表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺とあいつのチートはどちらが強い?  作者: 黒猫
天使と村娘と奴隷
5/90

3話 今度こそ村に泊まる事になった。

 家の中から盗賊団の連中とヤマトのいざこざを見ていた村人がぞろぞろと出てくる。

 やりとりの最中は見ているだけで何もしない村人共にヤマトは軽く不快感を覚えていた。

 別にヤマト自身が絡まれていた時や戦っていた最中はどうでも良い。

 問題なのは村娘が人質に取られた時や、取られている最中に何も無かったことだった。

 村長を名乗るおっさんがヤマトに感謝をしてくる。


「た、旅人さん。ありがとうごさいました。

 奴らは最近、有名になってきていた盗賊団。『紅蓮の風』という盗賊団です。

 副団長、でしたか。

 その男がこの盗賊団の団長だと思われていたので、懸賞金も相当な額が付けられています。

 大きな街のギルドに行けば懸賞金が受け取れるはずです。

 証拠の品としてその男の所持品を持って行くと良いです。

 ギルドにある特殊な魔法道具で鑑定して、誰がいつどこで、この男を殺したのかがわかりますから」


 ヤマトはさして興味も無さそうに村長の話を聞いている。


「へー。

 で?そこら辺で転がっている盗賊団の残党共はどうなの?

 どうしたら良いわけ?」


 副団長だった男以外は全員生きている。

 火傷したり腕や手の骨、心が折れているけれど命に別条はない。


「通常ですと騎士団に引き渡すのが通例です。

 懸賞金が貰えるわけではありませんが、犯罪者ですから。

 ただ、ここは一番近い街から馬の力を借りても2〜3日はかかる小さな村です。

 呼びに行って戻ってくるまでで最短で5〜6日はかかると思います。

 その間牢屋もないこの村で20人近くの荒くれ者共を管理するのは・・・」

「あぐっ」


 ヤマトは近くにいた盗賊団の1人をベクトルを操って蹴り殺した。


「そういうことか。

 もしかしてあの爆乳天使がここの近くに俺を落としたのも、ある意味それが狙いか・・・?」


 村人達には聴こえない小声でヤマトは1人で喋る。


「ひっ、たすっ」


 ヤマトは殺した。


「あ、ぉぃ、やめっ」


 淡々と。


「ぎゃっ」


 残党を殺す度に自分の心も殺しているような気分になった。


「も、なんっひぃぃっが」


  ヤマトは光彩を失った目で歩き回りながら次々と残党の命を狩っていく。

 殺した。殺した。殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した。

 全部で29人。全員殺した。

 そして最後に残ったのは本来の団長である黒ローブだけだった。

 どうやら手口としては、仲間が派手に襲っている間に家に押し入り、強奪をする。

 その後タイミングを見て、その場から一斉に引き上げる。

 そんな火事場泥棒に似た手口だったらしい。

 ヤマトにはどうでも良い、関係のない事だけれど。

 黒ローブは震えながら首を横に振る。

 

「や、やめて・・・。

 助けて・・・。ごめんなさい。もう悪い事はしないから・・・。

 死にたくない・・・。

 なんでも言うこと聞くから・・・」


 ヤマトは殺す前に顔を拝んでやろうと黒ローブを剥ぎ取る。

 すると燃える様なオレンジと真紅の髪色がヤマトの目に入る。

 ショートカットで肌が色白の美少女がそこにはいた。

 瞬間的に衝動的に決めた事をヤマトは口にする。


「じゃぁ、お前、俺の奴隷になれ」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!???」


 村人達の叫び声が村中に響き渡る。

 黒ローブだった美少女は躊躇なく返事をする。


「はい。わかりました」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!???」


 村人達の叫び声が村中にこだまする。

 村人達は止めさせようと説得しようともしたけれど、圧倒的な強さを目の前にして何も言えなくなる。

 そんな中、村人達の騒ぎを聞いてか気絶していた村娘が起きる。

 村娘は自分の身体を見える範囲で確認する。

 傷一つ無く自分が無事に生きている事を確認すると突然走る。

 そしてそのままヤマトの右腕に抱きつく。


「旅人さん!

 ありがとうございました!!

 旅人さんのおかげで私は無事に生きています。

 お礼がしたいです。

 何もないですけど、私の家に・・・来てくれますか?」

「良いよ」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!???」


 村人達の叫び声が森林中に響き渡る。

 ヤマトは抱きつかれて、村娘が持つ豊満では無いけれど、自己主張が少ないわけでも無い母性の塊を右腕に感じて思わず抱きしめる。

 5分程抱きしめた後離れると村娘が少しだけ寂しそうな顔をした。




ーーー

 ヤマトは副団長の遺体から、手甲を外して回収する。

 元黒ローブは他の団員から、それぞれに最低限持たせていた金品を回収した。

 その後ヤマトは元黒ローブと共に村娘に連れられ家へと案内される。

 中はとても狭く家具もあまりない。

 不憫に思える程何も無かった。

 狭いリビング、キッチン、トイレ、シャワールームがかろうじてあった。

 リビングには1人用ベッド、ローテーブル、小さめのクローゼットがあるだけだった。


「そういえば、自己紹介がまだだったな。

 俺の名前はヤマト。ヤマト ヤマダ。」

「ヤマト ヤマダ?

 珍しい名前ですね。

 私の名前はシトラスです。

 生まれた時からこの村に住んでいました。

 今日は助けていただいてありがとうございました」


 シトラスと名乗った少女はヤマトに改めてお礼を言って頭を下げる。

 それからシトラスは頭を上げると首を傾げながらヤマトに聞く。


「えっと、そちらの綺麗な方は・・・」

「おれはフレイア。

 さっきはすまない。盗賊団としておまえを人質に取った」

「えっ!?

 あのローブの中の方はこんな綺麗な方だったんですか!?」

「綺麗とか言うな。

 おれはそう言われるのはあまり慣れてない」

「あ、ごめんなさい・・・」


 フレイアは顔を赤くしてシトラスからそっぽを向く。

 拗ねている様にも見えるけれど明らかに照れているだけだった。


「えっと、でもなんでフレイアさんも一緒に・・・。

 いえ、私は全然平気なんですけど」

「おれは、ヤマト様の奴隷だから」

「えぇぇっ!?

 話が急過ぎてついていけないです」


 ヤマトはシトラスの驚きを無視して、フレイアと話を進める。


「フレイア。

 急には無理かもしれないが、もっと女の子らしい言葉遣いは出来ないのか?

 盗賊生活が長いから仕方ないかもしれないけど」

「はい。わかりました。

 ヤマト様の事はなんとお呼びすればよろしいですか?」

「そうだよな。やっぱり急には無理だよな。

 って出来るのか!

 呼び方は、そうだな・・・。

 御主人様、が良いな。

 お兄ちゃんでも良いよ?」

「はい。わかりました。御主人様」


 フレイアは恭しく頭を下げる。


「『お兄ちゃん』には無視か。

 シトラスはもっと砕けた喋り方で良いぞ?

 ずっと敬語だと疲れるだろ。

 俺のことも、ヤマト君とかで良いぞ」

「ぁ、いぇ、私はずっと昔から敬語で話していますから、疲れるとかは無いです。

 けど、私なんかが君付けで呼んで良いんですか?」

「私なんか、とか言うな。

 シトラスと俺はあまり歳は変わらないだろ?

 それに俺が良いと言った。

 良いと言ったんだからそう呼べ」

「はい。ヤマト君っ」


 言うだけ言うとヤマトはその場で口元を押さえて涙目になる。

 突然の吐き気がヤマトを襲う。


「ヤマト君!大丈夫ですか!?

 ト、トイレはすぐそこですっ!」


 ヤマトはトイレに駆け込む。

 ドアを開けたまま身体を震わせている。

 突然の事に驚きながらもフレイアは背中を優しくさする。何度も、何度も・・・。

 辺りはすっかり暗くなっていた。


「今日は、このまま休んでいってください。

 狭くて何も無い家ですけど・・・」


 フレイアの後ろからシトラスが声をかける。

 フレイアにさすられながらヤマトは特に返事をしない。

ブクマありがとうございます。

これからも更新できる様に頑張ります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ