第9回 最終課題組立図提出日
いつものように、憂鬱な月曜が始まる。
予習をすれば怖くないのかもしれないが、今更ながら予習をやる時間はない。それも無計画なレポートの作成のためだ。
計画性のある学生は、実験を行った日から毎日コツコツレポートを進め、提出日より数日前には提出するのだろう。そんな学生ならば、製図前にはきっと製図の予習ができるのだろう。
しかし、僕のような学生はレポートを提出日7時間前(深夜2時など)に完成させることが多い。
そうなると、レポートができて満足して寝てしまい、製図の準備などカバンに製図セットを入れるだけでおしまいだ。
ましてや、1限に製図があれば寝不足間違いなし。圧倒的疲労感と共に講義を受け、不用意に寝た学生は制裁を喰らう。これもまた、負のスパイラルと言える。
最終課題の前であっても、それは変わらなかった。
僕は深夜5時(もはや早朝)にレポートを完成させ、2時間程度の仮眠をとって大学に来た。
レポートボックスにレポートを投げ込み、生協で買ったエナジードリンクを飲みながら製図の教室に向かうと教室前に僕と同じような状況の同級生を見つけた。
お互い、緑色の爪痕の描かれたエナジードリンクを飲みながらぼーっと虚空を見つめる。
「眠い」
「俺も」
交わす会話はこれくらいだった。もうなんか、疲れたお布団に帰りたい製図やりたくない美味しいモノラーメンなんか食べたい、それくらいしか頭になかった。
講義開始のチャイムと共に、皆動き出す。ペンを動かし、思考を止めないように。
先週に引き続き、図面を描く。
先週終わらなかったボルトの略画を迅速に終わらせ、ナットに取り掛かる。組立図は細かい表面性状を描かなくて良いのが嬉しい。
相変わらず、標準値に関して苦しむ学生が多い。今日は教科書に描いてある文章を覚えた学生が「教科書に書いてあることを読めと言っているんじゃないんだ」と叱られていた。
1コマ使ってようやく大体の図面が仕上がった。後ろの席の友人と情報を交換しつつ、図面を見比べる。
余分なモノはないか、足りないモノはないか、最善の注意を払いながら見比べ、「まぁこんなものだろう」と息をついた。
その時だった。背後から何かが近づいてくる。背筋がゾクッとし、鳥肌が立つ。この感覚はまさか…
「もう終わった、って安心してる人のほうが間違えてるんですよ」
教授は意味ありげなセリフを残して立ち去っていく。
(いつのまに…背後に?)
疑問は残る。けれど、今はそれを考えるよりも教授の残した言葉の解析が必要だった。
どこがまちがえているのか?この1枚の図面で修正を加えるのはそう大変なことではない。けれど、間違いを見つけ出すことは非常に困難だった。
なにせ、知識が無いからだ。
情報源はと言えば、過去の先輩が描いた図面1枚と友人の図面のみ。どれも確実に正しいという保証はない。
「どうする?」
後ろの席の友人にこの疑問を投げつける。
「わからない。けど、時間一杯使って何とか探すしかない。」
ローラー作戦の決行だった。