6話 本戦に出る事になった。
武闘大会当日。
ヤマトは2人の女の子に挟まれて目が醒める。
右にはシトラス。左にはフレイア。
2人共気持ち良さそうに寝ている。
ヤマトは2人を慈しむ様に優しく頭を撫でる。
「んっ・・・んん・・・」
「・・・ヤマト君・・・すぅすぅ・・・」
一瞬、起こしてしまったかと思ったけれど、2人は少し身を捩っただけだった。
ヤマトはしばらく優しい目で2人を眺めながら頭を撫でる。
するとフレイアの足がヤマトの足に絡み付いてきた。
シトラスは無意識の内に朝から元気なヤマトの息子へと手が伸びる。
びびくっ
「っ、シトラス・・・?」
「・・・すぅ・・・すぅ・・・」
シトラスは寝たまま優しく擦り、撫でる。
ヤマトは気持ち良さに身体が脱力する。
「・・・御主人様・・・?」
「え?あ・・・。
フレイア、起こしちゃったか?」
「ですから、あたしは物音に敏感だと前にあれほど、きゃっ」
ヤマトは抑え切れずにフレイアに襲いかかる。
シトラスを起こさない様に物音や声を抑えて、行為をするけれどやっぱり無理があった。
「ヤマト君っ
私を放ったらかしにしてナニしてるの?」
「いや、何っていうか、ナニっていうか・・・」
「むー・・・」
「いや、そもそもシトラスが俺のアレを触ったから・・・。
というわけでお仕置きな」
「え?お仕置きってちょっと待って、ぁんっ」
2人が3人になり、朝から激しい運動をするのだった。
ーーー
街の中央には巨大な闘技場がある。
今日は予選だけだというのにかなりの数の人々が押し寄せている。
その中にフレイアとシトラスの姿もあった。
そのすぐ後ろには怪しい男達がいる事に彼女達は気付かない。
ーーー
ヤマトは参加者入り口から入り広い待合室に放り込まれる。
人間だけでなく、エルフやドワーフ、ホビットにジャイアント。獣耳に奴隷まで幅広く集まっている。
中には全身鎧で中身が全く分からないのもいる。
ほどなく出場予定者が全員集まったため、係員が中央のリングへと参加者達を誘導する。
ーーー
ヤマトの事が心配な2人をよそに、開始の刻限は刻一刻と近づいていく。
突然、拡声された音が場内に響き渡る。
「さぁ!今回も始まりました!
大武闘大会!!
ガン首揃えてこんな所に集まりやがってこの暇人共が!
どいつもこいつも流血と暴力が大好きなイカれた野郎だぜ!
今回、賞品目当てに参加する馬鹿共は合計なんと1000人!いや、集まり過ぎだろ!」
実況が喋る間にどんどん出場者が闘技場の真ん中のリングへと集まっていく。
「そして毎回変わる予選方法!
今回の方式は題して『ダメージチェッカー』!!!!
方法は簡単!
何があっても絶対に壊れないデケェ箱に向かって攻撃をするだけ!
渾身の一撃を武器を使って叩き込んでも良いし、徒手空拳で殴ったり蹴ってもオーケー!」
説明に合わせて次々と1メートル四方程の黒い箱がいくつも運び込まれていく。
その数、合計20個。出場者が1000人もいるので、その位箱がないと終わらないからだ。
実況は軽くおどけた様な馬鹿にした様な喋り方をする。
「『暴力は苦手〜』『魔法が得意なの〜』なんていうモヤシちゃんは、自慢の最強魔法を撃ち込んでろよ!」
それを聞きながらヤマトは、この異世界にモヤシなんてあるのか?
そもそもこの異世界でも貧弱なのをモヤシと言って馬鹿にするのか。と軽く勉強していた。
「攻撃してその威力に応じて数値が出る!
順位を付けるから上位16名が明日の本戦に出場だ!!
制限時間!?攻撃回数!?
好きなだけやれよ。箱は20個もあるんだ。
適当に切り上げてオレらは帰るぜ!
その後も1人で好きなだけ遊んでな!
どうせ判定されるのは初撃だけだからな!」
係員が列の整理をする。
箱1つにつき50人が並ぶ。
まず1組目の挑戦。
全員が剣士なので剣を抜いて構える。
「さぁ!始めようか!
いつまでもボケっとしててもつまらねぇぜ!」
スタートを知らせる合図が鳴り響く。
ーーー
ヤマトは1番最後になっていた。
別に何か理由があるわけではない。
たまたまそうなっただけのことだった。
ヤマト達、最後のグループを残して1番数値が高かったのは意外にも魔法使いで、強烈な氷結魔法を使っていた。
詠唱に凄く時間がかかっていたけれど。
どうやら並んで待っている間にも詠唱していたようだった。
数値は634を叩き出していた。
「やっと俺の番か・・・。
最大限、ベクトルを操らせて貰おうかな」
「さて、これで最後のグループ!
最高数値の634を越えるヤツは現れるのか!?」
その時ヤマトは何かに気付いた様に顔を上げる。
「あ、係員のおねーさん!
俺、これの上に乗っても良い?
それが攻撃だと認識されんの困るんだけど!」
「あ、はい!
問題ありません!
スタートの合図があるまでは認識されません!」
「んん〜?1000人中唯一、ヤマト選手だけ箱の上に乗りました。
一体何をする気だ!?
ダンスでも披露してくれんのか!?
ラストグループスタート!!」
そしてヤマトは思いっきり箱を右足で踏み付ける。
重力と引力と共に。
星の持つベクトルを箱に向けて撃ち込む。
その瞬間、ヤマトが乗っている面に999までカウントされた数字が浮かぶ。
箱は耐え切れずヤマトを中心にヒビ割れ、凹み、メキメキと音を立てて潰れていく。
箱からは警報のようなけたたましいエラー音が鳴り響き[測定不能]というメッセージが点滅している。
ついには完全に圧し潰されて、さらには壊れた後も潰されて地面にめり込んだ箱とその上に立つヤマトがいた。
今まで興奮と熱気に包まれた場内は、不気味な程完全に沈黙していた。
ーーー
全員の予選が終わり待合室で16人の名前が呼ばれる。
最後にヤマトは呼ばれて無事に本戦に出場を決める。
発表した係員の男がヤマトに話しかける。
「ヤマト選手だけ、来て欲しい所があります。
ついて来てください」
「あ?
なんでだよ?
早く帰って寝たいんだけど」
「主催者である会長がお呼びです。
あなたに拒否権はないはずです。
お連れ様は既にお部屋で今の所は無事にお待ちです」
言外に来なければ連れの安全は保証できない。とにおわせる様な言い方だった。
「ふーん?
ま、行ってやるよ。
但し、俺の女に手を出したらこの街ごと更地に変えて魚の餌にしてやるよ」
「一緒に来ていただけるのであれば問題はありません」
そしてヤマトは1人、闘技場内にある会長室に入る。