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第2話 チュートリアルで住居ゲットしたけど、爆発オチなんて最低だ!

チュートリアルをスキップしますか?

はい

→いいえ


 俺は、ただ呆然と町の風景を見ながら馬車に揺られ続けた。



 何がどうなって、なぜセーラー服などの日本の文化が混ざったりしているのだろうか。

 日本人が伝えたのか? ……恐らく、それが正解だろう。

 ん? 日本の文化……? 

 そういえばこの全く違う文化であるはずの異世界で、なぜ日本語が通じるのだろう?



 ふと、不思議に思ったので聞いてみると、



「多くの世界において共通の公用語なんじゃよ。一説には他の世界へ行く方法を見つけた日本人が、この世界を含めた多くの世界で日本語を広め、それが多くの世界で共通の公用語となったから、と言われていんじゃ。まぁ、真偽は定かではないんじゃがの」



 と、おじいさんは丁寧に説明してくれた。


 恐らくこのお爺さんが俺の名前を聞いて日本人だと判断したのも、そういう関係で名前が残っていたりしたからではないだろうか?



 あと、ついでに聞いておいたのだが、この世界には冒険者ギルドやダンジョンなども存在しているらしい。

 男なら、行かねばなるまい。



 俺がそんなことを思っているうちに、馬車が止まった。

 どうやら、目的地に到着したようだ。



「ここで、降りるんですか?」

「うむ、そうじゃ。ちと、寄らねばならんのでな」



 お爺さんはそう言って俺に降りるよう促した。

 寄らねばならないということは、恐らく、最終目的地は他にあるのだろう。

 そう思いながら、馬車を降りる。



 そして、目的の建物を見上げた。

 その建物は、ゴシック建築と言うのだろうか、芸術的に価値のありそうな建物だった。

 西洋の方にある大聖堂のような造りといえば、分かるだろうか?

 俺も詳しくはないので、よく分からないがそういう造りの白を基調にした建物であった。

 高さは5階ぐらいだらうか?



「……すげぇ、ファンタジーだ」



 先程から、すごいという言葉しか発していないような気がするのは気のせいだろうか?

 いや、気のせいではないだろう。



 落ち着く暇もないのだから、仕方ない。

 というか、今日は寝られないんだろうな。興奮しすぎて。



「ここは『空間管理協会』のクロスガルド南区支部じゃ」



 となりでお爺さんが説明してくれる。

 なるほど、さっぱり分からん!



「まぁ、入れば全て分かるじゃろう。ほれ、呆けとらんで早行くぞい」



 そう言うお爺さんと共に、その空間管理協会の支部の中へ進んでいく。



 空間管理協会の中に入ると、いくつかの受付があり、そこに何人かの人が並んでいた。

 簡単にいえば、銀行のようなものだ。

 俺たちも暫くそこに並んで待ち、そして、俺たちの番が来た。



「お待たせしました。私、空間管理協会クロスガルド南区支部の受付係、リーナ・ラースベルと申します。本日はどのようなご用件でしょうか?」



 受付係の女性がそう言って営業スマイルを浮かべる。

 緑の髪と目の、俺より何歳か年上であろう女性だ。



「うむ、実はこやつが地球の日本から飛ばされて来たらしくての。帰る気はないらしいんで、座標カードを作って欲しいのじゃ」

「畏まりました。カードの完成まで少々お待ちください」



 お爺さんと受付係のリーナさんが話を進めていく。

 ……おいおいおいおい、ちょっと待って欲しい。

 俺には全く理解不能だ。

 そう思い、口を開く。



「あの、色々ついてけてない人がいるんですけど?」

「あ、申し訳ございません。それでは、私が説明させていただきます。まず––」



 そう言って、リーナさんが詳しく説明してくれた。













 〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜



「……はぁ、なるほど。そういうことっすか」



 非現実的なリーナさんの話に驚きながらも、俺は一応、理解した。



 リーナさんの話によると、世界というものは数え切れないほど存在していて、世界と世界の境界が曖昧になっている場所から、今回の俺のように異世界に飛ばされるという事象が起こることがあるそうだ。



 そういった境界が極端に曖昧で、広さ自体も小さい世界が多く点在しているらしく、そういった世界を境界空間と呼ぶらしい。




 この世界、クロニアスは境界空間ではないが、境界空間並に境界が曖昧になっていため、境界世界と呼ばれているそうだ。



 そして、空間管理協会という、境界の状態を管理観察及び研究している組織が、多くの世界に点在し、空間の歪みによる問題––一般人の異世界転移––などを解決しているらしい。



 また、別の世界へと旅立った人のために、行ったことのある世界の座標を記録しておくための座標カードを発行しているそうだ。そのカードさえあれば、空間転移の魔法や魔術、魔道具でそのカードに記された場所へ行けるのらしい。



 今回、お爺さんが俺を連れてきたのも、そのカードを発行するためだったそうだ。



 なんでも、元の世界に帰りたくなっても帰れるように作ってくれた。

 とのことだ。



「いやいや、でも、カードを発行するのにもお金が必要でしょう? 金なんて持ってませんよ?」



 俺がそう言うと、



「なぁに、金なんぞ儂が払ってやるわい。言っておくが、儂がそうしたいからするんじゃ。年寄りの我儘のようなものと思って、受け取っておくれよ」



 なんて言われてしまった。

 そんなことを言われたら、断れないだろう。

 このお爺さん、なんて良い人だろうか。

 この恩は必ず返そう。

 俺は密かに決意するのだった。



「では、作らせていただきます。まず、こちらの登録用紙に氏名、性別、年齢をお書きください」



 俺は、リーナさんにそう言われるままに紙に名前や年齢を書いていく。

 文字も日本語でいいらしい。



 と、そこであることを思い出した。



 お爺さんには何も言われなかったが、この世界では氏名は逆であるらしい。

 郷に入っては郷に従えというのだし、氏名を逆にしたほうがいいだろう。



「あ、そうだ。ついでにあれも書くか」



 そう言って、氏名の間にミドルネームのようなものを足す。



 それは、俺の家に伝わる、伏せられていた名前。

 まあ、父の話によると、ミドルネームという文化のない日本では登録できなかっただけで、諱でも字でもないらしい。



 完成した座標カードには、

『氏名:ユキト・アーリ・クロー』

『性別:男性』

『年齢:15歳』

 と書かれていた。



 うん、なぜか厨二臭くなってしまった。

 ちゃんと、クロオと書いたのだが、カードになったらこうなって返ってきたのだ。



 ま、仕方あるまい。

 そう思ってカードを受け取るのだった。



 これが、後々に大きな影響を与えるなどということを知ることもなく。



「さて、それでは行くぞい」

「え、ちょっ、待ってくださいよ!」



 お爺さんが出口へと向かって言ったので、俺もリーナさんに礼してから出口へと向かった。
















 〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜



 どうやら、まだ行く場所があるらしく俺はまた馬車に揺られている。

 俺は馬車の中から、入り組んで迷宮のようになっている街中を見て、お爺さんに疑問に思ったことなどを聞いていた。



 そう言えば、何か聞き忘れている気がする。

 何だっただろう……大切なことを忘れている気がするんだが、出てこない。



「あ、そう言えば、名前聞いてない」

「名前……?」

「お爺さんの名前です」



 なぜ聞き忘れていたのだろう。

 命を助けてもらって、クロスガルドに連れてきてもらって、カードを発行してもらったのに。



「む、そうか。名乗ってなかったの。儂の名は、ガルゼルドじゃ」



 わぉ、名前かっけぇぇぇぇ。

 悪い魔法使いみたいな雰囲気のお爺さんには凄く似合ってる名前だ。



「ガルゼルドさんですね。はい、覚えました……あれ、名字とかは無いんですか?」

「今の儂には名乗るべきでないからの」



 お爺さん、もといガルゼルドさんはニコリと笑った。

 聞くなよ?

 恐らくそう言われているのだろう。



「あ、はい……えーと、そういえば、今度はどこへ向かっているんですか?」



 ガルゼルドさんの言わんとすることを察した俺は、話題を切り替えた。

 まぁ、先程のように話題に置いていかれるのは嫌なので、この話題にしてよかったのではなかろうか?



「む? 言ってなかったかの? それはのぅ……お、丁度着いたようじゃの。なれば、見る方が早いじゃろうな。ほれ、降りて見てみよ」


 ガルゼルドさんの話の途中で馬車が止まった。

 それに気づいたガルゼルドさんは、言って俺に降りるよう促してくる。



「……なんてタイミングだよ……」



 俺は小さく、そう呟いた。

 そして、促されるままに馬車の外へ出た。

 ドアを開けると目の前には、大きな一軒の家、いや、どちらかといえば屋敷とでも言うべきものがあった。

 西洋風な造りで、壁は白く屋根は黒というツートーンの屋敷だ。



「このお屋敷って……」

 まさか、と思いながら聞く。

「儂のじゃよ」

「えぇぇぇぇぇ! マジっすか!?」



 実は、ガルゼルドさんはお金持ちであるようだ、という新事実の判明に、俺は驚きの声をあげた。



 思い出してみても、この街中で馬車を見る機会はあまり多くない上に、殆どの馬車は煌びやかに飾られていた。

 ガルゼルドさんの馬車は真っ黒だったが。

 つまり、馬車を持っている人は少なく、それを手入れするような期間もないと思われる。

 だのに馬車を使っているということは、馬の世話や馬車の手入れを個人的にできる程の金持ちということなのだろうことが分かる。



「うむ、マジもマジ。おおマジじゃよ。本気と書いてマジと読み、マジと書いてガチと読んで、ガチと書いて本気と読む」

「いや、それ無限ループやないかい!」



「ま、この屋敷は身内が引っ越すときに買い取ったものじゃから、使っておらんのじゃがの」

「おぅふ、渾身のツッコミをスルーっすか……ってか今、屋敷は使ってないって言いました? じゃあ、なんでここへ?」



 使っていないのなら、なぜ来たのだろう?

 そう思って、聞いてみると予想外の答えが返ってきた。



「お主、この後暮らしていく場所が必要じゃろ? この屋敷も長いこと使っておらんから、使わしてやろうと思っての。まぁ、少し掃除はせんといかんがな」



 つまり、ガルゼルドさんは、ここに住めと言っていた。

 色々してもらったのに住む場所まで頼るのは悪いと思って、俺は遠慮した。



「いやいや、悪いですよ、ここまでしてもらっておいて。それに、身内の方が住んでいた家なら見ず知らずの人に住まれるのも嫌でしょう?」



 しかし、ガルゼルドさんは首を振る。



「そやつが引っ越すために、金が必要じゃから儂が買っただけじゃ。それに、お主には必要なんじゃから遠慮するでない」



 しかし、そう言われても、ここに住むのには抵抗があって当然だろう。

 俺がそう思っていると、ガルゼルドさんが笑みを浮かべる。

 俺は、その笑みに嫌な予感を感じた。



「じゃったら、こうしよう。この家に一部屋だけお主の部屋を定め、そこを自由に使用する許可を出す?リビングや風呂、キッチンなどの共用スペース以外の空き部屋は使用禁止じゃ。そして、晩飯はリビングで儂と一緒に、メイドが作った物を食べる。理由は、お主から見たこの世界がどんなものか聞きたいからじゃの。簡単に言うと、賄い付きのアパートのような制度にしようと思うんじゃ。そのうち、お主が金持ちになって、屋敷丸ごと買い取りたいと思ったならば1000万クロム。普通に部屋を借りるだけなら無料とする。どうじゃ?」



 俺は、ぽかんと口を開け、唖然としてガルゼルドさんを見つめる。

 ガルゼルドさん、こんなことを考えていたのか。



 確かに、住む場所は必要なのだ。

 実際に、使っていないのだから、ガルゼルドさん的には使おうとも使わずとも良いのだろうが、ただなのである。

 それに、ここに住めば、恩を返すチャンスもあることが出来る。



 しかも、買うつもりはないが、1000万クロムで屋敷を売ると言ってくれている。

 1000万クロムとは、日本円にして1000万円である。



 この世界では、1クロムでクロム銅貨1枚、100クロムでクロム銀貨1枚、1万クロムでクロム金貨1枚、100万クロムでクロム白金貨1枚である。

 つまり、白金貨が10枚集めたら、屋敷を売ってくれるそうだ。

 本来ならそんなに低い値段であるはずがない程の屋敷であるにも関わらず、だ。

 というか、その値段でも、俺なんかに集められるとは思えんのだが。



 しかし、俺には、ここに住まわせてもらわない手はないのだ。

それ以外に行く場所も無いのだし。



「ガルゼルドさん、ここに住ませてください」

「フォッフォッフォッ、今日からよろしくの」


 そう言って、ガルゼルドさんは手を前に出してくる。



「はい! よろしくお願いします!」



 ()()、平原で出会った俺に対して、何と優しい人だろう。

 俺はそう思いながら、ガルゼルドさんの手を握り、握手する。



 それから2分後、屋敷の大掃除が始まった。

 俺は、どこからか湧いてきたガルゼルドさんのメイドや執事と供に掃除に挑むのだった。



 しかし、これだけの人を雇えるということは、やっぱり金持ちだったようだ。

 何者なんだろうか、と思って一度聞いてみたが、答えてもらえなかった。

 ガルゼルドさん、本当に謎多き人だ。













 〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜



「だぁ〜! 疲れた〜!」



 あれから数時間の大掃除を終えて、俺は自分が借りることになった部屋のベッドに横たわっていた。



 俺の部屋は2階の一室になった。

 15畳くらいだろうか?

 それぐらいの広さの部屋になった。

 すごい広い屋敷だ。

 部屋は掃除をする前に決めておいた。

 その時には、ベッドどころか何もない空き部屋だった。

 しかし、掃除を終えて見てみると、新品のカーペットが敷かれ、新品のカーテンも取り付けられていた。

 さらには、新品のベッドや机、椅子、タンスなどの家具も置かれていたのだ。

 部屋に入った時は驚いたものだ。

 一体どんな手品を使えば、俺が気付かないうちに家具を運び込めるのだろうか。



 そんなことを考えて寝転がっていると、何か変な音が聞こえた気がした。



「うん? 今、何か変な音がしたような?」



 体を起こして周りを見るが、誰もいないし、部屋に変化もない。



 ジジ……パキッ……。



 いや、やはり聞こえる。

 それに、少し焦げ臭い匂いもするような。

 場所は……俺が持ってきた、父の物が入っている袋の中。



「何の音だ? こんな音がする物、入れてたっけ?」



 俺は、ベッドの横に置いてあった袋を手に取り、手繰り寄せ、中を覗く。

 瞬間、眩いばかりの青い光が袋の中から放たれた。



「うっ! 目がぁ!」



 突然の発行に、俺は叫び声をあげ、目を擦る。



「何が、起きた?」


 目を開けると、黒く焦げた紙のような物が部屋中を舞う中、目の前には袋の中身が散乱していた。

 本、写真、金貨、その他諸々。

 そして、鎖に巻かれた黒くて丸い何か。



「あれ? お札は?」



 パキーン!



 そう言った瞬間、鎖が解けた。



「え、ちょっ、待っ」



 そして、黒くて丸い物体が弾けた。



ここまで読んでくださりありがとうございました。



ここまで書いて思ったんですが、クロニアス・クロス・クロニクルって、略すとクロクロになるんですかね?

それとも、クロクロクロでしょうか?

サンクロ……はどこかのチェーン店チックだし、クロサンとかでしょうか?

なんていう、どうでもいいことを考えていたら、1日が終わった……。



感想や意見など待ってます!

Twitterで投稿予定のお知らせや、その他諸々やってます。

@AZA_SATORU

で検索すると出てきます。


最後に、明日も投稿します。

ぜひ、読んでください。

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