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俺とあいつのチートはどちらが強い?  作者: 黒猫
天使と村娘と奴隷
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2話 盗賊と戦う事になった。

 ヤマトは独り、とぼとぼと森の中を歩いていた。

 一応教えてもらった通り西へと歩いている。


「どうしてこうなった・・・」


 村人全員からドン引きされて向けられた、負の感情と視線のベクトルを操ろうとしたが

【その要求はファジーです】の一言が脳内に流れて発動しなかった。


「まさか操れないベクトルもあるとは・・・。予想外だった・・・。

 それくらい教えといてくれよー。

 アクセ○レーター・・・」


 むちゃくちゃな事を言うヤマトだった。


「しかも脳内に聞こえたあの言葉以外、一切何も聞こえないし。

 別にナビをしてくれるとかってわけでもないのか。

 親切設計ってわけでもないのか?」


 そんな時、遠くから馬の蹄の音が聞こえてきた。

 森の木々を器用に避け、飛び越えながら走っていく。

 格好からすると盗賊の様だった。

 短剣やカトラスの様な曲刀。鞭を装備している者もいた。

 汚い髭面の男。

 黒いローブで顔を隠しているのもいる。

 全部で約20騎程だろうか。

 特に隠れるつもりがあったわけでも無いヤマトだったけど、運良く(?)盗賊団には見つからずにすれ違った。


「っつか、すれ違ったって事は、この先・・・。

 あの村が狙いか」


 すぐにヤマトは元来た道を引き返して走り出す。

 ドン引きされて、負の感情を向けられたけど、ヤマトにとってそれが道を教えてくれた優しい少女を見捨てる理由にはならなかった。




ーーーー

 村に戻ったヤマトは驚いた。

 というか驚かれた。

「変態が戻って来た」「へんたいよ」「ママー」「しっ見ちゃダメ」「こっちきなさぃっ」「はやくっ家の中に入りなさいっ」


 いつの間にか盗賊の馬を追い抜いて村に戻って来てしまっていた。

 盗賊のルートとは違うルートを使ったらしい。

『ヒーローは遅れてやってくるもの』というテンプレをブチ壊してしまったようだ。


「誰もいねー・・・。

 べ、別に悲しくねーよ」ぐすっ


 森の中から馬の嘶きや蹄の音が聞こえてくる。

 野蛮で粗野な男達の高揚とした下品な笑い声も近付いてくる。


 やがて馬に乗った盗賊達が村に侵入してくる。

 村のほぼ中央にいたヤマトを囲んでありがちなセリフを吐いてくる。

 薄い茶色の馬に乗った槍使いが喋ってきた。


「有り金ぜんぶ出しゃーがれー!

 金目のものはぜんぶオレ様達がありがたくいただいてやらーへっへっへっ」

「あー?

 何を言ってんのかなー?

 この三下共がぁ」

(つか、どこの世紀末覇者だよ。ヒャッハーし過ぎだろ。

 それかレッツパーリィの方か?眼帯してる六爪流みたいな奴はいないけど)


 挑発された瘦せぎすの男が更に口を開く。


「イノチがおしくねーのかよー!?

 それならさっさと死ねっ!」


 瘦せぎすの男は右手で剣を抜くとそのままヤマトに馬上から切り掛かる。

 ヤマトは避けない。

 無言で頭の中で能力を使う。

(能力名《向き不向き》ベクトルエディット。

 デフォはやっぱり反射。だよな)


 ヤマトの身体に剣が当たる直前、見えない壁にぶつかったかの様に剣が弾かれる。


「なっぁ!?」


 弾かれた勢いで男の手から剣が落ちる。

 盗賊団団長と思しき汚い髭面の男が馬から降りてヤマトと対峙する。


「なんだ?おめー、魔法使いか?

 初級の防護魔法程度で、おれらとやりあって勝てると思ってんじゃねーぞ。

 おめーら、一気にたたみかけるぞ!

 おらぁぁぁぁ!!!」


 盗賊団はヤマトへ号令と共に一斉に攻撃を仕掛けてきた。

 剣を抜き、鞭を振るい、斧を振り下ろし、槍で突き刺してくる。

 だけれど、反射を設定しているヤマトには全てが無駄だった。


「ちっ。なんだおめーら、手加減してんじゃねーぞ!

 剣とかがダメなら殴れ!蹴ろ!」


 団長は随分と硬そうな手甲を両手に装着すると、感触を確かめる様に手を1度握って開く。

 そしてヤマトを殴る為に右手を振りかぶる。


「ウォォォラアアアアアア!!!!」


 殴った瞬間ヤマトの間近で骨が折れる音がした。


「うぎゃぁぁぁぁぁ!!!???」

「まぁ、防護魔術(笑)を思いっきり殴ったら普通はそうなるよな。

 分かってねーんだよなー。

 副団長サマは。防護魔術の怖さを」


 真っ黒なローブを着ている男(?)が軽く笑いながらヤマトの後ろから声をかける。

 どうやら体格は小柄だけど、ローブで目元以外全て隠れていて、男か女か分からない。

 声も女にしては低めで、男にしては高い。

 目元だけを見ると若いのは確かな様だった。

 そして、その黒ローブは道を教えてくれた村娘に短剣を突き付けながらヤマトに近づいて行く。

 ヤマトが戦っている間にいつの間にか家を襲っていたらしい。


「本当は家の住民皆殺しにして金品奪ってタイミング見て、逃げようかと思ったんだが・・・。

 1軒目のこいつの家の中の超質素な事・・・。超貧乏。1番価値があるのがこいつってレベルだ。

 でも、そこの奴が倒されてて気が変わった。あ、動くなよ?

 お前を今すぐ・・・殺す」

「た、旅人さん・・・」

「あぁ、動くつもりはないよ。

 煮るなり焼くなり好きにしろ」


 黒ローブは空いた左手をヤマトに向ける。

 それとなく盗賊団の連中がヤマトから距離を取り始める。

 骨が折れた髭面も、ひぃひぃ言いながら距離置く。


「ふんっ。舐めた事言ってんじゃねーよ。

 おれ様の魔力をくれてやるから働きやがれクソッタレ共!

 おれ様に楯突いた奴を灰に変えちまえ!

 《業葬炎舞》フレイムロンド!!」


 ヤマトの周りを炎の渦が囲う。

 勢いよく空気を燃焼して、空高く炎の渦が舞う。

 それでもヤマトは能力を発動したままその炎の渦に触れるだけで良い。

 それだけで炎は始めから何もなかったかのように霧散する。


 高温の渦の中から焦げ跡1つついていないヤマトが現れる。

 それにはさすがに黒ローブも驚く。


「はっ!?

 てめ、今一体何をしたぁ!?」

「あーあ。いくら何でも酸素を奪われるとキツイっつーの。だっけ?

 ちょっと言ってみたかったセリフだな」

「はぁ?

 オマエ何を言ってんだ?」

「分かんなくて良いよ。

 ってか何?その反応。

 あー、もしかして、今のがお前の最強の技だった?

 わりーわりー。あまりにもシケた技だったから分かんなかったよ。

 ってこれも言ってみたかったセリフ。ははっ」

「くっ!

 おめーら!ぼさっとしてねーで、さっさとこいつを殺っちまえ!!」


 意を決して襲いかかってくる盗賊団連中。

 ヤマトは特に何をするでもなく立っている。

 盗賊団の連携は中々良い。

 仲間の連撃の合間に時折黒ローブが炎の球を左手から出して撃ち込んでくる。

 ヤマトは向きを操って他の盗賊に当てるだけなのだけど。

 残りが6〜7人になった所でヤマトは黒ローブに向かって指を差す。


「さてと。そろそろ手を出すぞ?

 良いか?今からそっち行くぞ?

 後んなって聞いてませんでした。とか言うんじゃねぇぞ?」

「なっ!?待っ」


 ヤマトは足のベクトルを操って瞬間的に黒ローブに近付くと素早く短剣を弾く。

 それだけで強力なベクトルが働いたおかげか、短剣が宙を舞って地面に突き刺さる。

 その時、黒ローブは微かに笑った気がした。


 風を切る音がしたその次の瞬間、後ろから一斉に剣や短剣、槍などで突き刺してきた。

 ところがヤマトは涼しい顔をしている。

 むしろ盗賊達の方が悲鳴を上げる。


「うっ「ぎゃぁぁぁ「ぐぁぁぁ「ぁぁぁ「がぁぁぁぁぁ!!!「ぁぁぁぁ!!」


 当然の事ながらヤマトはベクトルの操作を行い盗賊共の攻撃を全て反射したからだ。

 黒ローブ以外ほぼ全員が地面を這いつくばって転がっている。

 とてもじゃないが、武器を持てる状態ではない。

 その様子を見て黒ローブも慌てている。

 人質どころではない。


「オイ!おめーらどうした!?」


 盗賊達は「いてぇいてぇ」としか喋らず要領を得ない。


「ばっバケモノめ!

 ただの防護魔法でこんな風になるかよ!

 なんかもっとエタイのしれねー、エゲツねー事をやってんだろ!?」


 1番初めにヤマトを殴って骨を折った髭面が立ったまま吠える。

 面倒くさくなったヤマトは地面を軽く蹴りベクトルを操って瞬間的に髭面に肉薄すると、そのまま右の拳でドテッ腹にブローを入れる。

 それだけで髭面はグシャッと言う音と共に(ハラワタ)をブチ撒けてただの肉塊に変わった。

 ヤマトは返り血も反射で浴びずに汚れない。

 ヤマトが後ろを振り返ると人質になっていた村娘は気絶している。

 その様子を一部始終見ていた黒ローブはへたり込んで目に涙を溜めている。


「た、たす、たすけて・・・」


 黒ローブの足の付け根辺りから染みが徐々に広がっていく。

 よほど恐怖を感じたのが完全に心が折れていた。

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