製図落単者の成り上がり~図面D評価の俺が転生したら技術責任者任された件について~
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
またこれはプロローグでありながら今後のストーリーとは一切関係ありません。
俺は頭面 描雄、大学2年生だ。
俺は今、とんでもない図面を描いてしまったみたいで絶賛教授にお説教を受けている。どうやら、講義中に指示していた表面性状の話を一切聞かずに適当な図面を描いてしまったことが教授の逆鱗に触れてしまったらしい。
しかし、俺は将来ラーメン屋の店主を目指す男、こんなところで立ち止まっていちゃいけねぇ!
「正直やる気が無いなら、大学辞めてアルバイトでもした方が良いと思うよ。講義聴いてないってことは、やる気が無いってことだよね?」
「この大学に来てから1年、ラーメンの美味しさを知り、ラーメン屋になりたいという意思しか僕にはありません。ラーメンのスープの設計には製図は必要かと思ってましたが…必要なかったみたいですね!!」
教授の怒りは沸点を超えたらしく、俺の図面は宙に舞う。俺はジャンプしてそれをキャッチする。その時だった。
「この、愚か者めがぁぁ!!!」
教授が大声を上げた。
それに驚いた俺は着地を失敗し、足を捻って更に運悪く頭から転倒したのだった。
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「痛てて…一体何があったんだ…?」
頭をぶつけたのか、コブができている。頭をさすりながら目を開けると、そこには見慣れない顔があった。
「おい!目を覚ましたぞ!」
「何!?長老に知らせろ!」
目の前で慌てているのは、豚の顔をした人間だった。いや、これは比喩表現でもなんでもなく、本当に豚。太った人を馬鹿にしているとかではなく、豚だった。
ファンタジーの世界では「オーク」なんて呼ばれている人種だろうか?そんな感じの人たちが目の前であたふたしている。
しばらくして、年老いたオークが俺の側に近づいてきた。
「おぉ…無事でございましたか。目覚めた直後で何が何だかわからないと思いますが、どうか貴方様にお願いがございます」
年老いたオークはそう言って俺に一枚の紙を渡してきた。
「これは…」
それは、さっきまで俺が教授にボロクソに言われていたボルトの図面だった。
「これは貴方様が持っていたものです。勝手ながら拝見させていただきました。
このような図面を描ける者など、この世界に何人いることか…」
これは…夢か?夢の中で豚顔の老人にまで「お前の図面クソ」と馬鹿にされるのか?
「どうか、その図面を描く技術を用いて我々オーク一族をお救いください!
身勝手なことだとは思っております…しかし、しかし、我が一族は今、危機に瀕しているのです!」
そう言って頭を下げる年老いたオーク。
「は?」
「あ、あ、いえ、申し訳ありません…事情もお伝えせずこんなことを言っては困りますよね」
そう言ってオークは頼んでないのに説明を始めた。
「実は、我がオーク一族は魔王に「我が魔王国はボルトが不足している。貴様らが大量生産せよ」と命令を言い渡されていて…
しかし、ボルトなど図面すら作った事のない我々の一族にはもはやそれは死刑宣告のようなもの。そんな時に貴方様が便所で倒れているのを見つけて今に至る、という具合です」
俺は便所で倒れていたのか。確かにさっきまで俺は製図の教室で教授と話していたはずなのに…これはまさか…異世界に来てしまったのか!?
「でも…俺の図面なんか…」
俺は返された図面を見返す。教授からの赤のチェックでいっぱいだ。もはや赤い図面と言っても過言ではない。
「いえ、このような真っすぐな線で描かれた図面初めて見ました。貴方はまさか…異世界の製図のマスターか何かでしょうか?」
「え?この世界ってそんな図面にうるさくないの?」
「はて?なんのことかわかりませんが、このような真っすぐな線を引ける技術を持っている人などそうそういません。もはやこの技術だけで城が建てられる金が手に入ることでしょう」
どうやらこの世界、クソザコ図面製作者の俺でも図面1枚で食っていけるくらいチョロい世界みたいだ。
ラーメン屋を目指す夢とは少し遠のくが、いっちょオーク救ってみますかね?
俺はそう思い、都合よく胸ポケットに刺さっていた0.5㎜と0.3㎜のシャープペンシルを構えた。