ここから始まっていく物語
これから出来事が色々起こっていきます。楽しんでくれるような内容にしていけるといいなぁ。
「ふぅ〜、読み終わった...。」
パタンと本を閉じ二冊の本を机の上に平積みにして歩人は大きく伸びをしながら唸るような声で台詞を出す。
歩人は姿勢を戻し本へと視線を向けそのまま本を手に取り本棚へと収納するために椅子から立ち上がる。
歩人はふと思った。あの少女が持ってきた本だ。歩人がこの本の場所が分かるはずもない。
いくら好きなジャンルとはいえ、「神話と歴史の関係」と「過去の英雄と現代の英雄」という読んだことがない本を同じジャンルのような本が多い場所に勝手に置いておくのもなんだか悪い気もする。
かと言って空いている同ジャンルの収納スペース闇雲に探しても時間がかかるので、少し面倒と思いながらも歩人は受付で場所を聞くことにした。
受付へと着くと椅子に腰掛けて机に向かいパソコンを弄っている50代後半の女性館員に本の場所を尋ねる。
「すみません、この2冊の棚を教えて貰っていいですか?」歩人は少し申し訳なさそうに声を掛ける。
案の定、女性館員は、(なんで読んだ本の場所がわからないんだろう?)。という表情を少し歩人に向けながらも、「はい、少々お待ちください。」と優しく返答をしてくれた。
2分ほど時間が経つと、女性館員が歩人に声を掛ける。それは意外な答えだった。
「すみませんお客様、そちらの2冊はこの図書館のものではないみたいなんです。」と女性館員は歩人にいう。
「え?そ、そうなんですか?」歩人は疑問を隠せなかった。
ということはこの本は、あの少女の私物ということになる。女性館員に頭を浅く下げて受付を後にする。
さて、あの少女を見つけないことにはことは進まなくなった。と思いながら、とりあえず歩人は少女と別れた本棚に向かう。
その本棚へと着くと少女が消えるように入っていった本棚の間へと身を進めていく。
進むと暗い雰囲気の、本棚が連なった道が、歩人が立っている位置から奥行まで25m程続いている。
(とりあえず手当りしだいにこの辺を探したあとほかの場所に探しに行くか...。)
歩人がそう思ったその刹那、ふと何かを感じ、足を右回転させ、引き込まれるように歩人は奥へと進む。
(なんだ?今、ここから何かが伝わったような...?)そんな事を思いながらも、止まらない足は少しづつ速度を上げと奥へ進んでいく。
奥へ行くとそこには高めの本棚が左右へと広がっている。左は数歩歩けば角に当たるぐらいの距離で、右は先ほどと同じ25m程の距離で、左に本棚が立っている。右の一番奥は角にあたる場所だが、灯りは左よりも多い。
(右に言って探してみるか。)と思い足を進めようとし、右足を上げ地につけるその瞬間、歩人の肩が優しく叩かれると同時に、「あの本どうでしたか?」と声がかけられる。
それは歩人が探していた人。歩人が本を渡された少女の声だった。
「えっ!?」と言いながら、歩人は本を渡された時とは比べ物にならない程の速さで体を反転させる。そこには探し求めていた、茶髪で肩までのセミロングの少女がそこに立っていた。
「あ、えっ!?」
歩人は拍子抜けた声を出す。それも仕方ないだろう。普段本を読んでいる歩人は親や先生といった必要最低限の女性としか話す機会が無い。
彼女の顔は本を渡された時少し見ただけであって、まじまじと見た訳では無い。
整った小顔に薄い化粧、身長は歩人より低めの155cmぐらいだろうか。
天候のせいなのか、薄生地のロングTシャツを着て、短パンにタイツ、そしてブーツを履いていた。
スタイルもよく、生地が薄いロングTシャツ越しに少し大きめの胸が見ればわかるレベルで出ていて、腰から下にかけて細い足が地面へと続いている。
こんな少女を見たとなれば、普通の男子、それも普段女性と関わりが皆無な歩人からすれば考えていた感想がどこか遠くへ吹っ飛んでいってしまっても仕方ないだろう。
「あの〜、どうかしましたか?」と首を傾げながら少女が言葉を発しない歩人へと声を掛ける。
「いえっ!!何でもないでしゅよ!?」
盛大に最後に噛んだ歩人に対し、
「ふふっ...面白い人...。」と少女が口元に手を近づけて小さく笑う。それに対して恥ずかしくなったのか、歩人が焦りながら本の感想を伝えようとする。
「えっと感想は...、そ、そうですね、こっちの神話の方はギリシャ神話やケルト神話などの神々や武器が歴史にどんな関係があったのかとかで凄く引き込まれて、こっちの本は...。」と女性に手短に約3分間程で感想を伝える。焦りながらも完結に、しかしわかりやすく、本の内容を真似て少女に話した。
「よかった、やっぱりああいうジャンルの本好きなんですね...!!」と、両手を手の前で合わせて歩人へと微笑む。
そんな反応をされた歩人は鼻の下を伸ばし、「そうなんですよ〜!僕神話とか歴史上の物語とか大好き...で...え?」
歩人は徐々に声を落とし疑問を抱く。
なぜなら、先ほど少女が言った台詞の中で「やっぱりああいうジャンルの本が好き」という言葉があったからだ。
(何で、彼女は僕がこういうジャンルの本が好きだってわかってたんだ?)
歩人は心の中で考える。思いつく答えは一つしかない。彼女がずっと歩人の事を観察していたとしか考えられない。
図書館や学校に通っている歩人にとって本を読む場所は大概が家、学校、図書館しかない。
そして家や学校よりも多く、長い時間本を読んでいるこの図書館で彼女が歩人を観察していた確率が一番高い。
意を決して歩人は少女にどうして好きな本のジャンルを知っているかを聞く。
「どうして、僕の好きな本のジャンル、知ってるんですか?」
「えっ?どうしてって、それは...。」
少女は俯いてしまう。そして徐々に上に視線を上げながら、「言わなきゃ、ダメですか?」と上目遣いで歩人に問いかける。
少しドキッとしてしまうが今はさっきと違って歩人の意向は少女が自分のことを知っていたことに対して向いている。
「実はずっと、あなたの事を、この図書館で見てたんです。ずっと神話や歴史者の小説や図鑑、著書などを見ていて...。」
「そ、そうなんだ、でもどうして僕なんかのことを?」
ここでアニメやマンガでよくある展開に無意識に持っていく歩人。それに対し、少女もよくある言葉を言う。
「どうしてですか?それは、あなたの...、あなたの...。」
思わず生唾を飲み込む歩人。そして少女の口がゆっくりと言葉を発する。
「あなたの...あなた固有の...能力が欲しいから!!!!」
「えっ?うおっ!?」
少女は大きな声を上げ右腕を後ろに引き、顔を豹変させ、手を鉤爪のような形へと変え歩人の左胸に掴みかかる。
間一髪で何とかそれを交わした歩人は体を反転させ、一目散に走り出す。
(なんだよなんだよ!!なんなんだよ!!)
歩人はそう思いながらもこの状況から逃げることをまずは優先するために、自身の得意分野の足の速さで少女、いや、女から距離をどんどん空ける。
「逃がさないわよ...やっと見つけた...神への力...!!!」
女は体のあちこちをポキポキ鳴らしながら歩人を追いかけ始める...。
さあ、ここから始まっていきますぞ。
歩人の物語が!!
表現の仕方がやっぱり難しいですが、頑張って書いていきたいと思います!!