思いながら図面を提出し、教室を出た。

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