ついに家に!……帰るまえにもう一悶着…
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3 ついに家に! ……帰るまえにもう一悶着…
僕達の目の前に降り立ったサンダーバードの王、サンダーフォルンはその力強い目で僕を見ると、次にその周りにいる小隊の仲間達に目を向けた。
帝国では伝説の存在として崇められるサンダーバードだが、その数は年々減っていき近年では目撃情報すら無くなった為、既に存在しないとされていた。そんな伝説の存在がいきなり目の前に現れたのだ。
その威風堂々とした姿に驚愕した人もいれば、その鋭い眼光を受け金縛りにあう人もいた。僕とサクラは既に数年の付き合いなので、彼に驚く事は無い。
みんなが未だ呆然としているなかサンダーフォルンに近づき片手を黒鳥の頭に置こうとする、黒目黒髪の女がいた。
腰まで届く長い艶やかな髪をポニーテールにし、少し切れ長の黒い瞳は鋭いがその瞳の奥には優しさがあり、厳しいと言うよりは強気の女性と言った方がしっくりくる。
本当に強気の女だけどね。この女こそ、この世界で大賢者と呼ばれる僕の師匠、サクラの容姿だ。
身長は170センチと女にしては高く、体は言うまでもなくボン! キュッ! ボン!である。それでいて、引き締まった体は、その顔と相まって、凛とした雰囲気を漂わせていた。
服装は、一言で表すなら魔女である。
全身黒一色で固めており唯一、胸元から下げられた紺色の宝石が嵌め込まれたペンダントがより雰囲気を醸し出していた。
そんなサクラは僕より長い付き合いのサンダーフォルンに手を差し出したが、それはサンダーフォルン自身によって妨げられた。
「久しぶりだな! サンダーフォル…《ウィルーー‼︎ 大丈夫か! もう安心していい、我が来たからには何人たりとも近づけさせないぞ‼︎》ブハッ!」
いきなり跳ねたサンダーフォルンの体をまともに顔面に喰らい、右横に飛ぶサクラ。
その光景を見ながら僕の笑顔は引き攣る。当然僕の周りにいたアシュレイやセリア、ユージンやルークと言った小隊メンバー達も顔が引きつっている。
そしてサクラとサンダーフォルンを除く全員が心の中で突っ込んだ。
「「「「「「「「守護獣じゃないんかい‼︎」」」」」」」」
と。
4回ほど飛び跳ね、そう口にしながら僕の目の前まできたサンダーフォルンは自身の顔を僕の顔に近づけると、頬擦りをした。
《寂しくなかったか、ウィル? 大変だっただろう初めての戦争は? だが、安心しろウィル。もう家に帰れるぞ! みんなお前の帰りを待っている。さぁ、早く背中に乗るのだ》
耳元でそう言ってくるサンダーフォルンに僕は今の話を聞いて首を傾げた。
「ええと……サンダーフォルンさん。どうして僕が戦争に参加したのを知っているんですか? 僕の戦争参加は帝都に来てから決まったのに?」
そう問いかけるとサンダーフォルンはふふん! と誇らしげに胸を張りながら言った。
《ふふふ。我も事前に王国軍が来ていたのは知っていたのだ。それをサクラに報告しようと思ったらいきなり我の愛しの…ゴホン! 弟子のウィルを連れて帝都に行くと言うい出したからこれはもしやと思って上空から見守っておったのだ。そしたら、ウィルが後ろの者達と共に訓練をしている姿を見てな。これは戦争に参加するなと思ってずっと空から見ていたのだ。何度ヒヤヒヤした事か! もう少しで雷撃を落としてやるところだったぞ! あの憎々しい王国軍め! 次にウィルに手を出してみろ‼︎ その四肢をもぎ取り、ズタズタに切り裂いて……ゴホン‼︎ とにかくそう言う事でウィルが戦争に参加したのは知っていたのだ》
理由を説明しながら、途中で変なものが聞こえてきた気がしたが気のせいだろうと僕はスルーすると、サンダーフォルンに「そうだったんですか? 全然気付きませんでした!」と相槌を打った。
ちなみに、小隊のメンバーは全員、憧れの存在、伝説の存在、最強の存在と謳われたサンダーバードが凄まじい過保護主義者だったことに動揺を隠せずにいたのだった。
何度か言葉を交わし、小隊メンバーを紹介するとサンダーフォルンはルーク達に向かって礼を言っていた。それを聞いて慌てるメンバーを見て僕は笑顔を浮かべていると突如、背後から背筋が凍るような何かを感じた。
どうやら、それを感じ取ったのは僕だけではなく、小隊メンバー全員、そしてサンダーフォルンも例外ではなかったらしい。
僕は瞬時に振り向くと、そこには黒い影が後ろからもうもうと立ち上がるサクラの姿があった。
僕は「あ、やべ」と思った時には既に遅かった。「何ご主人様を吹き飛ばしとるんじゃー‼︎ そして、無視をするなーー‼︎」と若干自分が忘れられた事に腹を立てながら叫ぶとサクラは僕たちに向かって魔力弾を撃ち出したのだ。しかも、凄まじい威力かつ数を。
数秒後、そこには多数の少年少女の悲鳴と大人の男性の悲鳴。そして、甲高い笑い声と爆発音が響き渡った。
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「それじゃー僕はもう行くよ」
僕はサンダーフォルンの背中からルークにそう言った。
「ああ、僕達はウィルがここに帰ってきてくれるのを楽しみにして待っているよ。当然、その時には僕の方が強くなってるけどね」
満面の笑みを浮かべながらルークはそう言った。が、残念な事に服はボロボロである。何故かは察して頂けると思うので説明しない。
「いや、いや、ルークさん。その時には僕は今以上に強くなっていますよ」
お互いに見つめ合う僕達。先に目をそらしたのはルークだった。
「全く、頼もしいな……お前は。ちゃんと帰って来いよ。お前がいないと張り合う奴がいない…」
「分かってますよ。みんなも! また来年!」
そう言うとみんな笑顔で帰って来いよ!や、待ってるから! と言ってくれた。
僕はサクラに頷くと、サクラの合図によってサンダーフォルンはその巨大な翼をはためかせ宙に浮くと、一気に空高く舞った。
夕焼けの燃え上がるような赤色の光をその身に受けながら僕達は小さな声を背中に受けつつ一直線に家へと向かった。
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だが、どう言うわけかその途中でフードを被った存在と遭遇。色々あって只今交戦中であります……
はぁー…早く家に帰りたい……
自分で読み返して見たけど思ったより急展開だったかな?